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女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【1】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【2】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【3】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【4】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【5】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【6】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【7】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【8】


255 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)20:13:23 ID:ePK

女「…」

リン「…」

私達は、無言で山道を走った。

何も言えなかった。

悲しい、とか、寂しいとか、…この感情につく名前が思いつかない。

リンは、どう思っているのだろうか。

彼は今、何を考えて運転をしているのだろうか。

女「…」

その横顔は、いつもより白く見えた。

リン「なあ」

女「あ、…なに?」

リン「お前今、何考えてる」

女「…」

リン「どう思った」

女「分かんない。…悲しい。けど、…良かったなって思う」

リン「良かった?」

女「だってコマリは、もう一人ぼっちじゃないでしょ」

256 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)20:23:07 ID:ePK

リン「そうだな」

女「…リンは?」

リン「概ねお前と一緒だな」

リン「それより一つ、気になったことがある」

出たよ。

感傷に浸るということを知らないのか、この男の子は。

リン「あいつの遺体についてだ」

女「ああ。…綺麗だったね」

リン「損傷が全く無かった。俺たちが来る1秒前に死んだといわれても驚かない程度に」

女「確かに」

そうだ。コマリ、って呼んだら、あの可愛い声で「はあい」って返事して起きそうなほど。

リン「…首の痣。あれは潜伏感染の証だ」

女「そうだね」

リン「俺は、…それが何か関係してるんじゃないかって思ってる」

女「でも、感染しちゃったら頭が破裂するんじゃないの?」

リン「潜伏感染の例を見たことがあるか?」

女「ない…」

リン「なら、わかんないだろ。ああやって死体が綺麗なまま残るのかもしれない」

女「死体はまあ、百歩譲って分かるとしてさぁ。あの煙みたいな霊体…みたいなのは?」

リン「知らん。分からん」

女「っていうか、こんな話すべきじゃないよね?もっとこう、じーんとすべきじゃない?」

リン「はあ?…いや、もういいだろ」

女「リンって、…切り替え早いよね。あ、悪い意味でだよ」

257 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)20:27:49 ID:ePK

私が精一杯の毒をこめた言葉に、リンが片頬を歪ませた。

リン「俺はあいつが嫌いだったからな」

女「…そうなの?」

リン「ああいう甘ったれは、苦手だ。いなくなって清々してる」

女「…ふうん」

そういうことにしておこう。

彼がコマリを抱いた時の、あの優しげな声や表情とか。

彼がコマリに手向けた、あの花の美しさとか。

…言ったら、怒るんだろうな。彼は。

リン「何笑ってる」

女「ううん。…リンってさあ、いい人だよね」

リン「はあ?」

女「何でもない」

じろりとこちらを睨んできたリンの視線をかいくぐるように、窓の外に目を向けた。


コマリの今際の言葉どおり、リンは山を下り、海に向かっている。

258 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)20:32:38 ID:ePK

女「ねえ、リン」

リン「ん」

女「…コマリと何を話してたの?」

リン「は?」

女「いや、いきなりコマリに協力しだしたり、別れ際だって何かこしょこしょ話してたじゃない」

リン「…」

リンがサイドミラーに目を向けた。

リン「たいしたことじゃない」

女「…彼って?」

リン「知らない」

リンがハンドルを切る。私の体は慣性に従い、ゆるく揺れた。

女「生存者?」

リン「…多分」

女「歯切れ悪くない?ねえ、何か秘密にしてるでしょ」

リン「本当に知らない。ただあいつは、生きた人間が海に向かったと言っていたんだ」

女「それが条件だったの」

リン「ああ」

…本当かなあ。

かなり、怪しい気がする。

女(なーんか)

リンは私に、何か隠している気がするのだ。

でも、追求しすぎるのはいけない気がした。

女(ま、…会って一週間も経ってない人に、軽々しく何でも言えない、か)

少し、…いや、なんでもない。

259 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)20:37:29 ID:ePK

少し停まろう。

正午の少し前、リンが呟いた。

女「ん、どうかした?」

リン「少し休みたい」

確かに。リンの一日は、ほぼ外を走り回るか、運転するかだ。

女「ごめんね、運転ばっかりさせて」

リン「しょうがない。お前にハンドル任せたら生命の危険だからな」

女「返す言葉もないけど…」

リン「涼しくなってきたな」

リンがついに、道路わきに車を停めた。

狭い道だが、対向車などあるはずもないので気にしなくていい。

リン「…なあ、川だぞ」

リンが私の座る助手席の窓を、顎で示した。

女「えっ」

身を乗り出すと、さらさらと音を立てる木の葉の隙間から、清い流れが見えた。

女「ほんとだ!!」

リン「よし、降りよう」

リンが珍しく、瞳に輝きを湛えている。

女「うんっ」

260 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)20:43:19 ID:ePK

女「つめたーーー!」

ばしゃばしゃと音を立てて浅瀬に入る。

飛び散った水の冷たさは、成る程、もう秋だ。

リン「転ぶなよ」

リンが裾をまくりながら言った。 失礼にもほどがある。

女「大丈夫ですからー。…リンも、ほらっ」

お返しに手を引っ張ると、リンはつんのめりながら川に入った。

リン「うわっ」

女「冷たいでしょ」

リン「いきなり引っ張るな。転ぶだろ」

リンはぎこちなく腰を曲げ、水を掬った。

美しい透明さだった。清水は光を屈折させ、リンの手のひらを爽やかに潤す。

リン「綺麗な川だな」

女「ここ、近くにキャンプ場とかもあったんだよね。もっと上流に行けば、滝もあるよ」

へえ、と呟いたリンに、そろそろと近づく。

冷たい水を掬って、そーっと

リン「おい」

女「げ」

振り返ったリンが、じとりと私を睨んだ。

女「えへへ」

リン「小学生みたいなことをするな」

261 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)20:48:12 ID:ePK

女「いやー、水っていいよね」

ぱしゃぱしゃと子どものようにはしゃいで跳ね上げる私。

リン「…寒い。もういい」

体を冷やすだけ冷やすと、さっさとタオルで足を拭くリン。

女「水着とかあればなー」

リン「風邪引くだろ、この冷たさじゃ」

女「でもこんな綺麗な川、泳がなきゃ損じゃん」

リン「…川遊びがしたいなら、もっと他に適役なのがあるぞ」

え、と振り向く。

玉石が転がる川瀬に腰を下ろしていたリンが、にやっと笑った。

 

リン「というわけで、今日の晩飯を取れ」

手渡されたのは、釣竿と網。

女「…こんなのあったんだ」

リン「勿論だ。たまには出来合いの食品以外のものをとらないとな」

女「でも私、釣りしたことない」

リン「知るか。とにかく自分が釣った分だけが食える、というルールの下やる」

暴君かこいつは。

女「と…取れなかったら、分けてく」

リン「やだね」

女「嘘ぉ」

262 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)20:57:24 ID:ePK

身の丈ほどの釣竿と、網を持ったまま呆然とする。

リンはさっさと場所を吟味しにかかった。

女「ちょ、っとー」

リン「なんだ」

女「やり方がわからないんだけど」

現代っ子め、とでも言いたげな目でリンはこちらを見た。

やれやれとこちらに近づいてくる。

リン「本当にやったことないのか?」

女「うん。全然分かんない」

リンは溜息をつき、釣竿を手に取った。

リン「餌をつける。針で指切るなよ。あと、返しが付いてるから服につけるな」

リン「…で、投げる。糸を張って、魚がかかるまで待つ」

女「魚がかかったら、どうするの?」

リン「引っ張る。終わり」

女「えー?」

リン「えー、じゃない。ほら、さっさと振れ」

女「ま、待ってよ。まだポイント決めてない」

リン「あっそ」

女「…絶対リンよりいっぱい取ってやる」

リン「ふうん」

263 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)20:59:28 ID:RPF

待ってるよーー、!!

264 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:00:25 ID:ePK

砂利の上を歩き、魚のいそうなポイントを探す。

上流なので川の流れはそこそこに速い。

女(…いんのかな、魚)

やがて目視じゃ何も確認できないと知った私は、川の中央にある大きな石まで移動した。

女「よ、っと」

ぬるぬるした苔を踏まないよう、慎重に足場を決める。

リン「そこでいいのか」

女「リン、こっちは私のテリトリーだから来ないでよね」

リン「はいはい」

びゅ、と軽い音がして、リンが竿を振った。

女(負けるか)

みようみまねで、私も川の流れに糸を垂らした。

女「…」

糸は流され流され、ぴんと張って止まった。

女(かかるかな)

少しの不安と、大きな期待を胸に、竿を握り締めた。


30分後。

女「…」


1時間後。

女「…」


遠くで静かな水音がした。

振り返ると、リンが何の感動も無く竿を上げ、大きなニジマスをバケツに移していた。

265 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:04:58 ID:ePK

女「…」

唖然としてその様子を見つめる。

リン「…」

リンはもう一度竿に餌をつけ、…そしてちら、とこっちを見た。

女「!」

笑っていた。

目を細め、顎を上げ、どうだといわんばかりに。

女「く、…っ」

悔しい。本気で悔しい。

女(なんでいつもいつも、リンのほうが優秀なのよ)

もう見ない。急いで竿に視線を戻し、その振動に集中する。


しばらくして、また後ろで水音がした。


またまたしばらくして、後ろで水音がした。


またまたまたしばらくして、…


女「やめた!!」

2時間半が経った時、わたしは遂に高らかに宣言した。

266 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:12:37 ID:ePK

岩の上を下り、足音荒く砂利道を歩く。

リン「あれ、やめるのか」

竿を繰りながら、リンが言った。

女「…」

彼の傍らにあるバケツには、瑞々しい色の魚が4匹。

女「私に釣りは向いてないのかも」

リン「だろうな。集中力、根気がいるからな」

女「…っ」

くそう。くそう、くそう。

リン「どうすんだ?このままじゃ晩飯ナシだぞ」

女「黙ってて。あのね、考えはあるんだから」

そう、ある。

女「リンは今4匹ね。…すぐ倍にするから、いいもん」

リン「そんなに取っても食いきれないだろ」

冷静に竿を見つめながら返すリンに、精一杯の抵抗として舌を見せた後、私は服に手をかけた。

上着に着ていたパーカーを脱ぎ、半そでのTシャツだけになる。

リン「…」

靴を脱いで、太ももまでを覆っていたハイソックスを地面に放る。

リン「何する気だ」

リンが静かに聞いた。

女「魚のつかみ取り」

短く返すと、私は川の中に勇ましく入っていった。

267 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:16:54 ID:8gp

9月16日 ×

って書こうと思ったら来てた!
超支援

268 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:17:55 ID:ePK

リン「馬鹿?」

リンが死んだ表情で首を傾けた。

女「なんでよ!何もかからない棒を持ってるより、こうしたほうが良いに決まってるでしょ!」

リン「…」

女「もう話しかけないで!集中できない」

リン「まあ、なんだ」

リン「…頑張れ」

リンが竿を引き、腰を下ろした。

リン「俺はもう十分取ったし、休むからな」

女「ふうん。勝手にすれば」

リン「…コケるなよ」

そういうと、リンはリュックを枕にして横になった。

女「…」

水面をじっと見つめる。

リンの安らかな寝息は、研ぎ澄まされた神経には入ってこなかった。


ああ、山際に熟れた蜜柑のような日が沈んでいく。

女「…」

開始早々、苔を踏みつけ転倒してしまった私。

その濡れそぼった体を、夕焼けが赤く染めていく。

リン「で」

昼寝から目覚めたリンが、胸元をかきながら言った。

リン「どうなんだ」

女「…」

私は、答えない。

269 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:23:40 ID:ePK

リン「…」

聞いても無駄と判断したのか、リンが私の持つバケツを覗きこんだ。

リン「…」

はあ、と溜息。

リン「大漁だな」

私のバケツには、うっかり川に落としてしまったスニーカーだけが入っていた。

女「…」

何もいえない。

リン「さて。…お前、着替えろ。濡れた服は洗って、ロープにかけておけよ」

リンはぼりぼりと頭をかき、車の方に向かっていった。

女「…」

こいつのバケツ、蹴り倒してやろうかなあ。

…いや、やめた。多分殺されるし、虚しいだけだ。

女「あー…」

私の晩御飯は、ないようだ。


リンが火をおこし、見たことのある黒い箱を上に吊るした。

女「…飯ごう?」

リン「お、知ってるのか」

女「そんなものあったんだ」

リン「ああ。たまに使う」

ふうふうと焚き火を吹いた後、リンは飯ごうに水とお米を入れた。

女「…」

なんとか主食は確保できた、…のか?

270 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:31:46 ID:ePK

しゅわしゅわ、と音がして、細かい泡が飯ごうから吹き出る。

女「…泡出てるよ?」

リン「そのままでいいんだ」

女「ふーん」

リンは少しだけ飯ごうをずらし、何時の間に処理したのか、串刺しの魚を焚き火にかざした。

女「…」

少し、唾を飲む。

女(お、…おいしそう…)

リンはてきぱきと4匹の魚を火にかける。

女「…」

私の恨めしそうな視線を、飄々とかわす。


一時間も経たないうちに、ご飯と焼き魚はできあがった。

日は沈み、穏やかな川のせせらぎと虫の音があたりに響く。

リン「ほら」

リンが茶碗にご飯をよそってくれた。

女「ありがと」

受け取ったが、少し悲しくなった。

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271 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:37:33 ID:ePK

女「…すごい。おこげできてる」

リン「上手くできた」

女「じゃ、いただきまーす」

お箸を手に取り、白いご飯を口に運ぼうとした瞬間。

リン「…ん」

横から、何かが差し出された。

女「え」

リン「食え」

香ばしく焼きあがった魚が、こちらに向けられている。

女「え、で、でも。リンがとったやつでしょ」

リン「4匹も食えるか。こどうせこんなことだろうと思って、多めに釣ってたんだよ」

女「…そ、そうなの?」

リン「いらないんなら」

女「いるっ。いりますっ」

頭を下げながら、魚を受け取る。

女「ありがとう、リン!リン様!」

リン「…調子の良い。ま、今度からもう少し辛抱強く待つことだな」

リンが私のほうを見ないようにしているのが、分かった。

…頬が赤いのは、焚き火の光が映っているからか。

リン「いただきます」

女「いただきまーす」

二人同時に、魚にかぶりついた。

ほのかな塩味と、柔らかい身が口いっぱいに広がった。

女「~~~っ」

リン「美味いな」

272 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:42:54 ID:ePK

女「…ふぃんへぃへ」

リン「飲み込んでから言え。行儀が悪い」

女「…んぐ。人生で、一番美味しい魚かも」

リン「言いすぎだろ」

女「本当!すっごく美味しい」

リン「大げさすぎる」

リンの白い歯が、綺麗に身を削いでいく。

私も一生懸命、魚にかぶりついた。

二人無言で、頬張る。

生きてるな。 ふと思った。

女「ねえねえ」

リン「ん?」

女「何か今、すっごく幸せかも」

リン「単純だな。魚ごときで」

そうじゃないんだ。

目の前に温かい火があって、空には宝石のようにちりばめられた星があって、

美味しいご飯があって、川のせせらぎが聞こえて、

リン「…何だよ?」

女「ん、何もー」

こんなにすぐ傍に、彼がいる。

商店街で暮らしていたときは、何だって一人だった。

ご飯を美味しいと、思うことすらなかった。

273 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:48:35 ID:ePK

女「リン」

リン「ん」

焚き火をぼんやりと眺めていたリンが、珍しくこちらに顔を向けた。

女「ありがと」

リン「お前な、そんなに魚ごときで恩を感じなくても」

女「そうじゃない。あのね、私を連れ出してくれてありがとう」

リン「…」

リンが視線をそらした。

眩しい物を見た、というように、片手で目を覆う。

女「本当に、今、生きてるって思える。全部リンのおかげだよ」

リン「…あ、っそ」

女「ありがとう、リン。本当に感謝してる」

リン「…」

ついにリンがそっぽを向いた。

女「私、リンと旅するの、楽しいよ」

リン「分かった、分かったから」

リンの指が、意味も無く砂を掘っている。

もう止めておこうかな。言いたいこと、言えたし。

女「…洗い物してくるね」

私は食器と飯ごうを手にし、立ち上がった。

ついでに久々に水だって浴びたいので、着替えの袋も持つ。

リン「…ん」

女「リンは車に戻ってていいから」

リン「…」

あれ。前に行けない。

274 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)21:56:00 ID:ePK

女「…リン?」

視線を下に向けると、私のシャツの袖を白い指が捕まえていた。

リン「…」

リンの唇が、震える。

声は、無い。

女「ど、どうかした?」

リン「…」

リンが黙って、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。

リン「これ」

再び見えた彼の手は、何かを握り締めていた。

女「え?」

リン「…」

無言で、拳を突き出す。

恐る恐る手を出すと、手のひらの上に柔らかなものが降ってきた。

リン「やる」

口の中で呟くように、リンが言った。そしてすぐそっぽを向いた。

女「…ミサンガ?」

ピンクと黄色の、ふわりとした色合いのブレスレッドが、手の中にあった。

リン「…」

リンが無言で頷く。

女「これ、リンが?」

リン「…」

また頷く。

リン「…簪。選んでもらったから。おかえし」

275 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)22:00:20 ID:ePK

女「…何時の間に作ったの?」

リン「今日の昼」

何時にもましてぶっきらぼうな口調のリンが、ポケット両手を突っ込んだ。

女「ありがとう。可愛い」

嬉しかった。

人から贈り物を貰うって、こんなに嬉しいことだったんだ。

リン「…行け」

しっしっと、犬を払うように手を振るリン。

私はその眉間に皺を寄せ、心持ち赤くなった顔に、微笑みかけた。

リン「…行けって」

リンの手の動きが、激しくなった。


川で体を洗い、丁寧に拭いたあと、ミサンガをつけた。

腕に巻き、固く結ぶ。

ミサンガが切れるとき、願いが叶うという。

女「…」

願い。

このミサンガが、リンからの小さな贈り物が、

女(…どうか切れませんように)

一生私の手首にあれば、どんなに良いか。

276 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)22:04:27 ID:ePK

車に戻ると、リンはさっさと毛布に包まって背を向けていた。

女「…リン、つけてみた」

その背中に声をかけると、ぴくりと動いた。

女「どう、見て。似合う?」

リン「…」

もそもそと、こっちに顔を向ける。

女「ほら。似合う?」

手首を顔に近づけると、リンはちらりとミサンガを見て

リン「…普通」

そう言って、目を閉じた。

女「なんじゃそりゃ」

私は少し笑って、自分の毛布を引き寄せた。

軽く体にかけて、横になる。

リン「…」

女「おやすみ、リン」

リン「…おやすみ」

リンは背を向けなかった。

私は、彼と向き合った姿勢のまま目を閉じた。


静かなリンの呼吸が、子守唄のように心地よ、く耳の中に響いていた。

277 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)22:05:19 ID:ePK

今日はここまでです。
次の投稿は、「海とレストラン」編始まります!

278 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)23:05:46 ID:85T

乙!待ってるよ!

279 名無しさん@おーぷん 2015/09/16(水)23:06:03 ID:xGc

面白い!
次回も期待
乙!

280 名無しさん@おーぷん 2015/09/17(木)00:17:23 ID:KiP

来たと思ったら終わってた
乙でした

まったりとした流れからして次はちょっとハードなのかな?

281 名無しさん@おーぷん 2015/09/17(木)11:51:22 ID:sjR

魚はいるんだな

これがどう絡んでくるのか楽しみ

282 名無しさん@おーぷん 2015/09/17(木)16:44:16 ID:Jsr

期待してる

283 名無しさん@おーぷん 2015/09/17(木)16:59:48 ID:dKt

ハローハロー。早く続きをどうぞ

286 名無しさん@おーぷん 2015/09/19(土)21:42:40 ID:9gW

支援

287 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)00:45:46 ID:ZgT

支援

288 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)18:13:17 ID:0EH

ハローハロー。

海とレストラン編、はじまりです。

289 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)18:18:59 ID:0EH

女「…ふんふーん」

リンの運転する車は、ゆったりとした速度で山道を下っていく。

曲がりくねった道に気分が悪くなることもない、優しい運転だ。

リン「やけに機嫌が良いんだな」

女「え?」

リン「鼻歌歌ってる」

女「うそ。気づかなかった」

リン「…これか?」

リンがサイドポケットに入れてあるCDを一枚取り出し、私に手渡す。

女「…ん?これって、今流してるやつ?」

そう。

外国人男性の、低く荒い声。

その力強い歌声が、時々リンのきまぐれで車内に流れるのだ。

女「スタンド、…バイミー?」

古いジャケット写真を見て、遠い昔の知識を頼りに英語を読む。

リン「そ。ベン・E・キング。…知らない?」

女「ええと…知らない」

リン「だろうな。大分昔の歌手だし…。同名の映画なんかもあったんだぞ」

女「へー?」

リン「どうせお前なんか、アイドルとかふにゃけたバンドの歌しか聞かなかったんだろ」

女「ま、まあ。だって皆聞いてたし」

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290 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)18:23:20 ID:0EH

女「ふーん…。英語の歌なんだ」

リン「ああ」

女「…」

ふと、思い出す。

あの、夜のことだ。私が彼を見つけた日。

どこからか美しく這い寄ってきた歌声は、この曲調に似ていた。

…英語ではなく、日本語だったけど。

女「リン」

リン「なに」

女「リンって、…歌うまいよね?」

リンが物凄い勢いでこちらを向いた。車体が少し揺れる。

リン「…何で知ってる」

女「え?」

リン「お、お前の前で歌ったことなんて無い」

女「初めてリンとあった日とか、…あと、私が寝てるときとか、歌ってたよ?」

リンの顔色が絶望の青白さへと変わった。

291 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)18:26:55 ID:72h

ハローハロー。
待ってました!

292 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)18:32:01 ID:0EH

リン「…歌ってない」

うそつけ。

女「歌ってたよー。これの日本語版みたいなやつ」

リン「気のせいだ」

女「すっごく綺麗な歌声だったよ。声の低い女の子みたいな、滑らかで澄んでて…」

リン「黙れ」

女「歌ってよ、リン。私、リンの歌好きだよ」

リン「黙れって!」

女「えー」

リン「気のせいだって言ってるだろ!勘弁してくれ」

そうかなあ、と口の中で呟いてシートに身を沈める。

リンはこれ以上話題を広げないためか、車内のオーディオを切ってしまった。

女「…」

静かな走行音だけが、響く。

私は腕につけたミサンガの、糸が細やかに交差した線、暖かな色合いを観察した。

やがて。

リン「…おい」

寝ていると思ったのだろうか。リンがためらいがちに声をかけてきた。

女「うんー?」

実際、うとうとしかけていた私は頭を上げた。

リン「ほら、外。見てみろ」

リンが窓の外を指で示す。 身を起こして、その方向を見ると。

女「…うわー!!」

目の前には、美しい水と、白亜の砂粒が広がっていた。

293 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)19:11:09 ID:0EH

「ようこそ  の浜へ」

錆びてかしいだ看板が立っている。

リン「…潮の匂いだな」

女「うんっ」

私達は車を海岸の駐車場に停め、海の湿った空気を吸い込んだ。

女「ねえ、海に行って何するの」

返事は無い。リンは相変わらず地図と手帳の両方とにらめっこしている。

リン「…目ぼしい施設を探してから、計画を立てる」

女「…」

目の前には、こんなに綺麗な砂浜と海があるのに。

女「ん、」

そっとドアを開ける。

むせ返るくらいに濃い、潮の香りが鼻腔になだれこんでくる。

女「…」ウズ

海が、私を呼んでいるのだ!

女「先に行くね!」

そういい捨てると、私はサンダルを脱いで走り出した。

ふかふかのパンケーキみたいな感触と色を持つ砂を踏みしめ、走る。

海だ、海だ、海だ!!

女「うみーーっ!!」

遠い水平線に叫び、私は波打ち際へと足を踏み入れた。

川とはまた違った質感の水が、私の足を濡らして、引いて、濡らして、引いて。

女「リーン!海だよーっ!」

リン「…子どもかーっ」

階段の上からリンの呆れ半分、笑い半分といった声が聞こえた。

294 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)19:17:53 ID:0EH

女「リンも、おいでよーっ」

リン「はいはい」

リンがリュックを片手に階段を下りてきた。

鋼鉄を思わせる顔にも、なんだか無邪気さが浮かんでる気がする。

海だ。海は凄い。

「生命の母」…そう聞いたことがある。

その滑らかな波の前では、全ての生物は子どもへと還るのだ。

リン「クラゲとかいるんじゃないか」

女「いないよー?」

リン「…冷たいか?」

女「いいから、リンも入ってみなって」

リン「…」

リンがブーツの紐を解き、裸足になった。

少女のような曲線を持つ爪先を、ちょん、と水面にひたす。

リン「…海だな」

女「海だねぇ」

リン「…」

リンが腰をかがめ、水に触れた。

リン「…女ー」

女「ん?」

バシャッ。

女「」

いま、なにが。

顔がつめたい。そして服が湿ってる。

リン「…ぷっ。あはは、…グズだな」

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295 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)19:21:36 ID:0EH

女「…」

リン「凄い顔、してる。…あははっ。マヌケすぎる」

女「こらぁあああああああ!!」

私は全力で水を掬うと、目の前のクソガキに浴びせた。

リン「はいはずれ」

リンは軽いステップで避ける。

女「馬鹿!避けるな!」

リン「だって遅いし」

女「きいいいいいい!!」

ばしゃばしゃと、だだっ広い海に二人の子どもの影が躍る。

母なる海が、そっと微笑した。


女「…はぁ、はぁ、…」

リン「運動不足だな」

女「なん、で…。息一つ切れてないのよ」

結局私は、リンにしぶき一つかけられなかった。

寧ろ逆襲で履いていたスキニージーンズがびしょぬれになってしまった。

女「くそー…」

リン「楽しいな、海」

女「どこが!」

296 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:07:15 ID:9Dr

待ってましたよ~

297 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:12:07 ID:0EH

女「水着持って来ればよかったなー」

リン「そうだな」

二人で砂浜に並んで、海を見つめる。

お昼というにもまだ早く、お腹はそこまで空いていない。

ただただ、静かに砕ける波を見る。

リン「…なんか、休んでばっかだな。俺たち」

女「いいじゃん、色々大変だったし」

リン「ん」

女「…きもちいいねー」

穏やかな時間だった。 リンも少し眠たげな、リラックスした目をしていて。

いつもの少し事務的な様子が消え去ったようで、嬉しい。

女「…」

砂浜の上に、立ってみた。

中学校でやったダンスの授業を思い出す。

創作ダンスの振り付けのイメージを、先生がテレビで見せてくれたことがあるのだ。

白いワンピースを着た少女が、砂浜の上を、何かを求めるように踊って。

女「…」

踊って。

女「…あー」

気づけば、私は手足を繰りながら歌っていた。

298 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:20:42 ID:0EH

異国の歌だった。

北欧かどこかの、甘く切ない声を持つ女性シンガーの。

歌詞カードを見ても、外国語の発音は分からなくて。

でも、この胸を満たして全てを攫っていくような旋律を、口に出したくてしょうがなくて。

一生懸命、インターネットで調べて、発音と日本語訳を覚えたのだ。

女「…」

喉を開けて、胸をそらして。

歌った。

リン「…」

リンが静かに体を揺らした。

女「…」

回って、歌って、また回る。

そうして、舞台女優がするみたいに綺麗なお辞儀をした後、私は最後の音をそっと生み出した。

リン「…上手いじゃん」

女「そうかな」

少し照れくさい。

リン「誰の歌?英語とは少し違うようだけど」

女「えーと、…忘れちゃった」

リン「なんだそれ」

女「でも、これ凄く好きな歌だった。今じゃタイトルすら思い出せないけど」

リン「何ていってるの、それ」

女「ええ、と」

眉間をもんで、記憶を呼び起こす。

299 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:27:10 ID:0EH

女「…これねえ、自殺する女性の歌なんだ」

リン「はあ?」

女「一番目は彼女の遺書の内容。二番目は、海に入ったときの歌」

リン「それにしては綺麗なメロディだったな」

女「だって、彼女は怖がってなかったから」

リン「…どういうこと?」

女「全てを受け入れたから」

ざあ、と潮を含んだ風がリンの髪を揺らした。

彼の耳の横に見える牡丹が、頷くように動く。

リン「受け入れる、ね」

女「そう。自分は海から生まれたから、海に帰るのよ。ママの腕の中で、少女のように眠るのよ。…」

そういって、歌は終わる。

美しいピアノの音すら掻き消えたあと、ざあ、と波の音がするのだ。

リン「ふーん」

女「すごいよね、海って」

リン「ああ」

女「…」

リンにも、歌って欲しかった。

女「スタンド、…バイミー?」

リン「やだ」

女「なんでよー。歌ってってば」

リン「断る」

女「けち!」

300 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:30:20 ID:0EH

それでも、私はきづいていた。

私の歌を聴く彼の表情や、リズムをとる指の動き。

女「歌って、リン」

リン「…」

彼だって、この偉大な、たくさんの命を湛える海に捧げたいのだ。

女「…ねえ」

リン「…」

リンが大きく息を吸い込んだ。

空気が、ぴんと張った気がした。


彼の声が潮風を穿った瞬間、私は目を閉じた。

301 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:33:03 ID:EXY

来てたー!
超支援

302 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:35:25 ID:0EH

夜が訪れ

あたりが闇に支配される時


月明かりしか見えなくたって


恐れることなんてないさ


怖がる必要なんてどこにもない


ただ君が暗闇の中ずっと


僕の傍にいてくれたら


So, darling darling
Stand by me


Oh stand by me


Oh stand
Stand by me


Stand by me

303 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:43:08 ID:0EH

リンの声は、綺麗だった。

少女の滑らかさと透明さ

そして少年の力強さを兼ね備えた、そんな声だった。


…私は彼の、海の一点をじっと見つめる横顔も、美しいと思った。


リン「…」

リンが最後の「スタンド・バイミー」を終えた。

長い長い息をつき、髪をかきあげる。

女「…リンっ」

私は少し恥ずかしそうに顔を伏せたリンのところへ、駆け寄った。

上手だった。なんだか、泣きそうになっちゃった。

女「やっぱ、うま…」

「ブラボォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」


ん?

リン「…誰だ」

「んもう、二人ともすんごい!すんっっごいわよおおおお!」

女「…」

後ろから、少し荒いがさついた高音が聞こえる。

リンが、腰に手をやりながらすばやく振り向いた。

「もう私感動しちゃった!やばいわよ!マスカラ溶けちゃうっ!」

リン「…あ?」

庇うように差し出されたリンの手を下げ、私も後ろを向く。

女「…あっ」

そこには。

304 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:49:14 ID:0EH

黒いワンピース。白いカーディガン。

海風をはらみ、はたはたと翻っている。

そして、ブラボー、ブラボーという絶叫に合わせて何度も打たれる手のひら。

赤いネイルが、やけに眼に染みる。

…視線を上げる。

「あんたたち、将来が楽しみ!楽しみすぎるわっ」

女「リ、リン」

私は思わずリンの背中に隠れた。

女「…あ、あ、あの人」

透けていた。

コマリのように、白く煙のようにゆらゆらと。

リン「…大丈夫だ」

リンが私の手を握った。

女「…そ、それにさ」

そう。いや、まあ、煙であることに驚いたのではない。初めて見たわけじゃないし。

女「あの、人。…さあ」

あの人、いや、彼女。 

…首に巻いた、赤いスカーフ。筋の浮いた、首。

「いやあー久々にいいもん聞いたわ!」

そうベラベラとつむぐ口には、ピンクの口紅が引いてある。

顔全体に施された、丁寧で上手な化粧、なん、だけど…。

「あら、なぁにその顔」

女「…お、」

リン「男か」

そう。 彼、だ。

305 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:52:38 ID:hoe

待ってました!

307 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)20:59:59 ID:0EH

遠巻きでも分かるほど、白く透ける不審者の体は、ゴツかった。

足首なんか、ヒールのストラップがはちきれそうに逞しい。

あの肩幅なんて、ふんわりしたワンピースでも隠せないほどだ。

女「…」

はじめてみる種類の人間に唖然としていると、リンが前へ進み出た。

リン「…俺は、リン。こいは女。二人で生き残りを探す旅をしてる」

「あら、ご丁寧に。しっかりしてるのねえ、ぼうや」

リンの眉間に一瞬皺が寄った。

「私の名前は、ミキ。うふふ、そんなに引かないで。見ての通り男だけど」

女「…あ、あのっ」

ミキ、と言う風貌に沿った女性的な名前の彼に、声をかける。

ミキ「あら、なに。お嬢さん」

女「…生きて、ますか」

単刀直入な私の問いに、ミキがくすりと笑った。

ミキ「…いいえ。死んでるわ」

リン「…残念だ」

ミキ「あなたたちは?」

女「生きてます」

ミキ「そお。それは良かったわね。元気ー?」

彼はやけにフランクだ。私は思わず、オネエタレント、と呼ばれた人々のことを思い出していた。

308 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)21:06:04 ID:0EH

リン「来い。危険はなさそうだ。様子はおかしいが」

リンがようやく腰から手を下ろし、私の手を引いた。

女「う、うん」

引っ張られて、ミキに近づく。

ミキは女優のように足を組み、何も無い宙に浮いていた。

ミキ「んふ、近くで見ると可愛い顔してるのね。二人とも」

リン「やめてくれ」

ミキ「あーら、いいじゃないのよお。リン、…って呼んでもいい?あなた、ドラマに出てた若手俳優に似てるわ」

彼が上げた俳優の名前にリンはぴんとこなかったらしいが、私はああ!と口を押さえた。確かに似てる。

ミキ「さて、お二人はどうしてここに来たのー?」

リン「…山の上の遊園地、分かるか」

ミキ「ああ、結構近くよね。知ってる」

リン「そこのお前と同じ種類の人間から、ここに生き残りが来たという情報をもらった」

ミキ「ええ、ミストが!?」

ミキが目を剥き、頓狂な声をあげた。

女「ミス、ト?」

ミキ「ええ。私みたいに、くたばったのにこうやってフワフワしてる連中を、ミストって呼ぶの」

リン「へえ」

リンの目が、「こいつ使える」というように輝いた。

ミキ「生き残り、生き残りねえ」

ミキがうむ、と腕を組む。

リン「分からないか?」

ミキ「勿論知ってるわ。ダチだもん」

女「え、っ」

309 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)21:12:54 ID:0EH

女「やっぱり、生きてる人がここに来たの!?」

しかもダチって。

ミキ「うん、来たわよー」

リン「…いつだ」

ミキ「それよりさあ、今世界どうなってるの?私全然知らないんだけどー」

魚のように宙を泳ぎながら、ミキが言う。

リンが髪をかき混ぜ、イラついたように質問を重ねた。

リン「男が来たんだろ。ダチっていうなら、名前も、顔も、分かるだろ。教えてくれ。そいつは、どこに」

ミキ「ねえ、女ー。リンとはどういう関係なの?」

女「あ、あの。えっと」

リン「聞け!!」

ミキがきゃはは、と笑って飛びのいた。

ミキ「カッカしないの、リン。せっかちな男って、いやよ」

リン「だから…」

ミキ「そんなことより、私についていらっしゃいよ。久々のお客さんだし」

女「…どこに?」

ミキがにんまりと、大きな口を裂くようにして笑った。

ミキ「…私の、お店!」

そういって、怖い顔をするリンを避けて私の背中を押す。

つんのめるようにして歩き出した私の後を、リンが思いつめたような溜息と共に追った。

310 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)21:13:29 ID:0EH

今日はここまでにしておきます

311 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)21:32:01 ID:72h

乙でした!

312 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)21:32:58 ID:EXY


次も楽しみにしてるぞー

313 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)21:36:33 ID:hoe

おつ

無理せず頑張ってくれー

314 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)22:58:56 ID:8OJ

応援してる!

315 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)22:59:38 ID:2Pu

アロウ アロウ アサオキタラメチャクチャサブイシ

316 名無しさん@おーぷん 2015/09/20(日)23:36:30 ID:VC1

なかなか面白いぞ~

318 名無しさん@おーぷん 2015/09/21(月)00:27:27 ID:dOK

これは面白い
掘り出し物の

319 名無しさん@おーぷん 2015/09/21(月)04:50:50 ID:p5h

320 名無しさん@おーぷん 2015/09/21(月)17:58:49 ID:hvt

ハローハロー。続き待ってます。

女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【1】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【2】
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元スレ 女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」
https://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1441511235/


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    • 1. 以下、VIPにかわりましてBIPがお送りします
    • 2015/11/14 21:06
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