
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【2】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【3】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【4】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【5】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【6】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【7】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【8】
「marine」
ブルーに塗装された木の看板に、白いペンキで書かれた、丸っこい文字。
女「マ、…リン?」
ミキ「そ。ここが、私の店!」
ミキが無い胸を張った。
女「…店、って」
私とリンは、目の前にある可愛らしいコテージ風の建物を仰ぎ見た。
リン「レストラン、か?」
ミキ「そう!ここの海で獲れたお魚とか、山の山菜とかフルーツとか、あと私が育てた鶏の料理が自慢なのっ」
女「え、え。これ、ミキ…さんのお店?」
私は目を丸くして聞き返した。
私のお店に連れて行く、なんて息巻かれた時には、まさか怪しげなパブなんじゃないかと思ったが…。
リン「意外だな、こんな趣味のいい店とは」
リンと珍しく意見が合致した。
ミキ「さ、入って入って~」
ミキが少女のような足取りで白い階段を登り、ドアを開ける。
ちりん、と錆びた年月を感じさせないベルの音がした。
マリン、…海。か。
白と淡い水色を基調とした外装を見回してから、私は促されるまま中に入った。
|
|
レストランの中は、しんと冷えていた。
女「…わあ」
リン「どういうことだ」
リンが首を掻く。私は思わずミキを振り返った。
女「…綺麗」
ミキ「あらぁ、そお?」
ミキがにんまりと笑う。そう、綺麗なのだ。
店内には錨をモチーフにした小物、赤や青といった旗
…それから、あれは何て言うのだろう。漁で使うための、ガラス質なボール。
そんな、趣味がよく可愛らしい小物が散りばめられていた。
女「…すごい」
テーブルは、そんなに多くない。4人用のものが5つ
それから、カウンターに一人掛けようのイスが8脚。
リン「綺麗だな」
ミキ「やあだ、そんな褒めないでよう」
リン「劣化のあとがない」
リンが真顔で言い放った。ミキの表情が「ん?」で固まる。
リン「埃も、劣化のあとも、何も無い。そのままだ」
女「そ、そう。私もそれ思った」
ミキ「ちょ、ちょっと!あんたらまさか、内装を褒めてたんじゃなくて、ボロボロになってないって言いたかったの!?」
リン「ああ」
ミキ「きぃいい!!」
キター
リン「誰かが手入れしてるみたいだな。…生存者か」
ミキ「ちょ、待ちなさいよあんたら。そんなのいないってば」
リン「じゃあ誰がこの状態で店を保つんだ」
ミキ「私以外に誰がいんのよ!!」
女「あ、ミキさんが?」
ミキ「そりゃそうでしょ!?借金してやっと持った自分の店だもん、綺麗にしときたいでしょうが!」
リン「几帳面だな。意味も無いのに」
ミキの表情が、少し曇る。
ミキ「…そーね。綺麗にしてたって誰も来やしない」
女「私達が、来たよ」
ミキ「ふふ」
ミキの唇がわれ、白い歯が輝いた。あ、と思った。
彼は化粧で味こそ損なっているが、端正な顔立ちの青年だったのだ。
ミキ「ふたりとも、そこのカウンターにかけなさいよ。お茶いれたげる」
リン「安全か」
ミキ「もち。自家栽培のカモミールだもん」
そういうと、ミキは滑るようにカウンターの奥に消えていった。奥がキッチンのようだ。
女「リン、座らないの?」
私は天井に据え付けられたシャンデリアを見上げるリンに声をかけた。
リン「お前こそ」
リンは海に面したテラスで突っ立っていた私に返した。お互い、ここを調べる気まんまんなようだ。
リン「…ようこそ、小波のレストラン“marine”へ」
リンがレジ横のパンフレットを取り上げていた。走りよって、後ろから覗く。
リン「店主、イトカワ ミキ…。あ、やっぱあいつなんだ」
指で示す先には、満面の笑みでピースサインをするミキの写真があった。
女「28歳、だって。すごいね若いのに」
リン「ああ」
ん、とパンフレットの可愛らしい字体を凝視する。
女「…オーナー兼、シェフ兼、…ボーカル?」
リン「そう書いてあるな」
リンがページをめくった。
「marineでは、美味しいお料理とお酒だけでなく、ささやかな癒しも提供しております」
「毎日午後8時からは、一旦オーダーをストップさせていただき、店主のステージをお楽しみいただけます」
ステージ。
女「…」
リン「お前、今何を考えてる」
透ける布を纏ってポールに絡みつくミキ。
女「…リンは?」
リン「…」
リンはパンフレットをラックに戻すと、テーブル席のほうへ歩きはじめた。
白い板張りの床が、きしきしと音を立てる。
女「…あ」
海を背にした、大きなガラス窓。
その前に、グランドピアノとスタンドマイクが置いてある小さなステージがあった。
リン「歌、か」
女「えー、すごい!」
私は艶々と黒を放つピアノに近づく。滑らかな曲線に、曲がった私の顔が映った。
ミキ「あらあ、見つけた?」
気づくと、後ろにポットを持ったミキがいた。

女「ミキさん、ここで歌ってたの?」
ミキ「そうよぉー。ベップっていう従業員にピアノ弾かせてね」
ミキの目が懐かしそうに細められた。
リン「でも今はそいつもいないや。私、ピアノ弾けないし…。今では意味の無いものね」
女「そうなんだ」
私は少し目で合図を取ってから、ステージにあがった。
ミキが微笑んで私の動作を見守る。
女「…触っていい?」
ミキ「ええ」
女「…」
まだ楽譜も置いたままのピアノを撫ぜ、そっと白い鍵盤に触れる。
ポロ、ン。
学校のピアノとは違う、重厚で威厳に満ちた音が響き渡った。
リン「高そうだな」
リンの意見は現実的だ。私はそっとイスに腰掛けた。
ミキ「え、女ちゃんまさか」
リン「おい?」
すう、と息を吸い込む。
私は姿勢をぴんと正し、両手を鍵盤に置いた。
ぽろん。
私の指が鍵盤の上で跳ねる。
ぽろん、ぽろん。
美しい音を、紡いでいく。
リン「…」
ミキ「…」
最後に優しく鍵盤を叩き、私は息をついた。
女「いやー、気持ちいいね」
リン「…おい」
晴れ晴れとした気持ちでイスから立ち上がった私に、リンのじとっとした視線が絡む。
リン「…なんだ、それ」
女「猫踏んじゃった」
リン「お前ピアノ習ってたの?」
女「ううん」
リン「だろうな!けどな、この流れでそれはないだろ!」
女「え、なんで?駄目なの?猫踏んじゃった」
リン「猫踏んじゃったに罪はねえよ!悪いのはお前だ馬鹿」
ミキ「…ぷっ」
あははははっ、とミキが豪快な笑い声をあげた。
ミキ「オーケーオーケー。私も一瞬ピアノ経験者かと思っちゃった。オチがすごいわね」
女「えーと、ごめん」
ミキ「いいのよお。楽器なんて見たら誰でも触りたくなるもんね」
そういうと、またお腹を抱える。
女「…そんなに笑わなくても」
口を尖らした私の横で、リンが片頬をあげてにやついた。
来た来たーー??待ってました?
来てたー!
超支援
頑張れ!
待ってる
ミキ「昔はバンドもやってたんだけどねぇ」
かちゃり、と白い陶器のティーカップをおきながらミキが溜息をついた。
ミキ「全然売れなくってさ、やめちゃった」
リン「そんなもんだ」
女「ふーん」
カウンター席のスツールは少し高くて、足がぶらぶらする。
ぼんやりとミキの精悍な横顔を見ていたら、リンが横で足を組みなおした。
リン「…まあ、とにかくあんたの素性は分かった」
ミキ「そお」
リン「俺たちには色々あんたに聞かなきゃいけないことがある。な?」
女「うん」
リン「…あんたは遊園地にいた子どもとも違う。分別がある。だから、教えてくれ…知ってること、全部」
ミキの指が、ティーカップの縁をなぞる。
ミキ「そうね、いいわ。私も話し相手が欲しかったとこだし」
彼の瞳が、カラーコンタクトの奥で輝いた。
ミキ「…何から聞きたい?」
え?
私が生きてる頃の話、って。
あはは、てっきり生存者のこと聞かれるかと思った。
女ちゃん、変わってるわね。…はいはい、リンの質問にはあとから答えるから。順番。
…そうねー。
私は、生前知っての通り、ここのオーナーをしてたわ。
従業員は5人。結構経営はカツカツだったけど、雑誌にも掲載されたりして、忙しい日々だったわ。
あの日。…あの日はね。
私、…病院にいたのよね。
ううん。近くのじゃなくって、大学病院。
…入院してたの。
1ヶ月くらい前から。…喉頭ガン、って分かる?
あ、よく気づいたわね。そう、この喉に巻いてるのも、ここを保護するためなの。
大手術も控えててさー。折角仕事も軌道に乗り始めてたのに、もうサイアクだったわよ。
そんで、ニュースでいきなりパンデミックが起こったこと、知ったの。
病院はもう、パニックよ。
私、そのとき思ったの。
店に帰りたいな、心配だな、って。
④
私、気づいたらベップ…。あ、従業員のヒョロい坊ちゃんなんだけど。
そいつにメールしてた。
ベップって変な奴でさ、すごく堂々としてるっていうか、何事にも動じないの。
だからニュース見てても、大して動揺もしてなかった。
ベップ、避難する?って聞いたら、
「いやあ、しないっすよ。どうせどこ逃げても一緒だし」
呆れたけど、こいつらしいなあって思った。
私、ベップに迎えに来てくれるよう頼んだ。
そしたらベップ、一言「死ぬかもしれませんよ」って言った。
私、いいよって返した。
最後に店のことやってから死ねるんなら、本望だって。
ベップは、すぐに迎えに来てくれた。
病院はあわただしくて、抜け出すのは簡単だった。
点滴も医者もないし、なんかダルくてベップの補助なけりゃ歩けなかったけど、とにかく店に来た。
…え?
どうして、って
どうしてそこまでして店に帰ったの?って?
…そうね。それは、ええと。…ナイショ。
まあ、とにかく私はフラフラの状態でここに来た。
店は私が入院してから閉じてたけど、綺麗だった。掃除してくれてたの、ベップが。
私は店の中でラジオを聴いてた。夕方まで、そうしてた。
ベップがさ、「オーナーは逃げなくていいんすか」って聞いてきたけど
なんだろう。私、喉を手術して声帯も取って、で、また転移して。
また手術、…。医者はさ、まだ希望はありますって言うのよ。でも、なんとなあく、そろそろかなって思ってたの。
若いとガンの成長も早いって言うしね。
っていうか、…私、もう死んでたも同然だったのかなあ。
店にも出れない、料理も、接客もできない。
それにもう声なんか出ない。歌えない。
…あと、店を閉める前に「かなしいこと」もあってさ。
だから、もう生ける屍状態だったわけ。
でも、店に来た途端、元気になれた気がした。
だから私、もう病院には戻らなくていいやって思った。
ここでもう時間の許す限り過ごして、んで、死のって。
そう紙に書いて伝えると、ベップは一言、ふうんって言った。
夕方になった。
ベップが、ぼそっと言った。
「俺、生まれ変わってもここで働きたいっす」
なんで?って聞くと、
「なんとなく」って。
まるで今から死ぬみたいねって言うと、
「多分、死にます」って…
いつものベップと変わらない、真顔で言ってきたの。
「俺、来る途中に感染者の体液に触っちゃったんす」
「さっきから頭の中で、じゃぶじゃぶ水の音が聞こえるんですよねえ」
ベップ、本当にいつもと変わらなかったのよ。
どうすんのよ、って聞くとさ。
「いや、もう死ぬしかないっしょ。オーナーうける」
いやいや、死ぬって。え、もう?
「頭痛いし、ヤバいっすね」
軽くない、あんた?冗談でしょ?
「俺、病院にオーナーを戻すなら今しかないっすよ。最終確認ですけど、いいんですね?」
…
「オーナーが一人で帰れるわけないし、多分もう誰も助けてくれないですよ。皆逃げるのに必死だし」
うんまあ、別に帰らなくていいんだけど
「じゃ、俺とオーナーどっちが早く死ぬか賭けつつ、ダベりましょうか」
笑えないわねえ…。あんたこそ病院行きなさいよ。
「もう無理っすよ。皆、死にますよ」
ベップは微笑んでた。
ああ、死ぬのかあって思った。
嫌だな、って思う人もいるでしょうね。でも、皆死ぬんだもん。
しょうがないな。もう、…。
夕方になって、ベップがいきなり席を立った。
「煙草吸ってきます、オーナー」
お前煙草吸わねーじゃん。って、書こうとしたら、さっさと砂浜に下りてっちゃって。
店からダッシュで離れたとこで、いきなり頭が破裂した。
あのね、綺麗だったのよ。
ベップが最後に振り返って、大きい声で
「オーナー、ごめん。お先に」
って映画か。…叫んだのよ。そしたら、あいつの頭が包まれるみたいに青い液状になって。
ぱん、って。
ベップの頭のない体だけが、砂浜に転がってた。
片付けようかなって思ったけど、触ったら感染するだろうし、ベップもやめろって言いそうで、やめた。
夜が来て。
私はずっと座ってた。
何日経ったかな。ベップのクリアがふよふよ店の外を漂ってるの見たときには、もう動けなかった。
私は、死んだ。
で、起きると、こんなになってた。
あれー?って思ったけどすぐ、ああ、これが「ミスト」だって気づいたの。
うん?まさかあんたら、知らない?
ははーん…。私、結構情報通なのよねえ。
前に来た「生存者」に色々教えてもらった知識もあるし。
よっしゃ、じゃあいっちょ教えてあげますか。
…って、女ちゃん、何!泣いてるの、まさか
ベップが良い奴?そ、そうよね。あいついい奴よ。
…リンは何よ。え?違うわよ!!ベップはノンケよ!!そんなんじゃないからっ!
私の好きなタイプは筋肉隆々で頼りがいのある…
喉の奥と鼻の奥がつんとして、目が熱くなる。
ミキ「あーあーあー、鼻水でてるわよ」
ミキが手を伸ばし、私にティッシュを渡してくれた。
リン「ベップ、ってやつのクリアは?」
ミキ「分かんない。あいつ放浪もんだし、どっか行ったんじゃない?」
リン「そうか、…女、うるさい。泣き止め」
女「ごべ、…ん」ズビ
リン「それで、情報通って言ったな」
ミキ「ええ。結構調べたしね、病気のこと」
リン「是非聞きたい」
ミキ「いいわよ!まず、ええと。タッセルクリア症候群は原因不明の…」
リン「そこはいい。常識の範囲内だ。…ミストとかいうやつに、ついてだよ」
ミキ「ああ、オッケー」
女「…ぐしゅっ」
リン「お前、…はあ。もういい」
きてた!
支援
ミキ「あんたら、感染者の死体が青いゼリーみたいになるってことは知ってるわね?」
女「トウメ…じゃなかった、クリア」
ミキ「そ。二次災害、クリア。けど、もう一個あんのよ」
リン「…ミストか」
ミキ「うん。ミスト…霧ね。これって結構特殊な事例らしいの」
ミキ「潜伏感染者が発症前に何らかの原因で死亡した場合、死後にはクリアにならず、ミストになるのよ」
ずい、と身を乗り出しつつ霞のような体をした彼が息巻いた。
リン「成る程」
リンはささっとノートにペンを走らせて行く。マメなやつだ。
ミキ「ある怪しげなネット掲示板の噂だったんだけどねー。ソースもなかったしぃ。でもマジだったとは」
リン「死体は、…残るんだよな」
ミキ「そう。何故か生前の姿のまま、腐敗もなにもしないの」
リン「…科学的に、納得がいかないな」
女「それを言えばさ、リン。この病気だって科学じゃ説明つかないよ?」
リン「まあな。お前案外柔軟なんだな…」
ミキ「私は、この姿はユウレイみたいなもんなんじゃないかって思ってるけどね」
リン「生前の記憶、形を宿した思念体、…みたいなもんなんじゃないか?」
女「…」
リン「…いや、理解できないならいい。とにかく、これは幽霊ではなく病気の弊害ということがはっきりした」
女「あ、…。コマリの首にも潜伏感染のアザがあったもんね」
リン「ああ」
ミキ「ま、とにかくこうなって5年ちょいね。でも消えるわけでもないし」
女「遊園地で会ったミストの子はね、お母さんのクリアを倒したら消えたの」
ミキ「えっ、マジ」
リン「ああ。母親の死と何か連動があったと考えてる」
ミキ「…そっかあ」
ふむふむとミキが頷く。
ミキ「…噂、なんだけど。クリアは物理攻撃で死ぬじゃない?」
リン「ああ」
ミキ「ミストは、“生前の未練”を叶えてあげると消えるらしいの」
女「まんま、幽霊だよね」
リン「ああ」
ミキ「うーん、ネット情報も馬鹿にできないわね」
女「ミキさんは、何か未練ってある?」
ミキの動きが一瞬止まる。何かを考えるように、数回瞬きをした。
ミキ「色々心当たりありすぎて、一概には言えないわ」
リン「そうか。クリアの死に連動するんなら、女を使えばいいと思ったんだがな」
女「…リン、ミキさんを成仏させる気だったんだ」
ミキ「おっそろしいわね」
リン「したくないのか?」
ミキ「…考えたことなかったわ。でも、このままじゃいけないとは思うけど」
リン「…ミストに関して知っていることは、このくらいか」
ミキ「ええ」
リン「そうか」
リンがペンをかち、と一回ノックした。伏せていた睫毛を、上げる。
リン「一番肝心なことを聞きたい」
ミキ「…」
ミキの笑みが、消えた。
リン「ここに来た男のことだ」
ミキ「…」
リン「知ってること、全て話してくれ。俺には知る権利がある」
私は、とっくに冷めたティーカップを手のひらで包んだ。
空気が、変わった気がした。
ミキ「キノミヤ・リン」
ふいに、グロスで濡れた唇でミキが呟いた。
ミキ「そうでしょう」
リン「…何で、知っている」
ミキ「彼からあなたのことは大方聞いてる」
リン「やっぱり、…あいつだったんだな。話せ、今すぐ」
ミキ「無理よ」
リンの動きが、電源を落としたように止まった。

女(…え、どういうこと?何でミキさんは、リンの苗字を)
それに、さっきから“彼”だの、“あいつ”だの。
リン「ふざけるな!!」
ミキ「ふざけてないわ。約束なんだもの」
何を話しているの?私を置いて。リン、あいつって誰?
リン「何の約束だ!あいつが俺に何も話すなって、言ったのか!」
ミキ「ええ」
リン「そんなはずないだろ!!」
リン、どうしてそんなに怒ってるの。
女「…」
震えるリンの腕に触れようとする。
リン「…っ」
まるで邪魔な羽虫を落とすように、払われた。
リンの目は、目の前のミキしか見ていなかった。
リン「話せ!!」
ミキ「駄目。あなたには彼のことを何も話せない」
リン「生きてたんだろ、ここに来たんだろ、なあ!」
リンがついに、スツールを蹴ってミキの首元へ手を伸ばした。
女「リ、リン!!」
リン「離せっ!」
女「お、落ち着いてっ。どうしたのよっ」
リン「知ってるんだろ!聞いたんだろ!何で俺には教えられない!?」
ミキ「それが彼の望みだからよ」
リン「だから、…そんなわけ、」
ミキ「私も話さないほうがいいと思う。だから、言わない」
リン「…っ」
女「リン、やめて!!」
リンの固いお腹に腕を回し、必死に力を入れる。
荒い息をしていた。今まで見たリンの表情の中で、一番凶暴だった。
ミキ「落ち着きなさいよ」
リン「…くそ、っ」
ミキ「聞いたとおりの子だわ。大事なことの前では、すぐ理性を失う」
リンが、息を呑んだ。
やがて、彼の腕が力なく垂れた。
リン「…会いたいんだ」
私は、
リン「どうしても、会いたい。駄目なのか」
初めてリンの過去を思った。
ミキ「…話せない、わ」
私に一瞬だって触れさせなかった、彼の過去を。
頭の底が、冷たくなった。
女「…」
ミキ「はぁ」
リンはミキの言葉に呆然としたあと、店を出て行った。
私がいくら声をかけても、振り返らなかった。
頑なに、私の侵入を拒んでいた。
女「…あ、の」
ミキ「やっぱねえ。知らなかったのね、あんた」
女「え」
ミキ「さっきから訳わかんなかったでしょ?彼とかあいつとか」
女「う、うん。全然分かんない」
ミキ「教えてないんだ、…ふうん」
女「…」
ミキ「ヤなかんじよねえ」
女「あ、…。誰にでも、話したくないことは、あるから」
ミキ「でも、あいつは全くの素性を伏せたままあんたを旅に連れまわしてんのよ」
ミキさんがリンのひっくり返したカップを、そっと手に取った。
ミキ「…自分の望みを果たすだけの旅、に」
女「…」
リンは言っていた。
生き残りを探す旅、だと。
私は勿論それを信じたし、疑う余地なんかなかった。
でも、実際はこうなのだ。
「リン」は、「彼」を探している。
嘘、と言えるような、言えないような微妙な違い。
私には言わなかった、彼だけの秘め事なのだ。
女「…彼って、誰ですか」
ミキ「リンの知り合い。…それ以上はいえない」
女「…」
小さなしこりが胸にできたようだった。
何で?言えば良いじゃないか。こういう人を探してるんだって。
そうしたら私も協力した。でも、リンは一切の情報開示を拒んだ。
自分の目的を、自分の胸だけに秘めたのだ。
それって、さ。
女「…私に、言いにくいことなの、かな」
胸の中が凝り固まって、冷たいし、苦い。
ミキ「そうなんじゃない?」
女「…」
ミキ「あの子と会って、長いの?」
女「まだ、一週間くらいだけど」
短いからか。何年も旅をしていれば、彼は全てを語ってくれただろうか。
…そうは、思えなかった。どうしても。
女「…」
ミキ「悶々としてる?」
女「かなり」
ミキ「嘘つかれてたんだもんねー」
嘘、というには少し遠い。
話してすらくれなかったんだから。
女「その、彼ってリンにとって大事な人なのかな」
ミキ「あの剣幕と執着具合からして、そうね」
女「…」
リンに対してのモヤモヤは、勿論ある。
けど、
女「ぜ、是非…。教えてもらいたいんですけど」
ミキ「えぇー?女ちゃんまで?」
女「お願いしますっ。だって、リンがどうしても会いたい人なんでしょう?だったら」
ミキ「やだー健気ー」
女「リンに話しづらいんだったら、私にでもいいんで!お願いします」
ミキ「…うーん」
ミキが腕を組んでうむむ、と考え込んだ。
ミキ「いや、まあさ、ダチっていったって一緒にいたの2ヶ月もないのよねえ」
ミキ「そんな奴の約束を律儀に守るってのも、うーん」
女「お願いします」
ミキがほう、と息をついた。
ミキ「…じゃあ、私の言うこと聞いてくれる?」
女「え」
ミキ「お願いがあるの」
なあ、リン
この世界には俺ら以外いなくなったのかな
なあ、リン
俺にはさ、守るべきものがいっぱいあったんだよ
もう、何も無い
だから、リン
お前は後悔しないように生きてくれ
大事な物を、絶対に見失ったりしないでくれ
リン「…」
女「リン」
リン「ん」
女「そんなところにいたんだ」
リン「ああ」
リンは防波堤の上にぼんやりと腰掛けていた。遠く沈んでいく夕日のオレンジが、瞳に燃え移っている。
女「ミキさん、話してくれるかもしれないってさ」
リン「!」
たちまち、瞳の色が黒に戻る。
リン「本当か」
女「ただし、条件付らしいけど。…行く?」
リン「当たり前だ」
ミキ「来たわね坊や」
リン「条件って何だ。早く話せ」
ミキ「まあまあ落ち着いて。女ちゃん、お使いありがと。二人とも座って」
私達はうながされるまま、ミキさんに向かい合って座る。
ミキ「色々考えたんだけど、結局私ってダメなのよねー」
ミキ「友人との約束より、私欲に走っちゃうの。ごめんね」
リン「好都合だ」
ミキ「…個人としては、リンに何も伝えないほうがいいとは思ってる」
リン「前置きは言い。早く」
ミキ「ええと、私には彼から貰った資料があって、その上彼の行き先を知っている」
リン「…」
ミキ「取引よ。彼の行き先と資料、全てあんたに引き渡す。その代り」
女「うん」
ミキ「…私に、歌わせてほしいの」
はあ、とリンが隣で鋭い声を出した。
リン「勝手に歌えよ」
ミキ「せっかち!色々事情があんのよ」
ミキ「私がミストになったとき、生前は出せなかった声が元に戻ってた」
リン「ああ」
ミキ「でもね、どうしても歌だけは歌えないの」
女「どういうこと?」
ミキ「見てて。……」
彼の喉から、たっぷりの空気に若干の雑音を含んだ透明な息が漏れた。
ミキ「今、歌おうとしているの。でも、声が出ない」
リン「嘘つけ」
ミキ「マジよ!!喉が塞がったみたいになるんだもんっ」
リン「知るか。俺たちは医者じゃないし、歌手でもない。お前のスランプは治せない」
ミキ「心当たりがあんのよ。あのね、このステージを綺麗にして、私の衣装も手直しして」
ミキ「生きてた頃みたいに、夜にステージができたら…。聞いてくれる人がいたら…。多分、歌えるの」
女「そうなの?」
ミキ「勘だけど」
リン「ふざけるな」
ミキ「ああーら?ふざけてなんかないわよ?ま、いいけど。やんないんなら」
リン「やる」
ミキ「でしょうね」
リン「じゃあ、さっさとステージを掃除して服を着替えろ。そして歌え。そして情報を渡せ」
ミキ「あのねえ!」
ミキ「あんたらがやんのよ!当たり前でしょ」
女「リン、下手に出ないとやっていけないよ」
リン「…」
ミキ「そうそう、女ちゃんの言うとおりよ。あんたには謙虚さが足りない」
リン「…分かった。でも急ぐ。手伝ってくれるな、女」
女「うん」
リン「とにかく、前のようにすればいいんだろ。やってみる」
ミキ「よし、契約成立ね」
ミキが出した手を、リンは握らなかった。代わりに私が握った。
ミキ「ま、とにかく今日は遅いからゆっくり休みなさいよ」
女「そうだね、リンも運転で疲れたでしょ?」
リン「別に」
ミキ「そこは素直に休みなさいよ!ガキらしくないわねえ」
リン「黙れ」
ミキ「…ねえ女ちゃん、こいつと旅するの苦痛じゃない?」
女「え?ううん」
ミキ「…どえむね」
女「?」
店の奥に、従業員の使っていた休憩所があった。
布団と必要なものを運ぶと、ちょっと居心地のいいホテルみたいになる。
女「すごいねー。スタッフルームにも凝ってるなんて」
リン「ん」
女「…」
ランプの光がリンの顔に陰を作る。リンは、手帳に目を落としていた。
女「リン」
リン「何」
女「…誰を探してるの」
リンが顔を上げた。簪を取った彼の髪が、頬にまばらにかかっている。
リン「知り合いだ」
女「…名前は?その人とどういう関係だったの?」
リン「…」
リンが髪を耳にかけ、私をじっと見る。
リン「言う必要がない」
彼の言葉は静かだった。でも、今までで一番厳しい響きがあった。
女「必要がない、って。…何で?」
リン「今まで黙っていたことは、謝る。けど、お前に言う必要は無い」
女「だから、何で」
リン「関係ないからだ」
カンケイナイカラダ。
女「…」
私は、
女「…そ、っか」
へらりと笑った。
女「ま、色々あるもんねー」
リン「ああ」
女「でも、その人に会いたいんでしょ?…会えると、いいね」
リン「そうだな」
女「私も、…手伝えることあったら、言ってね?」
リン「いや。迷惑がかかるから、お前はそのままでいい」
女「…」
メイワクガカカル。
女「…」
「ふたりともーっ、ご飯できたわよーっ」
リン「だってさ。行くか」
リンは何でもないように立ち上がった。その目の静かさから、私は
女(あー)
女(本気で、言ってるんだな)
絶対に、絶対に
女「…うん。行こう」
リンの本音には触れさせれもらえないのだ、と理解した。
ちょっと落ちます!
二人の関係性にヒビが入ってきたね
最後にリンがクリアになって女ちゃんが記憶を見る展開とかだったら泣ける
生きてくれえ
なんで女だけ名前がないんだ?
リン「なんだこれ」
レストランの一番大きなテーブルに広げられた光景を見て、リンが言葉を漏らした。
…私も概ね、この言葉と同じことを考えていた。
ミキ「何って、ウェルカムディナーよ!どお?」
白いテーブルに所狭しと並べられた、大量の料理。そして、ドリンク。
女「うわ、美味しそうーー!」
すっごくいい匂いだし、盛り付けも完璧だ。
女「これ全部、ミキが作ったの!?」
ミキ「もち」
女「すっごい!!めちゃくちゃ美味しそう!」
丸々一匹のチキンに、大鍋に入ったシーフードのスープ、それから香ばしい匂いのするパン…
リン「待て」
今にも飛び掛らんとする私を、リンの固い腕が制した。
リン「怪しいな。何でこんな新鮮な食材が手に入る」
ミキ「あら、その気になれば釣りでも素潜りでも、魚は手に入るわ」
リン「この鶏は」
ミキ「私がもともと飼ってたやつがね、野生化して裏の山にいっぱいいんのよ。それシメた」
リン「牛乳もあるな。5年前のを使ったのか?」
ミキ「農家の牛が野生化して…以下略よ」
リン「女っ、まだ食べていいとは言ってないだろ!」
女「あだっ」
リンが、ベリーのジャムを掬い取って舐めようとしていた私の腕をはたく。
リン「本当に安全なのか?」
ミキ「信じてよお。私これでも、ちゃんと調理師免許もあるんだから。国家資格よ?」
リンがまるで毒を慎重に審査するように、料理に鼻を近づけた。
女「リン、大丈夫だよー。いい匂いだし、早く食べよう」
リン「お前は警戒心がなさすぎるんだよ」
女「ミキさんにも失礼だよ!もういいから、食べようってば」
リン「…」
リンはやっと安全を確認し終えたのか、席についた。
ミキ「さてさて、今晩はご来店いただきありがとうございます」
嬉しそうに上気した頬で、ミキが微笑んだ。
ミキ「では乾杯しましょう!オレンジジュースでよかったわよね?」
多分自分の手で絞ったのであろう果汁を、丁寧にグラスに注いでくれた。
ミキ「んじゃ、かんぱーい!」
女「かんぱーい!」
かちゃん、と3つのグラスがシャンデリアの光の下でぶつかり合った。
憮然とした表情のリン、子どものようにわくわくとした顔をするミキ。
その対比が面白くて、私はくすっと笑った。
ミキ「さ、食べて食べて。いっぱいあるんだからねっ」
女「はーい!」
リン「どうも」
ミキはせっせと料理をとりわけてくれる。
お母さんみたいだな、と思った瞬間、胸が温かくなった気がした。
ミキ「いやー、久々に接客できると思うと胸が躍るわね」
女「ミキは食べないの?」
ミキ「あ、いらないのよー。飲食は必要ないの」
リン「だろうな」
ミキがついでくれたスープを一口飲む。
女「…」
私は目を見開いた。
舌の上に、長らく忘れていた感動が甦る。
女「…うまっ」
リン「美味しいな」
あのリンも、スプーンを握ったまま素直に頷いた。
ミキ「あらぁ?そう?よく言われるわ」
女「え、すごい!めっちゃ美味しい!プロみたい!!」
ミキ「プロじゃ!!」
私は夢中で手を動かし、ご馳走を摂取していった。
今まで食べていた冷凍食品とか、缶詰とか、そんなものに慣れてしまった舌にとって
ミキの料理は麻薬に近かった。もう、ダメだ。私は二度と保存食品を食べられないかも。
男娼とかエルフ書いてた人かな?別の人ならごめん
>>379 男娼と食人鬼の話書いてた奴です!よく気づいたね
女「し、幸せ…」
震えが出るほど、感動した。
ミキ「女ちゃん、本当に美味しそうに食べるわねー。嬉しい」
リン「単純だからな。子どもっぽいし」
女「そういうリンだって、いつもより食べるスピード速いよ」
リン「普通だ」
ミキ「…」
ミキは頬杖をつき、宝石でも見るみたいに私達を眺めていた。
ふと、目が合った。
ミキ「…いっぱい食べてね」
ミキの微笑みは、美しかった。
女「…うんっ」
私は、自分の頬が少し熱くなるのを感じた。
ん?何でだ?よく分からない、けど。
リン「…」
女「おいしいねー、リン」
リン「ああ」
結局、私は何回も何回もおかわりを繰り返した。
おかわりを要求するたび、ミキが嬉しそうにぎゅっと目を細めて笑う。
リンも、いつもよりたくさん食べていた。
食べ過ぎると体が動きづらくなるから、程ほどにしておけーって言っていたくせに。
女「…はぁ、もう無理」
リン「俺も、ごちそうさま」
お腹が破裂しそうだ。確かに、これじゃあクリアが来ても動けないかも。
苦しいけど、幸せな苦しさだった。
ミキ「いやあ、本当にいっぱい食べたわね。成長期ねー」
リン「どっちも二次性長期は過ぎてる」
ミキ「あら、そうなの?あんたら何歳なの」
リン「俺は16、こいつは18」
ミキ「えええええええええっ!?お、女ちゃんが年上だったのぉ!?」
女「うん」
ミキ「いや、全然見えない…。確かに背は若干女ちゃんのほうが高いけど」
女「ど、どういう意味」
リン「ガキっぽいもんな、お前」
女「リンこそ!…」
リンのガキっぽいところ、を探そうとしたけど、…そんなもの無かった。
女「もう、いい」
ふてくされる私の顔を見て、ミキがのけぞって笑っていた。
女「はー…。楽しかった」
ぼふん、と布団に沈み込む。
ご飯を食べた後は、ミキと一緒にトランプをして遊んだ。
…ババ抜きだったんだけど、私は恐ろしく弱いことが判明した。
リンは真顔でジョーカーへと誘導してくるので、ミキすら勝てていなかった。
リン「つかれた」
リンが横で、シンプルな感想を口にする。
女「私のほうが疲れたもん…。最下位はバツゲームで乾燥唐辛子食べさせられたし」
リン「傑作だったな」
女「まだ舌びりびりするもん」
口を尖らせていると、ドアがノックされた。
ミキ「やっほー。どう、ここ寒くない?」
女「ううん、大丈夫だよー」
ミキ「…おい、待てぃ」
ミキの表情が、布団にあぐらをかく私とリンを見たたまま固まった。
ミキ「…あんたら、二人で寝るの?」
女「え?」
ミキ「どうなのよ、それ」
た し か に 。
麻痺していたのか何なのか、私はリンの隣で眠ることが普通になっていた。
いや、だってリンだし。リンなんてもう、ほら。何も無いでしょ。あるわけないでしょ。
リン「諸事情により、寝るスペースは今まで一緒だった」
ミキ「成る程…」
リン「変な勘ぐりを入れるな。俺はこいつに何もされていない」
女「何で私が“する”側なのよ!逆でしょ!?」
リン「うるさいな…。何か問題でもあるのか、これ。いいだろ」
ミキ「いやいやいやいや、女ちゃん的にどうなのよ!?」
女「え?…あー、ど、どうだろう。今までなんとも思ってなかった」
ミキ「16歳だよ!?16歳の異性とすぐ隣で寝るんだよ?」
女「う、嘘。最初はちょっといいのかなあって思った。けど、リンだし」
リン「ああ、何も起きるはずないだろ」
断言されるのも何だか悲しい気がするけど。
ミキ「はー…。ま、リンならまぁ…」
ミキはやっと納得がいったのか、ふむふむと頷きながらドアを閉めようとした。
ミキ「んじゃ、まあおやすみなさい。でも女ちゃん、気をつけなさいよ。男なんて皆」
ぼふっ。
ミキ「ぎゃっ!?」
リン「消えろ」
リンが枕を投げつけた姿勢のまま鋭く言い放った。
ミキ「ったーい…。乱暴者!!ばぁああか」
ミキは子どものように舌を出すと、荒々しくドアを閉めた。
リン「ったく」
リンは枕を拾い上げ、さっさと自分の領地に戻っていく。
女は言われるまでリンと一緒に寝る事について何も思って無かったのか…
女「…」
リン「うるさい男だなあ、あいつ」
女「い、いや。男っていうか」
リン「さっさと寝るぞ。明かり消していいか」
女「え、あ、」
私は布団の上に座ったまま、固まる。
よく見たら、リンが近い。腕を伸ばせばすぐに体が触れ合うし。
それに、あれだ。リンの力ならどんなに離れていたって、簡単に…
リン「おい」
女「ひゃっ」
リンが長い髪と顔をかたむけながら、私の顔を覗き込んでいた。
リン「どうかしたか」
女「あ、ううん。何でも、何でもない」
リン「ふうん」
リンの髪がさらさらと音を立てる。
パジャマ代わりにしている若干だぼついたYシャツから覗く、雪みたいな首筋とか、鎖骨とか。
とか。
女「…」
私は、大丈夫だろうか。 寝ているとき、何か変なことになっていないだろうか。
リン「何見てんだ」
女「み、見てないよ」
リン「…」
リンが背を向けて、布団にもぐりこむ。女性的な繊細さをもつうなじが、見えた。
何を考えているんだ、私は。今まで何とも思ってなかったじゃないか。リンだぞ、リン。
あの堅物が何かモーションをかけてくるわけないじゃないか、自意識過剰だ。
それに私なんか全然可愛くないし女っぽくないし体つきだってちんちくりんだしそれからそれから
リン「なあ」
女「はいっ!?」
リンがもぞ、と体の向きを変えてこちらを見る。
切れ長の目が、こちらを流し見るみたいに細められた。
リン「気にしてるのか」
女「な、にを」
リン「ミキの話」
女「え、…」
リン「でも、しょうがないだろ?車の中じゃスペースもないし」
女「き、気にしてないよ?」
リン「ふうん。俺もそうだ。気にしたこと無い」
女「う、うん。だろうね」
リン「でもそれは、俺がこういう性格で、男だからだ。異性の気持ちなんか分からん」
リンの目線が、痛い。私は自分の膝を凝視することに決めた。
ああ、そういえば私は何でショートパンツなんか履いてるんだろう。いくらなんでも、女性として…。
リン「…」
ふっ、とすぐ横で空気の漏れる音がした。
笑ったのだ、リンが。
いつもとは雰囲気の違う、なんだか、その、とにかく違う空気を纏った微笑で、私を試してるみたいに。
心臓の音が、耳元で暴れまわる。
リン「…寝ろ」
リンは、電気を消した。
…翌日、ミキの元気な声で起こされた。
目が充血してるわよ、それにクマがある!…とミキに指摘された。
女「…」
顔を洗って鏡を見ると、確かに。
そこには寝不足の私の顔があった。
女(…何だったんだ、あの笑い…)
ミキ「おーんなっ」
女「うわっ!?」
ミキ「ね、朝ごはんに使う卵をとりたいから手伝ってくれない?」
女「う、うん!勿論」
…。
私は鏡の前で、一発頬を叩いた。
女(くだらない考えはよそう。ただでさえリンに鬱陶しがられるんだから)
はい、ナシ。昨日の全部ナシ。忘れよう。
店の外でミキが呼んでいる。リンが傍らで、だるそうに欠伸している。
…あくび?
リン「遅い」
リンのとろんとした目が、眠そうに何度か瞬いた。
女「…」
私は何も見ていない。
一旦切ります
食人鬼の人かな?
>>390
イエス
>>391
特徴出るもんだねやっぱ
今回も期待
ミキ「よし、ゲットー」
鶏の巣から、ミキが卵を取る。
産みたての卵がつやつやと朝日を受けて輝いていた。
ミキ「はい、カゴに入れるわね。割らないでよ」
リン「はいはい」
女「…んしょ」ガサ
私はというと、精一杯の背伸びをして栗をもごうとしていた。
落ちたのを拾おうと思ったのだが、虫食いだらけですでに使えなかった。
ミキがモンブランをおやつに作ってくれると言ったのだ。手にイガが刺さろうが、取るしかない。
女「ぐぬ…」
しかし、高い。全然届かない。
太い枝に脚をかけ、精一杯腕を伸ばす。ちりちりと筋が痛み、攣りそうだ。
女「…っ」
リン「何してる」
リンが少し下で、呆れたように声を出した。
女「な、何って。栗を」
リン「下の拾えよ。こういう実のほうが食べごろなんだぞ」
女「…虫に食べられてたり、動物が中身持って行ってるんだ」
リン「ふうん」
リンが目を細めて私を見上げる。と。
女「うわ!!?」
腰に、いきなり温かな違和感を感じた。体が震え、少しバランスを崩す。
女「な、に!」
リン「いや、支えてやろうかと思って」
リンが真顔で返した。腰を見ると、リンの腕が私の腰に添えられていた。
女「い、いい。自分でできる」
リン「できてないだろ」
女「手、離してよ。大丈夫だから」
リン「ふうん」
リンの手が、するりと私の体の上を滑って下ろされた。
顔が、熱い。
リンに腕をつかまれたり、抱えられたり、色々今まで接触はあったはずなのに
今は、なんだか、…どうしてもダメだ。
女「…っ」
伸ばした手に、固い棘が刺さった。
気にせず何個か取り、急いで下に下りる。
女「…カゴに入れていい?」
リン「ん」
ぼとぼと、とリンの持つかごに栗を落とすと、
リン「…手、大丈夫か」
リンの細い指が、私の手を絡め取った。
女「…っ」
思わず、力をこめて引き抜く。
リンはきょとんとした顔でこちらを見た。
女「あ、大丈夫、だから」
リン「そう」
女「…」
目玉焼きとベーコンをトーストに乗せた朝食を済ませた後、ミキがおもむろに口を開いた。

ミキ「さて、ちびっこたち」
リン「その呼び方をするな。二度と」
ミキ「んもう、固いわねー。あのね、早速私のステージの準備をしてほしいのっ」
女「うん」
ミキ「ええと、まず女ちゃんは私の衣装の手直しをして欲しいの」
女「私、お裁縫得意だよ!」
ミキ「良かった。リン、はねー」
ミキが赤い爪をリンに向ける。
リン「…何だ」
ミキ「特別なお願いがあるの。あんた、強い?」
リン「体力に自信はある」
ミキ「だと思った。身のこなしが普通じゃないもん。…それを見込んで、なんだけど」
ミキがリンの耳に口を寄せ、何かこしょこしょと言った。
リンの眉がひそめられる。
リン「何で?」
ミキ「んふ、どうしても」
リン「…必要なことなら、やるが」
ミキ「お願い。よろしくね」
ミキの言葉に、憮然とした表情のままリンが立ち上がった。
リン「ったく、…面倒な」
ミキ「大変だと思うけど、よろしくねー」
リン「ああ」
リンはそのまま、店から出た。
女「…何?リンはなにするの」
ミキ「ないしょ」
女「えー…」
ミキ「まあ、大丈夫よ!心配しないで。女ちゃんはさっさと衣装の手直しをしてよね」
女「うん」
私は余韻を残すように揺れる玄関のベルから、やっと目を離す。
ミキ「それに、リンと離れたほうがいいでしょ?」
ミキが耳元で、小さく囁いた。思わず、身を引く。
女「な、んで」
ミキ「えー。倦怠期っぽかったから」
女「なにそれ!…カップルじゃないんだから」
ミキ「ふふーん」
ミキがふわふわと私の周りを旋回し、勘ぐるような目線を向けてきた。
女「も、もう。やめて」
再開だーーー
追い付いた
クッソ面白いな
女顔で黒ロングでキリ子が浮かんだ
この人のお話は良くも悪くも女性作者だなぁという感じ
>>409
女性でないと出てこない着眼点でハッとさせられる
面白い
この恋愛描写がライラの冒険終盤を思い起こさせる
ミキ「さ、着いてきて」
ミキが私の前を泳いでいく。彼の履くヒールの繊細さに思わず見入る。
私はミキに続いて、スタッフルームの奥まで歩いていった。
ミキ「えっと、ここなんだけど」
女「うん」
白いドアの前で止まったミキは、ふとこちらを振り返った。
女「…?どうかした?」
ミキ「ええ、と。その…。私ね、ここに入れないの」
女「は、い?」
ミキ「見て」
ミキが青い血管の浮いた手を伸ばし、ドアノブに触れた。
いや、…触れてはいない。彼の手は金のノブをすっと通り過ぎた。
女「ええっ!?」
ミキ「このドアだけ、触れないのよー。死んでから一回も入ってない」
女「そんな、急に幽霊的な設定を…」
ミキ「何だかね、こう、この部屋の前では居心地も悪くて」
そういいながら、睫毛を伏せる。少し長い手入れされた爪を、いじっている。
女「…そっか、分かった。じゃあ私一人で行くね」
私はミキの肩にそっと触れたあと、ドアノブに手をかけた。
ミキ「あのね。ここ、私のパウダールームなんだけど。…白いカーテンがかかってる奥に、トルソーがあって」
女「うん」
ミキ「そこに衣装が、かかってるから…。えっと、できれば化粧品も持ってきて」
女「分かった」
ミキ「それと、…」
ミキの少し茶色がかった目が、じっと私を見つめた。
女「…なに?」
ミキ「あのね、…びっくりしないでね」
それだけ言うと、ミキはそっとドアの前から退いた。
女「…?」
私は冷たいノブに手をかける。ぎい、と少し錆びた音がして、ドアが開いた。
中は、しんと冷えていた。
ミキが入れないせいか、中は結構ほこりっぽい。
けれど、可愛らしいドレッサーやたくさんのハンガーにかけられた服を見て、ちょっと心が和んだ。
女「お洒落さんなんだな、ミキ…」
結構きわどい衣装もあって、声を出して笑う。リンに見せたら眉間にシワを寄せそうだ。
女「えーと、…白いカーテンの奥、と」
きしきしと音を立てる床を踏みしめ、歩く。
女「あ、これか」
私はカーテンで仕切ってあるスペースの前で立ち止まった。
ミキはきっとここで着替えていたのだろう。
女「よ、っと」
滑らかなカーテンに手をかけ、
しゃっ。と、開く。
女「…え、」
私は、その姿勢のまま固まった。
女「ミ、キ…?」
そう。
ミキだ。
黒いトルソーにかけられた、マーメイドラインの衣装。
その裾を握って、倒れているあの人影は。
女「…」
ぴくりとも動かず、眠るように目を閉じた、ミキだった。
一歩、後退する。
触れたら、「なに?」といって目をこすりながら起きそうな、
でも、呼吸をしていない、彼。
女「ミ、…キ」
口の中が乾き、鼻の奥がつんとした。
女「…」
でも、ぐっと我慢した。
ミキはこれを忠告してくれたのだな。
女「…ここで、死んだの?」
そっと語りかけると、私の息でドレスが揺れた。
美しい服だった。うっすらと青く透けた生地、全体にかかったラメと、パール。
女「…最後に、これを着たかったのかな」
答えは、ない。
女「借りるね、ミキ」
私は彼の耳にそっとささやくと、服を丁寧にトルソーから外した。
握られた裾も、そっと引き剥がす。
ミキの手は、その形のまま硬直していた。
女「…」
鼻の奥が、つんとした。
女「…取ってきたよ」
ミキ「ありがと」
ミキは廊下に背を預け、うっすらと微笑んで私を迎えた。
ミキ「ごめん。…嫌な物見せちゃって」
女「ううん」
嫌ではなかった。ミキは綺麗だったし、ただ、ただ。
ミキ「私ね、最後の最後にどうしてもあの服を着たかったの。お気に入りだったから」
ミキがあはは、と空笑いしながら頬をかく。
ミキ「…でも、裾に手をかけて引っ張ったとき、限界が来ちゃったんだ」
女「…」
目の前の、天女が着るような淡い美しい衣。
ミキが最後にどうしても欲した、たからもの。
ミキ「だからさ、ほら。引っ張ったからほつれちゃってるでしょ?ここの飾りも取れそうだし」
女「…そだね」
ミキ「女」
女「…」
ミキがふわりと空を滑って、私の目の前に立つ。
ミキ「泣いてるの?」
女「泣いて、ないよ」
私は奥歯をかみ締めて、声が震えないよう精一杯力を入れた。
ミキ「…」
女「泣かないよ、ミキ」
ミキ「…女は優しいのね」
ふわり、とした温かさが頭に注がれた。気づけば、私はミキの胸に抱き寄せられていた。
ミキ「…良い子ねえ、あんた。本当。ありがとう」
女「…」
ミキの手は、透けていて重さも拍動もない。
けど、確かに微かな温かさがあった。
ミキ「よしよし。大丈夫、私はここにいるから。あんなの、ただの抜け殻よ」
女「ミ、キ」
ミキ「んー?」
女「ごめん、ね」
ミキ「え、何を謝ることがあんのよー」
女「だって、だって」
ミキの人生最後のお願いを叶えてあげられてたら、どんなに良かったか。
ミキ「ありがと、女」
ミキの手が、何度も何度も私の髪の上を滑る。
その優しさに、私は、少しだけ顔の力を緩めた。
涙が一粒、頬を転がり落ちた。
「…なにやってる」
ミキ「うおっ」
女「わ、っ!?」
前方から、ぶすっとして機嫌の悪い声が飛んできた。
リン「ふーん。…」
リンは顎を上げて目を細め、抱き合う私達を見た。
ミキ「なによお、もう帰ってきたの?」
リン「バイ・セクシャルって便利なものだな。女性もさぞ油断するだろう」
女「あのう、何を言ってるのリン」
ミキ「やあだ誤解よー。女ちゃんがベソかいてたから慰めてあげた、だ、け」
そう言うと、ミキは一層私をきつく抱きしめた。平たい胸に頬がつく。
リン「…」
リンは一層眉間にシワを寄せた。
女「ちょ、ちょっとミキ。もういいってば」
リン「だそうだ」
ミキ「はーい。恥ずかしがらなくていいのに」
女「そ、そういうことじゃなくて」
私は静かに解かれたミキの逞しい腕を、少し名残惜しい気持ちで眺める。
女「…」
横から、じっとりと絡む視線を感じた。
女「…な、何?」
リン「別に」
リンが髪を揺らしてそっぽを向く。完全に何か誤解をしている。
女「あの、本当に慰めてもらっただけだから」
リン「はいはい」
若干のわだかまりを残したまま、私達はダイニングに移動した。
大きなテーブルに衣装を広げる。
女「あ、本当だ。ここの飾り取れかけてるし、…縫い直さなきゃね」
ミキ「できそう?」
女「余裕よ」
リン「本当にお前がこれを着てたのか?」
ミキ「そうよ!頭にはリボンつけてねー、あと奮発して買ったブラックパールのネックレスもつけてた」

リン「あっそ」
リンは冷たく言い放つと、私に向き直った。
リン「どれくらいでできる?」
女「えーと、半日あれば綺麗にできるよ」
リン「そうか。…ミキ、俺はもう少しかかりそうだ。明日には終わる」
ミキ「あら、そう」
ミキは目を細めて頷いた。
女「…」
リン、何をしてたんだろ。
ミキ「んじゃ、あとは任せるわね。私、おやつの仕込みしてくる」
らららー、と鼻歌混じりにミキはキッチンに消えていった。
女「ねえ、リン」
リン「ん」
女「…ちょっと、外で話さない?」
リンの指がぴくりと動く。 少しの間を置いて、彼は小さく頷いた。
二人で階段に腰かけ、砕けては散り、砕けては散りを繰り返す波を見つめる。
女「…ミキの、体があった」
死体という表現は使えなかった。
リン「そうか」
リンの返答は静かだった。目には、海が映っている。
女「…やっぱ、綺麗だった」
リン「不思議だな」
女「試着室の中に倒れてたの。最後にあのドレス、着たかったって」
リン「その前に力尽きたのか」
女「うん」
リン「そう」
ざざ、ん。と二人の間に海の音が響く。
リン「だから泣いてたんだ」
女「…うん」
リン「お前らしいな」
ふっと片頬でリンは笑った。
女「リンなら、泣かないの?」
リン「ああ」
力強い肯定だった。 予想通りの答えだ。
リン「無く意味が無い。所詮あまり関わりの無い人物だからな」
女「冷たいよ」
リン「お前が感受性豊かなだけだな。いかにも女性ってかんじだけど」
女「…やっぱ、冷たい」
リン「そうか?」
ふと、気になった。
私が死んだら、彼は泣くのだろうか。
女「…」
いや、考えても無駄だ。私は死なないし、…多分。リンは、…。
女「ねえ、リンはどこに行ってたの」
リン「そこらへん」
女「…何で教えてくれないのよ」
リン「なんかあのオカマが話すなって言うんだよ。ってか、俺もよく理解はしてない」
女「オカマ、って。…ねえ、リン。お願い」
リン「…近くの、小さい駅まで行ってた」
女「駅?」
リン「探し物があるんだとよ」
女「…ふうん?」
リン「まあ、そんなとこだ」
女「…あのさ、リン」
私は、この流れでなら聞ける気がした。
「リンの探す人」のことを。 ずっと、知りたかったことを。
女「リンはさ、誰を…」
口を開いた瞬間だった。
私の手に、温かく脈打つものが重ねられた。
女「…、」
目で追うと、リンの白い手が階段の縁を掴む私の手に、重ねられていた。
リン「手が冷たい」
苦情のように、リンが呟く。
女「…な、」
私は急いで手を引き、逃げようとする。
しかしリンはそれほど力を入れている風でもないのに、私の手を逃がさなかった。
リン「急にどうしたんだ」
首を傾けて、私の顔を覗き込む。
女「リ、リンこそ!何で急にこんな」
リン「そうじゃない。何で俺に色々聞きたがる。それに」
それに、と呟く彼の息が顔にかかった。
リンの顔がかなり近くにあることを、初めて理解した。
リン「…避けてる?」
女「そ、そんなことない!!!」
リン「ふうん」
リンの手に力が篭る。私の手首が、ざあざあと音を立てた。
…血が激しく体中を駆け回る。
リン「やっぱり、様子がおかしい」
女「おかしくないよ」
リン「いや、おかしい」
女「リ、…リンこそ、おかしくない?」
リン「はあ?」
女「こ、こんなベタベタ触ったりしなかったし、私に馴れ馴れしくしなかったじゃん」
リン「…」
くす、とリンが笑った。目元が細まり、優しげな色を帯びる。
リン「そりゃ、慣れるだろ。一週間近く一緒にいれば」
女「…」
リン「お前は逆に俺から距離を取りたがってるな」
女「だから、そんなこと」
…否定が弱々しく、掻き消える。
リン「俺が男だから?」
リンの声が少し低くなった。口元は笑ったままだが、目が伏せられている。
女「違う、…そ、そうじゃなくって」
リン「…」
ふいにリンの指が動いた。私の肌の上を這い、爪にたどり着く。
女「あ、あの?」
リン「…」
リンの指先が、そっと私の爪の上を滑る。
リン「避けないで」
小さな声で、彼は言った。
私は手のひらに汗が滲むのを感じた。
リンが顔を上げて、私の目を見つめた。
吸い込まれそうな目だな、と思った。
真っ黒で、真っ暗で、真っ直ぐだ。
女「…避けて、ないってば」
リン「またそう言う」
子どもをとがめる父親のような声音で、私に言ってくる。
女「…」
リンこそ、と言いたかった。
私に自分のことを話すの、避けてるじゃないか。
リン「避けないで欲しい」
また、リンが言った。
断ったらそのまま海に呑まれて消えてしまいそうな、そんなお願いだと思った。
女「…ええと」
私は、結局自分の思いをかき消す。
女「うん、…確かに、避けてるというか。ミキの指摘で若干意識しちゃってた、かも」
リン「だと思った。何度も言ってるだろ、俺はお前をそういう目で見るわけないって」
女「だよねー」
リン「馬鹿だな、お前」
女「じゃあ、その。やめる。ギスギスさせてごめん」
リン「良い、別に。発端はあのゲイだし。後で苦情入れとく」
女「それもどうかと…」
幾分かスッキリした顔で、リンが立ち上がった。
リン「帰るか。何か食わせてもらおう」
女「…うん」
私はリンに手を引かれるまま、立ち上がった。
今日はここまでです。
また期間開くかもだけど、気長に待ってね
乙
リンの死亡フラグがビンビンで怖いぜ
乙
リンが追ってる男ってのは誰なんだろう
以前親しい人に見捨てられたとも取れる発言をしていたから
クリアの群れの中、一人リンを置いて逃げた父親とかだったりするのかなー
とか飛躍した妄想を繰り広げてみる
今日も乙でした!
待ってるよー
ちょっと遅れたけど乙です!更新首を長くして待ってます!
男娼気になる
何処かで見れん?
>>403
サンクス
読んでくるわ
結構長編なんやね
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【2】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【3】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【4】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【5】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【6】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【7】
女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」【8】
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元スレ 女「ハローハロー。誰かいませんか?どうぞ」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1441511235/
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コメント一覧 (19)
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- 2015/09/29 07:54
- うーんそろそろ完結してくれよなあ〜頼むよ〜(ステハゲ)
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- 2015/09/29 08:38
- おい
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- 2015/09/29 10:20
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(嫌なら読まなくても)ええんやで
ガイジかな?
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- 2015/09/29 11:23
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ここまで待って読んだのに、完結してないなんて!
ひどい
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- 2015/09/29 11:52
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嫌なら読むなや。
楽しみにしてる奴も居るんだから。
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- 2015/09/29 17:39
- 完結してから載せてくれればいいものを
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- 2015/09/29 18:45
- サンダース「チェックメイトキング2、こちらホワイトロックどうぞ」
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- 2015/09/29 22:04
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久しぶりに、とても面白い読み物で、嬉しい
綺麗できちんとした文章に安心します
作者さんもまとめさんもありがとう
続きを心から楽しみにしています。
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- 2015/09/30 07:28
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早く続きが読みたい‼
作者さん早くーっ
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- 2015/09/30 14:34
- はよ書いてくれや…
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- 2015/09/30 16:22
- 続きはよ
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- 2015/09/30 22:06
- 続き待ってるぞー
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- 2015/10/01 13:26
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とても面白いです。
続き待ってます。
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- 2015/10/01 21:42
- まだ?
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- 2015/10/02 22:37
- はやくー
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- 2015/10/06 06:17
- 続きはまだですか?
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- 2015/10/09 07:27
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まだ7こないね(´д` ;
楽しみにしてるんで!作者さんも管理人さんもよろしくです!
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- 2015/11/14 21:06
- 神
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オススメ








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まさかここのアホが長ったらしく書いておいて自分で載せてるんかキッショ