ザッ、ザッ、ザッ……
宇水(……どこだ、ここは?)
宇水(いよいよ国盗りが始まるというから)
宇水(私は琉球から京都に向かっていたはずなのだが……)
宇水(どういうわけか、いつの間にやら)
宇水(周囲から聞こえてくる音という音が、聞き慣れぬものばかりになってしまった)
宇水(私はちゃんと京都に向かえているのか?)
宇水(いや、そもそもここは日本なのか……?)
宇水「…………」ピクッ
宇水(む、足音が聞こえる)
宇水(二足歩行……身長はかなり低い……人間ではない?)
宇水(背中にティンベー、じゃない甲羅を背負っている?)
宇水(亀か? いや亀は二足歩行はしないはずだが……)
ノコノコ「なんだ、お前は」
宇水(しゃべれるのか!?)
宇水(これまでに私が得た情報をまとめると、目の前にいるのは──)
宇水(二足歩行の、人の言葉をしゃべる、亀!?)
宇水(わけが分からん!)
ノコノコ(甲羅を背負ってる、ってことはこいつもカメ族か)
ノコノコ「はっはーん、もしかしてお前、クッパ様の軍団に入れてもらいに来たんだろ」
ノコノコ「いいぜ、俺がクッパ城まで連れてってやるよ」
宇水(心拍数や挙動からは、緊張や敵意は感じられんな)
宇水(これが亀だとして、私のティンベーを見て、仲間だと勘違いしたか?)
宇水(こいつからは全く強さを感じられん、殺そうと思えば簡単に殺れるだろうが)
宇水(自分がどこにいるかも分からん以上、今は情報を集めるべきだろう)
宇水(いざとなれば、クッパとかいう首領格を殺してしまえばいい)
宇水(心眼を会得した私にとって、その程度はたやすいことだ……)
宇水「よかろう、連れていってもらおうか」ニィッ
<クッパ城>
ノコノコ「カメック様」
カメック「どうした?」
ノコノコ「クッパ軍団に入りたいというカメがいるので、連れてきました」
ノコノコ「なんでも名前をウスイ、というそうです」
カメック「ほう?」
カメック(ウスイ? 聞いたことがない名前だな……)
宇水「音の反響具合からして石造りか、なかなか立派な城だな」ズイッ
カメック(な、なんだコイツは!?)ゾクッ
カメック(全身にいっぱい目があるカメなど、初めて見た!)
宇水(お、心拍数が上がっている。急激に発汗も増えた)
宇水(この新手の亀は、私の恐ろしさに気付いたようだな)
宇水「クックック、お前のような三下に用はない」
宇水「我が心眼の前では、隠しごとは不可能」
宇水「私には貴様が“怯えている”ということが、手に取るように分かるのだよ」
カメック「!」ビクッ
カメック(なんで私が怯えていると分かったんだ!? まさか、魔法使いか!?)
カメック(うむむ……私の手には負えんかもしれん)
カメック「ま、待っていろ……今クッパ様をお呼びする!」
宇水(ふん、この分ならクッパとかいうのも大したことはなかろう……)
な ぜ コ ラ ボ し た
ただのネタスレと思ったら続いてた
ズシン…… ズシン……
宇水(な、なんだ!?)
ズシン、ズシン……
宇水(この足音、十本刀“破軍”の不二のような重量感……!)
ズシィン、ズシィン……
宇水(これが──クッパ!? とんでもない怪物ではないか!)
宇水(く……心眼を会得した私が心を乱してどうする!)
クッパ「ほぉう、ワガハイの軍に入りたいというのはオマエか!?」
宇水(この心拍数、完全に私を見下している……!)ピクッ
宇水(まだ両目を失っていない頃、私と対峙した志々雄のように……!)ピクピクッ
クッパ「マリオのようなヒゲを持ち、全身に目がついたカメか」
クッパ「ガッハッハ、珍しいカメだな」
宇水「何が可笑しい!!!」
クッパ「な、なんだ?」
宇水「もういい、気が変わった」ザッ
宇水「帰る手段など、適当に亀を殺しまくって吐かせればいいことだ」
宇水「クッパとかいったな、貴様はこの場でブチ殺してくれよう!」バッ
クッパ「突然怒り出すとは、よく分からんヤツだな」
クッパ「まぁよい、かかってくるがいい! ガッハッハッ!」
宇水「すぐに笑えなくしてやるわ!」シュザッ
宇水「宝剣宝玉百花繚乱!」
ズババババッ!
クッパ「ガハハ、ちょっと痛かったぞ」
宇水(バ、バカな……全ての突きをまともに喰らったはず……!)
クッパ「ではこっちからいくぞ!」
宇水(ふん……おそらくこの巨体を生かした技を繰り出す気だろう)
宇水(どんな技だろうと、ティンベーでさばいて──)サッ
ゴオオアァァァッ!
宇水(口から……高熱……炎!? しかもなんだこの量は!?)
ボワァァァッ!
宇水(ティンベーがあっという間に焼け焦げて──)
宇水「ぐっ、ぐわぁぁぁぁ──……」
宇水(負けた……)
宇水(生涯二度目の敗北……)
宇水(いや……三度目か)
宇水(志々雄に光を奪われ、復讐を誓い心眼を会得したのも束の間──)
宇水(私以上の生き地獄をくぐり抜けていた志々雄に、私は戦わずして敗北した)
宇水(挙げ句、こんなどことも知れぬ場所で、怪物に殺されることになるとは……)
宇水(私の人生とは、いったいなんだったのだ……)
宇水「…………」ハッ
宇水「私は……生きている!?」ガバッ
クッパ「目が覚めたか」
宇水「貴様……クッパ!?」
クッパ「オマエのような根性あるカメは久しぶりだったぞ」
クッパ「合格だ!」
クッパ「キサマの我が軍団への入団を認めよう!」
クッパ「ガッハッハッハッハ……!」
宇水「ク、ククク……よかろう」
宇水「利用されてやろうではないか」
宇水「だが、私は貴様に焼かれた屈辱を忘れてはおらん」
宇水「スキあらば、私は貴様を殺す! それを忘れるなよ!」
クッパ「ガッハッハ! よかろう!」
宇水(く……私はまた同じことを繰り返すのか……)
クッパ「あ、あとオマエの甲羅を焼いてしまったから代わりのを用意しておいたぞ」
宇水(なんだこれは……)
宇水(トゲゾーとかいう亀の甲羅らしいが、本当にトゲが生えておる)
宇水(触れてみるか)チクッ
宇水「痛ッ!」
宇水(丸みはあるが、こんなトゲがあって、うまく敵の攻撃をさばけるだろうか)
宇水(まあ、そもそも敗北したのに贅沢はいってられまい)
宇水(これからはこのトゲのついた甲羅が私のティンベーだ)
宇水(とりあえず……名前は“新ティンベー”とでもしておくか)
クッパ「さてと、晴れて入団となったオマエに、我が軍の目的を伝えておこう!」
宇水「目的……?」
クッパ「ワガハイの目的は色々あるが、やっぱり一番はピーチ姫と結婚することだ!」
宇水「なんだ、ピーチ姫というのは」
クッパ「キノコ王国の姫君でな、ぜひともワガハイのお嫁さんにしたいのだ」
宇水「理解できんな、貴様なら女一人さらうぐらいわけないであろうが」
クッパ「うむ……だがいつもいつもあと少しというところで、ジャマをされるのだ」
クッパ「あの……マリオとルイージに!」
宇水(なんだと!? このクッパよりも強い奴がいるというのか!?)
クッパ「ヤツらさえいなくなれば、ピーチをワガハイのモノにできるのだが……」
宇水「クッパよ」
クッパ「む?」
宇水「そのマリオとかいう奴らの居場所を教えろ」
クッパ「どうするつもりなのだ?」
宇水「決まっている」
宇水「この私が、二人まとめて始末してやろう」
宇水(クッパが手こずる敵を、私の手で殺す)
宇水(てっとり早く自信を回復するには、これしかあるまい!)
この宇水さんは小物臭いところが原作に忠実でいいな
<キノコ王国>
宇水(ここがキノコ王国か……)
宇水(至るところに頭の大きなコビトの気配がするが……これがキノコ族というやつか)
宇水(まったくおかしなところに来てしまったものだ)
宇水(しかし今はそんなことを気にしている場合ではない)
宇水(マリオとルイージとやらを血祭りに上げ、クッパに死体でもくれてやる)
宇水(そうすれば、クッパに敗れたことに対する面子も立つ)
宇水(日本に帰る方法を教えてもらうのは、それからだ)
宇水「おい」
キノコ住民「はいはい?」
宇水「マリオとルイージとやらは、どこにいる?」
宇水「答えねば──」ギラッ
キノコ住民「ああ、マリオさんたちならお城にいるはずですよ」
キノコ住民「今日はキノコ王国のキノコ料理パーティーでしてね」
キノコ住民「ピーチ姫が料理をいっぱい作っているんですよ」
キノコ住民「行けばだれでも入れると思いますよ」
宇水(ふん、こうもあっさり見つかるとはな)
宇水(さっさとマリオたちを殺って、日本に戻らねばならん)
<ピーチ城>
ピーチ「マリオ、ルイージ。お料理はたくさん用意したから、いっぱい食べてね!」
マリオ「ありがとう、ピーチ姫」モグモグ
ルイージ「おいしいね、兄さん!」ムシャムシャ
ヨッシー「どれもこれも、みんなおいしいよ!」ペロン
キノピオ「ヨッシーさん、皿ごと食べないで下さい!」
すると──
「マリオとやらはいるか!?」
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ノ ;;;:;:;;..;;;;.;;;;;;.;;:゛ ノ
ザワザワ…… ドヨドヨ……
「うわぁ、目がいっぱいあるぞ……」
「なんだ、あの不気味なカメは!?」
「きっとクッパの手下だ!」
宇水「……ふざけるな、私はクッパの手下などではない」
宇水「目的のため、奴にあえて利用されてやってるだけのこと」
宇水「マリオとルイージとやら、いるのならば名乗り出ろ!」
宇水「さもなくば、この国の住民を皆殺しにしてもかまわんぞ?」ヒュッ
ズシャアッ!
ピーチ「ああっ!」
キノピオ「姫が作った料理が!」
マリオ「やめないか!」ザッ
ルイージ「ぼくたちがマリオとルイージだ!」ザッ
宇水「ほう……お前たちか」
宇水(ふむ……気持ちの昂ぶりはあるが、かなり落ち着いている)
宇水(なるほど、それなりの使い手ではあるようだ)
宇水(だが、骨格も筋肉も平凡、クッパのような威圧感はまるでない)
宇水(まともな戦闘では、私の敵ではなかろう)
宇水(おそらくクッパは実力ではなく、策略で敗北しているのであろう)
宇水(しかし、初めて出会う私に対し、策を持ち合わせてはいないはず)
宇水(つまり……私の勝利は間違いないということだ!)
宇水「マリオとルイージ、相手にとって不足無し」ズゥゥン
宇水「ここで死んでもらう」
マリオ「行くぞ!」ピョイン
ルイージ「うん!」ピョイン
宇水「!?」
宇水(た、高いッ! なんという跳躍力だ!)
宇水(だが──)
ルイージ「よくもパーティーを台無しにしたな、許さないぞ!」
宇水「微温(ぬる)いわ!」サッ
グサッ!
ルイージ「ぐぅっ……!」
ルイージ(踏みつけを、トゲ甲羅でガードされた……!)ドサッ
マリオ「このカメ、トゲゾーの一種だったのか……!」スタッ
マリオ「ルイージ、大丈夫か?」
ルイージ「う、うん……なんとかね」
宇水「クックック、この新ティンベーに敵などないわ!」
マリオ「よぉし、こうなったら……!」
ボッ!
宇水「え?」
ボッ! ボッ! ボッ!
宇水(な、なんだ!? 私の耳がたしかなら、手から……火の玉が出ている!?)
宇水(志々雄の秘剣のようなものなのか!?)
ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!
宇水(大きさはクッパの炎ほどではないが、数が多い!)
宇水(いったいどういう原理で!? こいつ妖術使いか!?)
ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!
宇水(──だが! 新ティンベーに火の玉が当たる瞬間!)
宇水(素早くさばけば、火の玉をかき消すことは可能!)バシュッ
宇水(……可能ではあるのだが)
ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!
宇水(火の玉が止まらん!)バシュッ
宇水(こいつは何発火の玉を撃てるんだ!? まさか……無限!?)バシュッ
ヨッシー「えぇ?い!」ビュッ
キノピオ「今だっ!」ブンッ
宇水(しまった! 横から──でかい卵と、野菜!?)
グワッシャッ!
宇水「ま、またしても心眼が……敗れる……とは……」
宇水「悪夢だ……」ドサッ
宇水「うぅ……ここは……」ムクッ
キノピオ「お城のベッドです」
キノピオ「あなたの分もキノコ料理を用意しましたから」スッ
キノピオ「これに懲りたら、二度とこういうことはしないで下さいね」
宇水「…………」
宇水(志々雄と瀬田宗次郎を除けば敵などいない私が、二度も敗北するとは……)
宇水(……悪くない匂いだ)クンクン
宇水(もう、どうにでもなれ)モグモグ
宇水(ほう、なかなかの味だ。体から馬力が湧き出てくるようだ)モグモグ
宇水(しかし、失われた自信が戻ることはなさそうだ……)モグモグ
<クッパ城>
宇水「戻ったぞ」
クッパ「ガッハッハ、どうだった? マリオはやっつけられたか?」
宇水「いや……」
クッパ「だからいっただろう! ワガハイですら奴らには何度もやられているのだ!」
クッパ「これからはワガハイの命令に従ってもらうぞ」
宇水「ああ、分かった……」
宇水(これほどの醜態をさらしておいて、とても志々雄たちの顔など見られん)
宇水(元々私は国盗りなどに興味はないし、しばらくここで過ごすとするか……)
しばらくして──
クッパ「ウスイよ、今度マリオたちと戦うことになった」
クッパ「オマエにも参加してもらう」
宇水「ほう、いよいよ戦闘か」
宇水(ここにいる間も腕は磨いたが、まだクッパやマリオに勝てる気はせん)
宇水(しかしやるとなれば、なんとしてもこいつらに一矢を報いねば……)
クッパ「いや、レースだ」
宇水「!?」
マリカwww
マリカじゃねぇかwwwww
宇水「なんだ、レースというのは」
クッパ「レースとは、カートで誰が一番早くゴールにつくかを競い合うことだ」
宇水(カート? なにをいっているんだ、こいつは)
宇水「なんだ、カートというのは」
クッパ「ウスイ、オマエ……カートも知らんのか!?」
クッパ「ガッハッハッハッハッ!」
宇水「何が可笑しい!!!」
クッパ「ワガハイの古いカートを貸してやるから、練習するのだ」
宇水「う、うむ」
宇水(蒸気も出さず、馬に引かせもせず、車が走るとは信じがたいが……)
宇水(この世界に来てからは信じがたいことしか起こっておらんしな)
宇水「えぇと……右を踏むと進み、左を踏むと止まるんだったな?」
クッパ「そうだ」
宇水「どれ、踏んでみるか」グッ…
ドギュゥゥゥゥンッ!
宇水「!?」
ドガッシャーンッ!
クッパ「おお、いきなりロケットスタートとは! オマエは才能があるぞ、ウスイ!」
宇水「が、がは……っ!」
レース当日──
<マリオサーキット>
ジュゲム「本日はこの1レースのみ、行います!」
ジュゲム「正式なカップ戦ではありませんが、上位入賞者には賞品が出ますので」
ジュゲム「優勝めざして頑張って下さい!」
パチパチパチパチ……
宇水(猛特訓の末、どうにかカートとやらの運転と)
宇水(聴覚だけで、競争に使用する道路の内と外の区別ができるようになった)
宇水(だが……なぜ敵同士でこんなのんきな遊戯をやるのだ?)
宇水(この間会ったマリオやルイージ、ピーチとかいう女の声も聞こえる)
宇水(あと……巨大な猿らしき生物もいるな)
宇水(まったくわけが分からん……)
レース出場者──
マリオ、ルイージ、ピーチ、ヨッシー
クッパ、ドンキーコング、キノピオ、魚沼宇水
ブロロロロ……
宇水(全員が開始地点に着いた途端、気配が変わった!)
宇水(な、なんだこの張りつめた空気は!?)
宇水(あの頃を……幕末を思い出す!)
宇水(そうか、こいつらにとっては遊戯といえど死闘ということか!)
宇水(面白い! ならば、この“盲剣”の宇水も全力をもって挑んでくれるわ!)
ピッ
マリオ「…………」
ピッ
ルイージ「…………」
ポォーン!
ブォォォォンッ!
ジュゲム『各車、一斉に飛び出したぁっ!』
ジュゲム『先頭におどり出たのは……なんとレース初参戦のウスイだぁーっ!』
宇水(ロケットスタート……成功!)
ブオォォォォ……!
宇水(この妙な塊に触れれば、道具を一つ入手できるんだったな)
宇水(これはなんだ!?)ニュルッ
宇水(私の道具は──バナナとかいう果物の皮か!)
宇水(……私の真後ろに、巨大猿の車がついておるな)
宇水(喰らえッ!)ポイッ
ドンキー「ウホッ!?」ズルッ
ドンキー「ウホォォォ!」ギュルルルッ
ジュゲム『ウスイ、後ろを見ることもせず、背後のドンキーをバナナの皮で滑らせた!』
宇水「フハハハハ! 我が心眼の前に敵はない!」
ブオォォォォ……!
ルイージ(あのウスイってカメ、すごいや!)
ルイージ(ドリフトといいアイテムの使い方といい、とても初レースとは思えないぞ!)
ルイージ(ただの悪者ガメというわけじゃなかったのか!)
ルイージ(でも、ぼくの緑甲羅は避けられまい!)
ルイージ「いけっ!」ビュッ
宇水「無駄だ!」ヒョイッ
ルイージ「そんな、ミラーの死角から投げたのに!?」
宇水「バカめ、こんな鏡など最初から見ておらんわ!」
宇水「心眼でお前の筋肉の動きを読み取っただけのこと! 我が心眼に死角なし!」
ブオォォォォ……!
クッパ「ウスイよ、なかなかやるではないか」
宇水「む」
クッパ「だが、初レースで優勝させてやるほど、ワガハイも甘くないぞ」グンッ
ガシッ! ガシッ!
宇水「おのれぇっ!」
ジュゲム『クッパのタックルで、ウスイはコースアウト寸前だ!』
ジュゲム『これでは重量で劣るウスイが、不利か!』
宇水「……ふん、クッパよ」
宇水「私に体当たりをしかけるなど、愚策にも程がある!」
クッパ「なんだと!?」
宇水「私のもう一つの武器を忘れたか!?」
宇水「ティンベーと対をなすこの手槍、ローチンで突く!」ブスッ
クッパ「ぬわぁ?っ!?」ギュルルルッ
ジュゲム『ウスイ、ローチンでクッパのタイヤをパンクさせたぁっ!』
レースは終盤へ──
ジュゲム『ラスト一周!』
ジュゲム『トップはウスイ! ほとんど独走状態です!』
ジュゲム『2位にマリオ、3位はルイージ!』
ジュゲム『4位はピーチ、さらにキノピオ、ヨッシーと続きます!』
ジュゲム『ウスイにやられたクッパとドンキーはかなり遅れているっ!』
マリオ(なんてドライビングテクニックだ!)
マリオ(彼はおそらく目ではなく、他の感覚で風や他のカートの動きを読んでいる!)
マリオ(だから速い!)
マリオ(これほど差がついては意味はないが、温存していたアイテムを使うか……)
マリオ「サンダー!」
バリバリバリバリッ!
おい聴覚いったんじゃねww
マリカなら小さくなるだけだけど
るろ剣なら間違いなく死ぬレベル
宇水(な、なんだっ!?)
宇水(突然の轟音で、どこを走ってるのか分からなくなってしまった!)
ドカァンッ!
宇水「ぐわぁっ!」
ジュゲム『ウスイ、土管に激突してしまったぁっ!』
ジュゲム『急に運転がおかしくなりましたが、いったいどうしたんだ!?』
ジュゲム『あ?っとウスイ、どんどん後続に抜かれていく!』
宇水(くそっ、あらかじめ心の準備をしておけば、あの音にも耐えられたものを……)
宇水(バナナの皮や甲羅だけでなく、あんな道具があったとは……!)
レース結果──
1位 マリオ
2位 ルイージ
3位 ピーチ
4位 ヨッシー
5位 魚沼宇水
6位 キノピオ
7位 ドンキーコング
8位 クッパ
宇水(全速力で追い上げたが、入賞は逃してしまった……)
宇水(クッパに実力を見込まれ参加しておきながら、情けない……!)
しかし──
マリオ「いいレースだったよ! 君はすばらしいレーサーだ!」
宇水「え?」
マリオ「まさかあそこから5位まで追い上げるなんて……」
ルイージ「いやぁ、すごかった……調子を崩さなきゃ絶対優勝してたよ」
ピーチ「また一緒にレースをしましょうね!」
キノピオ「なかなかやりますね、次は負けませんよ!」
ヨッシー「楽しかったよ、ウスイ!」
ドンキー「ウッホォ?!」
宇水「…………」
クッパ「ガッハッハッハッハ!」
クッパ「さすがだウスイ、ワガハイが見込んだだけのことはある!」
宇水「ふん、こんな遊戯などなんの意味もないわ」
<クッパ城>
ブロロロロ……
宇水「もっと曲がる時の技術に磨きをかけねばな……」ギャルルッ
宇水「道具の性質も覚えて、効果的に使用せねば勝利は掴めん……」
クッパ「ガッハッハ! ウスイよ、なんだかんだいってカートにハマったようだな」
宇水「何が可笑しい!!!」
後編に続きます。
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元スレ クッパ「ガッハッハ、珍しいカメだな」宇水「何が可笑しい!!!」
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