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俺、今プロのデザイナーとして絵を描く仕事をしてるんだ。特に絵を描くことが好きだった訳でもない俺が、絵で食っていく事を決めた高校時代の思い出話を思い出したから良ければ聞いて欲しい。10年近く昔の話だから、想像も混ぜて思い出しながら書くよ。
文章書くのそこまで得意じゃないから見にくかったらごめん。
数人に聞いてもらうだけでいいから、たまにレスしてくれると嬉しいな。
みてるよ
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俺は高校時代、美術部だった。
絵を描くことが好きなわけではなかったが
美術部くらいしか入る部活がなかったため仕方なく。
俺の高校では夏休みに毎年部活ごとの合宿がある。行先は部活ごとに様々だ。
美術部では地元を離れて東北の方へ
毎年行くことになっている。
合宿は民宿を10日間貸し切り、その土地の自然を生かした絵を描くといった趣旨のイベントだった。
うちの美術部の顧問 (以下 中嶋先生)
は、有名美大を卒業し、色んな賞も取っているような結構有名な先生。
そんな中嶋先生を求め、絵が好きな奴らが集まる…。と言った訳ではなく、大半が運動音痴のもやしっ子。文化部が少ないうちの高校では、運動が苦手な奴らは必然的に美術部に入ってくる。
それでも中嶋先生の指導で絵が好きになるやつは多いが、俺らの代ではそんなやつは少なかった。
特に俺含む男子部員は部活時間には絵はあまり書かず、雑談して下校時刻には帰るようなサボり部員だった。
勿論そんな俺らは10日間の合宿なんて遊ぶためにあると思っていた。特に行きのバスの中ではトランプやカラオケなどで大はしゃぎ。
皆テンション爆アゲといった感じ。
それにどこからか聞こえてくるギターの音や風鈴の音が混ざってまさにカオス。(そんな俺らにも指導する時は真面目に、遊ぶ時は無邪気に混ざってくれた中嶋先生はガチでいい先生だったと思う。)
出入りするからぼちぼち覗きにくるわ
肝心な合宿での活動内容は、
指定された範囲内で各班に分かれ、風景画などを描くというもの。といっても、サボる以外することの無い男子たちは、女子たちには黙っててもらいそこら辺でぶらぶらと暇つぶしするような感じだったが。
俺と同じ班の男子、(以下 樋口)は
クラスでは俺と真逆の大人しいタイプ。
(大人しいと言っても、クラスでは静かなだけで部活になると大はしゃぎして俺らと話すような奴だが)
そんなギャップが萌えると美術部の女子たちにはマスコットキャラ的な存在として可愛がられてたのは懐かしいな。それで、俺と樋口は勿論サボるわけで、バスの中ではサボり計画を立てて楽しんでいた。
バスを3時間程走らせて民宿に到着。
民宿は渡り廊下を挟み2階建ての建物が2棟ある。近くに綺麗な川が流れたりしていて、自然に囲まれたいい所。
バスから降りた俺たちは、早速それぞれ10日分の大きな荷物を部屋に運び始める。民宿周辺は、標高がそこそこ高くて空気が美味しい。夏なのにそこまで暑くない避暑地のような場所。でも蝉の声や入道雲を見ると夏を感じるなぁ。
はよ
どこの美大いったん(´・ω・`)?
のちのち。
個人情報に関わらない程度で答えるよん
俺たちは二年生のため、去年にもこの民宿には来ている。去年を思い出しながら部屋に荷物を置いたところで、早速一日目の活動が始まった。
軽くミーティングを終え、事故には気をつけて時間内には戻るようにという話を適当に聞き、
待ちに待った行動開始。
だが、合宿先は正直言うとめちゃくちゃ田舎。
山ばっかの所であまり遊ぶ場所なんて少なかったが避暑地として観光に来る人も多いらしく、駅周りの繁華街は結構賑わっていた。民宿からは少し距離があるが、道の駅なんかもあったし。
後々書くが、堂々とサボって遊び回ったのはこの初日だけだと思う。だから記憶にも凄く残ってる。
真っ先に近くの小川で水浴びして、近くの農家のおじさんから冷えたスイカを貰って一緒に食べた。サボらないムードが強かった女子たちも、スイカにつられて一緒に食べる。ノッてきた女子たちとも水遊びしまくってた。
樋口「おい、水で下着透けるんじゃねwww」
俺「よしwwwwww」
その後も出店で買い食いして、昼には民宿のおばさんたちが用意してくれた弁当を食べる。そして午後も遊び回り……を繰り返してると直ぐに民宿への集合時間が近くなった。
帰りは他班の男子たちとも合流。
俺「帰ってお菓子賭けてポーカーすんぞ!」
とか言って、みんなが盛り上がり
「うおおお!俺が一番だわ!」と騒いでたのを覚えてる。
やっぱり夏に友達と馬鹿なことして騒ぐってのは、学生時代にしか出来ない青春だよな。
合宿中でも、俺らが揃えば急に水鉄砲で銃撃戦が始まったりさ。そんなくだらないことしてる時期ってすごい楽しいもんだよ。
そんなことしてるうちに、他班の男子 (以下 佐野 と 吉田)の2人が
佐野「コンビニ寄ってくから、いるもんある?」
吉田「お前エロ本買うつもりだろwww 俺も行くわwww」
とか言ってたから、2人に買い物を任せることに。こいつらもクセ強くて面白い奴らだったから後々紹介するwww
2人が買い物で抜けたから、俺と樋口で民宿まで帰ってた。樋口はどこで買ったかも分からない花火セットを抱えていた。
樋口「イッチ、今度みんなで花火やろうぞwww」
俺「お前それどこで買ったんだよwww デカすぎだろwww」
とか笑い合いながら。
花火が楽しみになってきた、樋口ナイス。
夕方になってきて、昼ほどの暑さはないがやっぱり日差しは強い。日差しに耐えてしばらく歩いていると俺と樋口、とんでもない事に気が付く。今日、絵を1枚も書いてない。
いくらサボれると言っても、民宿に帰った時のミーティングでは最低でも1人1枚は絵を提出しなければならないって決まりがあった。俺たち大焦り。
樋口「終わったでござるwwwwwwwwwwww」
俺「諦めんなwwwまだ数十分あるだろwww」
と言い合い、絵になりそうな場所探しが急遽始まった。
樋口「どうせ佐野と吉田書いてないってwww もう諦めようぞwww」
俺「バカ、それじゃ怒られる人数増えるだけじゃねえかwww」
本当はその辺の草とかパっと描いて終わりにしたかったが、変なところで美術部魂が出た。どうせなら綺麗な景色でも描こうと、その辺を散策し始めた。
民宿に帰るまでの道は、峠道になっていて
山に沿って坂が続いている。
だが、この周辺も観光客が多いのだろうか。
景色が綺麗な場所も多かったし、遠くの夜景も見れそうだ。
街灯やトイレ、定食屋や売店などもあった。
俺と樋口、焦りながら綺麗な景色を探す。
俺「どうせなら夕日の絵とかにするか!?」
樋口「承った。」
俺「あそこでいいだろ!あの公園の東屋!他にも絵描いてる人いるぞ?」
樋口「OK、マスター」
相変わらずこいつキャラ安定しないなぁと
思いつつ、途中にあった結構大きめな公園にある東屋から見える景色を絵に描くことに。
ちょっと数分休憩させてくれ。
ペース遅いとか、内容に質問とかあれば
レスしてくれると助かる。
一人で書き続けるよりモチベにもなるし。
休憩終わったら改善するから、なんかあったらお願いしますm(_ _)m
とりあえず続けます。
田舎の公園だからだろうか、かなり広かった。
芝生に遊具、ベンチなどもあり、
しっかりと整備されている立派な公園だった。
これは絵を描いてる人がいてもおかしくないなぁ。と、芝で走り回ってる子供たちの声を聞きながら思った。
東屋で絵を描いている人に近づく。一人の女の子だった。俺らと同じくらいの歳かな。
芝生には子供たちがいるものの、東屋近くには人が少なかったためかなり目立った。
しかも長年使ったような立派なイーゼルを立ててまるで画家のような数の沢山の筆で絵を描いていた。肩までかかるくらいの黒髪と画家姿が良く似合う女の子。さすがにベレー帽は被ってなかったが。
俺 樋口「ごめんなさーい!ここ、俺らも使っていいかな?絵を描きたくて。」と話しかける。
女の子は大人しそうな見た目に反して
女の子「君たちも絵を描くの~?」
と元気に答えた。
俺たちは、合宿でここに来た美術部ということ、
昼間サボりすぎて今急いで描かないといけないことを伝えると、
女の子は笑って
女の子「一緒に描こうよ~!」
と言ってくれて助かった。
俺と樋口は少ない残り時間で急ぎながら、
だけど女の子と喋りながら絵を描いた。
ここら辺は夕日が良く見えるんだよ~、とか
筆は何使ってるの~、とか、話してた。
女の子が使ってる筆やイーゼルは年季が入っていたが、道具に詳しくない俺らから見てもいい物だと分かった。
急いでいるなら普通無言で描くだろうが、ついついこの女の子と話してしまうのは、この子が結構可愛かったからだろう。そこまでコミュ力が高くない俺らでもついつい話してしまった。
本当はこの子を描いたりしたら
絵になるんだろうなぁ…って思ってみたり。
すると、話しながらも内心は急いでいたのか
樋口「よし描き終わった!イッチ、あと君!お先に失礼するぞwww」
と樋口が雑に道具を片付けて先に走って民宿へ向かって走り去ってしまった。
時計を見る。俺を置いて先に帰った裏切り者は
ギリギリ間に合うだろうが、今から片付けて帰ってもどうせ間に合わない。女の子と2人きりの状況を作ってくれた樋口に一周まわって感謝しつつ、時間は諦めて絵と女の子との雑談に力を入れることにした。
女の子「あの子先帰っちゃったじゃん。君は間に合うの~?」
俺「もう諦めたよwww どうせならもう少しゆっくりしてくよ」
女の子「暇してたから嬉しいよ~」
今まで急いで乱雑に描いていた絵とは別に
どうせなら久々にしっかりとした絵を描いてみることにした。普段はこんなことしないだろうが、何となく。
女の子「あら、ちゃんと描くんだ~。ちゃんと描いたら上手いんじゃないの?」
俺「サボり部員だけど絵が苦手な訳じゃないからなwww 君より上手いかもね。」
と冗談を言い、絵を再び描き始めた。
君より上手いかもと言う表現を冗談にしたのは
言うまでもなく、この女の子の絵には目を見張るような魅力で溢れていたから。
絵の具をちょこんとつけ、筆で慣らすだけで
いつの間にか立派な夕焼け空を描いてしまう女の子の技術は、まるで魔法のようだった。
絵を描くのが好きだった訳では無いが、小さい頃から絵の上手さにはかなり自信があった俺が
今までサボらず必死に描いてもここまで魅力的な絵は描けないだろう。
もし俺が絵を描くのが好きだったとしたら、
この女の子の絵と実力に嫉妬していただろう。
だが、負けず嫌いな俺はこの子より上手に描いてやろうと思った。(サボり部員にそんなこと出来るわけないが。)
俺「どうせなら、君より上手に描くから。勝負しようよ。」
女の子「いいね~。そういうの好きだよ?負けるつもりはないからね~!」
女の子も俺と同じく負けず嫌いだったらしい。
それから20分も30分も俺たちは無言で絵を描き続けた。辺りが暗くなり、空がオレンジと紫で覆われる頃、完成したお互いの絵を見せあった。
勝負はやっぱり完敗だった。久々に本気で絵を描いたものの、自身はかなりあった。自分で言うのもアレだが、この俺の絵も他人に見せたらかなりの評価を貰えると思った。だが完敗。
だが1番驚いたことは、俺の制服が絵の具で少し汚れていたこと。今まで真面目に絵を描くことなんてほぼなかったから、服の汚れも気にしないほど集中して絵を描いたというのは新鮮だった。
女の子「これは私の勝ちかな~!」
俺「認めたくないけど俺の負けだな。もう1回やらないか?」と俺がムキになったところで、
女の子「時間見てみなよ~!そろそろ戻らないと叱られるよ~?」
俺顔面真っ青。冷や汗ダラダラ。
民宿への集合時間30分以上過ぎてたwww。
俺「嘘だろやばいぞwwwwwwそろそろ戻らなきゃな!」
と、さっきの裏切り者のように雑に道具を片付けて足早に去ろうとした。
俺は絵を描いてる途中の雑談で、
この女の子がよくここで絵を描いてること、
小さい頃から絵が好きだということ、
俺の1つ年下の高校一年生だということ
を知った。でも肝心なことをまだ聞いていない。
俺「君、名前はなんて言うの?」
走りながら女の子に聞いた。
一昔前のナンパのセリフみたいで少し緊張した。
美凪「ミナギ!美しいに凪で!ミナギ!」
美凪は走る俺に大声で叫んだ。
前に見た恋愛小説でこんなシーンあったっけ?
やっぱり青春してるな~とか思いながら。
俺「俺の名前はイッチだから!」
と俺も走りながら。
まさか俺の人生でこんな少女漫画みたいな自己紹介があるとは。と、クスッと笑ってしまった。
休憩挟みながら
こんな感じでぼちぼち続けます。
完結は絶対させるので。
好きだから続けてくれ
最後まで見たい
ってコメントないんかwww
まあよし、夜になったら続けます…()
民宿に帰ると、ミーティングはとっくに終わっており夕食の準備が始まっていた。
大急ぎでみんなの元へ駆け寄る。
樋口「遅すぎござるよwww先生には何とか誤魔化しておいたぞwww」
裏切り者なんて言ってごめんよ。
こいつは神様か。一生の友になるだろう。
樋口のおかげで少し注意されるだけで済んだから、樋口には後でジュースを奢ってやろう。
そして夕食と風呂を済ませ部屋で自由時間。
ちなみに、イチモツが一番デカかったのは樋口。
器もイチモツも大きいなんて大した漢だ。
そして部屋は俺と樋口と佐野と吉田の4人。
吉田「先帰っとけって言ってたのに遅すぎwww」
佐野「樋口から事情は聞いたけど、なんでそんな遅れたんだよ?」
吉田はテレビのリモコン弄りながら、吉田はトランプをシャッフルしながら俺に聞いてきた。
この2人もなかなか癖が強い。
吉田は美術部のくせに合宿にギター持ってきて、バスで弾いてるようなやつ。ギターは上手いのに髪型は坊主。まるで修行僧みたいだ。
佐野はバスの窓に持参の風鈴を付け、バケツに氷水張って部屋でキュウリ冷やしてるようなやつ。憎めないバカって感じか。勉強は出来るインテリメガネだけど。
そして俺は樋口にドヤ顔をかましながら
俺「あの子と2人で真面目に絵を描いたんだよ」
と言う。樋口、悔しそうな顔しててワロタw
吉田「やっぱり女かよ~www 俺らも呼べってwww」
佐野「イッチにもついに恋がやってきたか!www」
俺「そんなんじゃねえよバカwww」
吉田、佐野、お前ら彼女いるからって調子乗んなよ、とか思いながら楽しく話してた。
部屋での会話で、美凪という名前は意図的に使わなかったのは今でも鮮明に覚えている。まだ名前を知っているのは自分だけという優越感に浸っていたかった。
樋口「女の子と一緒とはいえ、イッチが真面目に絵を描くなんていつぶりでござるかwww」
俺「うるせえ、そんな気分の時もあるだろw」
消灯後は布団を囲んで定番の恋バナ。やっぱり恋バナはいつになっても楽しいもんだよね。クラスや美術部の可愛い子の話、太ももがエロい子ランキング、などくだらん話をしているうちに皆爆睡。やっぱり吉田と佐野は2人揃って、俺の彼女が一番だろ!とか言ってて羨ましかったな。
消灯後は布団を囲んで定番の恋バナ。やっぱり恋バナはいつになっても楽しいもんだよね。クラスや美術部の可愛い子の話、太ももがエロい子ランキング、などくだらん話をしているうちに皆爆睡。やっぱり吉田と佐野は2人揃って、俺の彼女が一番だろ!とか言ってて羨ましかったな。
消灯後は布団を囲んで定番の恋バナ。やっぱり恋バナはいつになっても楽しいもんだよね。クラスや美術部の可愛い子の話、太ももがセクシーな子ランキング、などくだらん話をしているうちに皆爆睡。やっぱり吉田と佐野は2人揃って、俺の彼女が一番だろ!とか言ってて羨ましかったな。
そして、翌朝のミーティングでは、なんと
昨日の俺の絵がめちゃくちゃ褒められた。
中嶋先生「イッチは真面目に描けば上手いんだからさぁwww」と苦笑。
でも俺は、この絵より何倍も魅力的な絵を昨日見ている。美術部に入ってから初めて、悔しさというか劣等感というか、そんな気持ちを感じた。
2日目も勿論サボるんだけど、やっぱり
昨日の事が気にかかることが多かった。
避暑地と言えど真夏の正午にもなるとさすがに暑かった。午後には繁華街から離れ、峠道の下の方にある田園風景を樋口と眺めていた。
近くの民家の縁側の方からチリンチリンと風鈴の音が聞こえたり、少し遠くの大きい家で
ビニールプールに水を張って遊ぶ子供たちも見えた。子供と一緒にはしゃぐ大人もいて、やっぱりみんな夏が好きなんだなぁと思った。
俺「俺らの地元よりも夏って感じだよな」
樋口「当たり前ぞwww こんな風景ここでしか見れぬwww」
俺「絵を描くにはもってこいだよなwww」
樋口「イッチが絵の話www昨日からどうしたでござるwww」
俺「ちょっとは、描いてみようかなぁ」
そんなことを言いながら、絵を描いてみることに。俺が自主的に絵を描くなんて珍しいと思ったのか、樋口は俺をジロジロ見ていた。
だが数分もすると、樋口も俺に釣られたのか
黙って絵を描き始めた。
俺「なぁ、どっちが上手いか勝負しようぜ」
樋口「勝てるわけなかろうwww イッチは真面目に描けば上手いんだからなwww」
おもしろい。描写上手いなー。続き楽しみにしてる!
>>63
ありがとう。ただの思い出話とはいえ、励みになりますm(_ _)m
数分して早速絵に飽きたのか、樋口が筆をクルクル回しながら笑う。何とか説得し絵を描かせたが。そして完成した絵を見せ合うと、やっぱり俺の方が上手い。自慢ではないが昔から才能はそこそこあったんだと思う。
樋口「やっぱイッチ上手いwww 真面目に描いてればコンクールも取れるってwww」
俺「別に絵、好きじゃないしよwww」
樋口「じゃあなんで今描いたでござるかwww あ、昨日最後まで描くの忘れてたからだなwww」
俺「ま、そんなところだな」
本当はちょっと違ったけど。昨日、美凪に負けたのはやっぱり悔しかったから描いたんだよな。
失礼だが、美術部のくせに素人同然の樋口の絵を見てるとより美凪の絵には魅力を感じた。
そしてこの次に俺がやることは決まっていた。
樋口も察していたのか、
樋口「俺はあいつらと遊んできますかね~www」
とか言って、ぶらぶらと歩いていった。
民家の縁側の方からは、まだ風鈴がチリンチリンと鳴っていた。
いつもあの場所で絵を描いているとは言っていたが、この時間帯に美凪が公園に居るとは限らない。だが、また美凪と勝負をしたい一心で峠道を歩いた。
とはいえ去年の合宿でも、民宿までの峠道をこんな昼間に歩いたことなんてなかったと思う。
毎日夕方まではしゃぎ回り暗くなった頃に帰路につく。これが定番だった。
だから当然体力のない俺は、夕方よりも激しい日差しにバテていた。中学時代は学年全体で比べても体力には自信があったのに。
俺が仕方なく美術部に入った理由にも繋がるのだが、俺は中学時代は陸上部だった。当時は走ることが大好きだとまで思うほど熱心に部活に励んでいた。最後の大会の前に靭帯を怪我してからは運動とは程遠い生活を送っていたから、今は体力なんて微塵も残っていない。残っているのは、無駄に負けず嫌いな性格だけ。
もし怪我がなければ高校でも走ってたのかなぁと考えてるうちに、東屋に座る美凪が見えてきた。
日差しから逃げるように東屋に逃げ込む。
美凪「イッチ、今日は早いね~」
俺「昨日は時間足りたかったしね」
美凪が俺を待っててくれたような感じがして
少し嬉しかった。やっぱり早めに来て良かったな。
俺「今日こそ勝負勝つからな!」
美凪「昨日悔しそうだったもんね~www」
俺「そりゃ悔しいしさ、年下に負けたら」
早速美凪と俺が準備を始め昨日と同じ景色を
描き始める。昨日の夕日とは違って、大きな入道雲が空を覆っていた。
夜まで待たずに少し書きました。
夜まで休憩しようと思います。
つまらん青春の思い出に付き合ってくれた数人の方、ありがとう。
いいなぁ、この季節に読むから余計情景が浮かぶよ
青春だぁなぁー
おっさんには眩しすぎる
井上陽水の少年時代をBGMに読みたいと思います。続き楽しみにしています。
自分の投稿が自動あぼーんして連投したり、
なかなかレスつかなくて自演してやろう
かとも思いましたが、続けます(笑)
ただの思い出話に付き合ってくれてありがとうございます。
頼んだ
さっきまでは、会って2日目だということを感じさせない程に会話が盛り上がっていた。
だが、絵を描き始めると会話が少なくなる。
集中して絵を描くことに慣れてない俺も、やっぱり昨日みたいに集中してしまう。
お互いの絵が完成するまでに会話はなかった。
俺「やっぱり負けたかぁ、俺だって絵には自信あるんだけどな」
美凪「私も自信あるよ~!だって小さい頃からずっと絵を描いてるからね」
俺「やっぱりそうだと思った。そうじゃないとここまでの絵は描けないよ」
俺と違って美凪は本当に絵が大好きなんだろう。
2回しか会っていないが、美凪は本当に楽しそうに絵を描いているのが伝わる。
美凪「私が小さい頃に、お母さんがこのイーゼルと筆をくれたんだ~。それからずっと絵を描き続けてたの」
俺「俺が勝てないわけだwww」
笑っていたが内心はかなり悔しかった。
地元に帰るまで、この合宿中に美凪に
絶対勝ちたいなとも思った。
美凪「イッチ、絵を描くことって楽しいでしょ?」
という美凪の一言に、俺はビクッとした。
昨日までならそんなことねぇよと簡単に答えられたと思う。だが、今は何も答えられない。
たった2回の勝負で美凪は、俺に絵を描くことの楽しさを教えてくれていたのかもしれない。
俺は楽しくないだなんて答えられなかった。
なんで返答したかも覚えてない。
それほど曖昧な返事をしていたと思う。
俺は負けた悔しさと、絵を描くことの楽しさについて曖昧な返事しか出来なかった恥ずかしさで
少しムスッとしながら、再び筆を持った。
美凪は筆をしまい、本を取り出しページをめくった。絵を描いていたかと思えば次は読書か、不思議な子だなと思った。
美凪「イッチは読書する人?」
俺「それなりにはするよ。好きな作家は?」
美凪「坂口安吾!大好きなの!」
急に大声出すからビビった。それほど好きなのか。渋いしほんとに不思議な子だな。
美凪の手には、坂口安吾の「白痴」が握られていた。読んだことはあるが内容は覚えていない。
俺「『白痴』は前に読んだことあったっけなぁ」
美凪「ほんとに!?あの独特な作風とか癖になるんだよね~。昔から好きでさ」
俺「俺もそこまで読んだことはないけどねwww 昔の作家だったら推理小説が好きだから、江戸川乱歩とかが好きかな。」
美凪はバッグから次々と昔の文豪たちの名作を取り出して見せた。中には推理小説も沢山あった。
アーサー・コナン・ドイルや東野圭吾の作品まで。かなりの数の本を持ち歩いてるんだなと感心した。
美凪が好きな物を語っていると、本当に好きなんだろうなって俺にまで伝わってくる。
プレゼンの才能とかあるんじゃないか?
俺もそれなりの読書好きだったので、話は更に盛り上がった。坂口安吾が!三島由紀夫が!と熱く語る美凪を見るのは微笑ましかった。
昔の文豪のような丸メガネをかけさせたら似合うんだろうなと思ってみたり。
そして、昨日は分からなかったが、今日になって美凪の個性の強さがよく分かった。
本を急に閉じたかと思えばルービックキューブをやり始めるし、急に携帯電話で写真をパシャリと撮り始める。昨日よりもお互いに心を開いていたのもあったが、もはやシュールな光景だった。
一番記憶に残っているのは、美凪が大きなヘッドホンで聴いていた、尾崎豊の「シェリー」だった。
俺も尾崎豊のファンで、「シェリー」もお気に入りの曲だった。そして、やっぱり美凪のヘッドホンは筆やイーゼルと同じく、年季が入りつつも立派なものだった。掘り出し物とかレトロな物が好きなマニアとかは羨ましく思うんじゃないだろうか。
俺「尾崎豊好きなの?俺もよく聴くよ」
美凪「ほんとに!!私もすごく好きで!イッチと趣味が近いのかなwww?」
美凪「私、歌も上手いんだよー!」
とか言って歌ってくれた。
シェリー、いつになれば俺は這い上がれるだろう。
シェリー、どこに行けば俺はたどりつけるだろう。
切ない曲調なのに美凪は楽しそうに歌っていた。
ぶっちゃけ美凪は、そこまで歌は上手くなかったんだが、俺もついついのっちゃって歌ってみたりした。
「傷つけた人々へ」 「Forget‐me‐not」 「街路樹」 …………とか色んな話をしたのを覚えてる。
美凪「あー!全部好き!趣味が近いのかな!」
とか、やっぱりはしゃいで笑ってる。
この頃の女子高生って、西野カナとかback numberとかが好きって思ってた。だからやっぱり渋いな、と思った。
初対面の時に感じた落ち着いたイメージはもうどっかに飛んでって、元気で素直で不思議な子ってイメージになっていた。
美凪は普段、「え~」 「そうだよ~」 みたいに
やんわりと語尾を伸ばすように喋るまったり系。
でも好きなことになると大声ではしゃぐ。
不思議と心地いい声で、話していて楽しい。
それからも話したり、ふと立ち上がって東屋の周りをグルグルし始めたり、シュールな行動は目立ったが、筆を握ると真面目な顔に。
俺はそんな美凪に確かな魅力を感じていた。
長い間、携帯を見たり、ボーッとしたり、美凪と話してみたりしていた。だけど、美凪が筆を持つとつられて俺も筆を持つ。俺は美凪の絵を一枚描いた。筆を持ち集中する美凪の顔はとても綺麗だったから。
なんだろうか、可愛いとかタイプとか
(それもそうなのだが)とは少し違う
説明がしにくいのだが、そんな綺麗さがあった。
たまに絵を描いて、たまに話す。
時間が過ぎるのも忘れるような不思議で安心する時間だったから、すぐに空が暗くなってきた。
耳からは外していたが、美凪のヘッドフォンからは相変わらず、尾崎豊の「シェリー」が流れていた。
真剣に物事に打ち込んでいる人は美しいって教授が言ってたな
美凪「イッチ、この峠道の上の民宿でしょ?」
と、更に空が暗くなってきた頃に美凪が話し出した。近くの民家からも、昨日樋口と聴いたような風鈴の音は聞こえない。だが、代わりにヒグラシが鳴いている。
俺「そこくらいしか民宿無さそうだからねwww」
美凪「私、民宿のおばさんによくお世話になってるの。よろしく伝えといてよ~!」
俺「そうなのか、おばさん優しいもんな、伝えとくぞ」
美凪「ありがと~!イッチ、今日はそろそろ帰るでしょ?」
俺「毎日遅刻する訳にはいかんしなwww」
あぁ、今日は俺らしくないくらい絵描いたな。
また褒められそうだな、なんで考えながら
道具を片付け始める。
ふと見た制服の袖が、今日も汚れていた。
俺「なぁ」
美凪「ん~?」
俺「絵を描くこと、楽しいよ」
美凪「やっぱり楽しいでしょ~?」
俺「美凪が絵を描いているのを見ると、そう思う」
俺自身からこんな言葉が出るなんて思ってなかった。正直にこの言葉を言うのは、中学時代に初めて好きな子に告白した時よりも緊張した。声も震えてたし、酷い響きだったと思う。でも、その声にさっきの曖昧さは一切と言っていいほど無かった。
怪我で陸上を辞め、仕方なく入った美術部。
本当は高校でも走りたくてしょうがなかった。
好きでもないことを楽しいとは思えなかった。
走ること以外をすることは辛いこともあった。
だが、たったの2日で否定し続けてきたものの魅力に惹き込まれている。
これは紛れもなく美凪のおかげだろう。
絵の技術を教えてくれたのが中嶋先生なら、
絵の楽しさを教えてくれたのは美凪だ。
無事100スレに到達。
キリも良いので少し休憩します。
まだ長く続くと思いますが、完結まで
良ければ付き合ってください笑
質問や希望にもできる範囲で答えます。
良ければどうぞ笑
ただの思い出話に付き合ってくれてありがとうございます。
おつかれー
青春だなぁ
ただいま戻りました。
続けたいと思います。
民宿に帰ると、既に皆も部屋に居た。
吉田「やっぱり今日も絵描いてたんだろwww」
佐野「ほんと珍しいよな、そんなにその子絵うまいんか?」
俺「なんだよ全部知ってるじゃんwww そう。めちゃくちゃ上手い。負けたのがちょっと悔しくてさ。」
吉田「お前そんな負けず嫌いだったか?女の子と話したいだけだろwww」
俺「んなことねえよwww」
2人ともご自慢のギターとメガネを手入れしながら俺を茶化してくる。
吉田と佐野は高校からの付き合いだから
美凪に勝負に負けただけで何回も絵を描いているのは不思議に思ったんだろう。
樋口は中学からの付き合いだから、俺が陸上部だったことも、怪我をした事も、負けず嫌いな事も全部知っている。もしかしたら樋口なら
今の俺の絵に対する気持ちも察しているのかも。
吉田のギターをBGMに会話が弾む。
なぜか佐野が部屋で冷やしてるキュウリを食べながら、風鈴の音を聴く。
たまに女子も部屋に来て、トランプしたり。
そんな日常が、いつもより余計に楽しく思えた。
今日も食事や風呂、ミーティングを終えた。
やっぱり俺の絵は褒められた。こっそりと描いた美凪の人物画は提出しなかったけど。
中嶋先生「イッチ、絵に目覚めたか?www」
と聞かれた時はやっぱりビクッとしたが。
自由時間はやっぱり皆と馬鹿なことやって楽しんでたけど、消灯時間前にどうしてもしなければならないことがあった。
部屋から出て渡り廊下を歩き、民宿のおばさんがいる食堂へ再び訪れた。渡り廊下の夜風が涼しくて気持ちが良い。
食堂で机を拭いていたおばさんを見つけた。
俺「あのー、おばさーん!」
おばさん「イッチくんじゃないの、どうかした?」
俺「美凪ちゃんって分かりますか?あの、よく下の公園で絵を描いてる。」
おばさん「あら、イッチくん美凪ちゃんと仲良くなったの?」
俺「昨日、公園で出会ったんです。」
おばさん「また美凪ちゃん絵描いてるんだ~ あの子、絵凄い上手でしょ?」
俺「はいwww 美術部ながらぼろ負けですよwww 美凪がおばさんによろしく伝えてって言ってたので。」
おばさんは50歳くらい。歳の割に若く見えるし優しいから、去年から美術部の皆とは仲がいい。
俺が入学する前からも毎年うちの美術部が夏休みに合宿に来てるらしく、美術部宛に毎年年賀状を書いてくれる。
おじさん「美凪ちゃんなぁ……小さい頃にお母さん亡くしてからずっと絵を描いてんだよ。だから寂しくないようにしてやりたくて、娘みたいに可愛がってんだよ。」
おばさんと話してると、おじさんもやってきて話に加わった。おじさんも50歳くらい。ヒゲが特徴的な強面だが、意外と気さくで優しい。
そして、美凪がお母さんを亡くしていたことを知る。美凪を思い出すと何となくわかった気がする。
お母さんがくれた筆やイーゼルを遺品として大切にしているからあんなに年季が入っていたこと。
小説や音楽の趣味もお母さんから教わったからかもしれないということ。そして、なんのために絵を描いていたのかということ。
おじさんとおばさんは少し寂しそうな顔をしていた。少し空いた窓からは、ヒグラシの鳴き声が聴こえてきた。
おばさん「私たちの息子はもう上京したから、美凪ちゃんは本当に娘みたいなものなのよ。たまにおばさんの似顔絵も描いてくれるの。」
と、水彩で描かれたおばさんの絵を見せながら笑っていた。見てわかったが、やっぱり美凪の絵だった。たった2日間で、やっぱり美凪の絵の魅力に惹き込まれている。その絵を見て確信した。
俺「俺、絵を描くこと、特に好きじゃなかったんです。でも、美凪を見てると、絵を描きたくなります。」
おばさん「そもそもイッチくんは合宿なんだからサボらず描かなきゃダメでしょwww」
俺「それもそうっすねwww」
とツッコミを入れられる。
その後もおじさんとおばさんとの雑談を楽しんだ。机拭きをちょっと手伝ったり、食堂のテレビを眺めたりしながら。消灯時間も近いため、そろそろ部屋に戻ろうか。
おばさん「美凪ちゃんに、またいつでもおいでって伝えてくれる?」
俺「もちろんですよー」
と最後に言葉を交わし、食堂を後にした。
美凪、お母さんのこと大好きだったんだろうな。
美凪自身も寂しいだろうに。それでもお母さんの筆とイーゼルであそこまで絵を描き続ける美凪は、怪我とはいえ、走ることを諦めた俺の何億倍もかっこよく思えた。
俺「あいつらにジュースでも買ってってやるかなー」
と独り言を呟き、外の自販機へ向かう。
やっぱりまだヒグラシが鳴いていた。
4人分のサイダーを抱え早足で部屋へと帰る。
3日目からは、朝から公園へ向かった。
以前の俺からしたらありえない事だが。
そして、美凪は本当に毎日ここにいるんだろう。
まだ午前中なのに東屋では美凪が絵を描いていた。
美凪「イッチ、今日は午前中から?サボらないの?」
俺「もういいんだよ。絵を描くこと楽しいって昨日言っただろwww」
美凪がニヤニヤしていたが俺はもう恥ずかしくはなかった。民宿のおばさんの話もあったからだが、せめて地元に戻るまでは仲良くなった美凪と一緒にいたかった。それに、ここまで来たらとことん絵の楽しさを教えてもらおうと思っていた。
今日も美凪のヘッドホンからは、尾崎豊メドレーが音漏れしている。筆とイーゼルだけでなく、このヘッドホンもお母さんからの贈り物かもしれない。だから年季が入っているのかも。
美凪「イッチの友達はどれくらい来てるの~?」
俺「男子は俺含めて4人来てるかな。この前途中で帰ったやつとかね。あいつは樋口ってやつなんだけどさwww」
美凪「イッチの友達とも会いたいな。あと1週間くらいでしょ、帰るまで。」
俺「あいつらサボってばっかりだからな、昼間からこんなとこ来ないかもね」
それから佐野や吉田のこと、美術部のことなど
色んな話を美凪とした。そして何度も絵で勝負を挑むがぼろ負け。その度にコツを教えて貰った。
その日も夕方になるまで東屋から動かなかった。
美凪「ねえ、志賀直哉の作品読んだことある~?」
俺と美凪の会話はいつも唐突に始まる。
俺「暗夜行路とか、城の崎にて とかならね」
美凪「じゃあさ!音楽!好きなバンドは?」
俺「ウルフルズ、ZIGGY、BUMP OF CHICKEN」
美凪「ウワーーーッッッッ!!!イッチ、ほんっっとにセンスいいじゃん」
俺「でもやっぱり一番好きなアーティストは~?」
俺 美凪 「尾崎豊!!!」
やっぱりこんな話をしてる時にも、美凪の
ヘッドホンから聞こえてくる尾崎豊の歌声が
いいBGMになっていたな。
美凪「最近の音楽もちゃんと聞くよ?」
俺「RADWIMPSとか?」
美凪「君があまりにも綺麗に綺麗に泣くから~」
俺「僕は思わず横で笑ったよ~」
俺 美凪「wwwwwwwwwwwwwwwwww」
そして、こんなに盛り上がったと思いきや、
数分後には黙って絵を描いてる。 こんな不思議な会話も珍しいだろうな。
俺は東屋からの風景も描きながら、今日も一枚美凪の絵を描いた。昨日よりも上手くかけたかな。
そうして、今日もヒグラシの鳴き声が聴こえる。
今日も集合時間ギリギリまでずっと東屋で過ごした。そろそろ帰らなければ。
美凪「イッチ、今日もお疲れ様。」
俺「また来るわ、じゃあなー」
合宿3日目にして、美凪と絵を描くことが日課になったのかもしれない。
だが、一週間もしたら地元へ帰る俺が美凪と親しくなってもいいのだろうか、と考えてしまうことが多くなってきた。
民宿へ戻りミーティングを済ませる。
部屋に戻ると、いつも通り風鈴の音が出迎えてくれた。
佐野「イッチ、今日も絵描いてたのか?」
俺「まあな、意外だろwww?」
佐野「俺らも今度行くわ、その女の子とも会いたいしwww」
吉田「下心丸出しじゃねえかwww」
樋口「お前彼女いるだろうがwww」
佐野「でもさ、大丈夫なのか?帰る時寂しくならないか?」
吉田「それもそうだなwww」
俺「俺もそう思うけどさ、旅先の出会いっていいもんじゃんwww」
そうは言ったが、確かに寂しい。
今日も吉田のギターが部屋に響いてる。
尾崎豊が耳に残りすぎて、ギターの音にも敏感になってきた。この日は色々と考えてしまい、寝るのが遅くなった。
合宿も中盤に差し掛かってきた頃からは
東屋に樋口たちが来ることもよくあった。
たまに吉田が来てギターを弾いてたり。
吉田「よ、絵は描かねえけどなwww」
俺「やっぱり来たかwww」
美凪「イッチが言ってた友達でしょ!はじめまして!」
俺「こいつギター弾けるんだぞ?持ってきただろ?」
吉田「当たり前だろ、ギターくらいしかすることねえよwww」
美凪「ギター弾けるの!?音楽よく聞くんでしょ!」
吉田「おうおうwww 思ってたより元気な子でよかったwww」
俺「お前、結構音楽詳しいよな?」
吉田「まあな、かなり聴いてるつもりだしだいたい弾けるぞ」
俺「じゃあやっぱりあれ弾いて貰うしかないよなwww」
美凪「尾崎豊弾ける?『シェリー』弾いてよ!」
吉田「渋いなーwww 俺も好きだけどなwww」
吉田が来たことで大盛り上がり。
吉田もテンション上がりすぎていつもはしない弾き語りしてるし、それに交じって美凪も歌ってる。やっぱりどっちも歌はあんまり上手くはないwww
佐野と樋口が来た時には、4人でそこら辺のボロ自転車に乗って川まで行って遊んだ。
民宿の方が流れが急な上流。公園から更に坂を降ったあたりで川遊び。
近くの農家のおじさんがまたスイカもらって、吉田も呼んでスイカ割り開始www
佐野「おいイッチwww やっぱり可愛いじゃんwww」
俺「だろ?」
樋口「自分の彼女みたいに言うなwwwwww」
とか、美凪にはコソコソと話してた。
皆が遊びに来た日も夕方になる前には公園に戻り東屋で絵を描く。その頃には皆帰ってたけど。
皆も俺が絵を描く理由を察してたからだろうな。
美凪「イッチの友達に会えて良かったな~!」
美凪は、東屋に戻るといつもこう言っていた。
俺「変なやつばっかだろwww みんな良い奴なんだ。」
美凪「次はギターでRADWIMPSも弾いてもらおうよwww」
俺「君があまりにも綺麗に泣くから」
美凪「僕は思わず横で笑ったよ」
俺 美凪 「wwwwwwwwwwwwwwwwww」
前もしたような会話で何回も笑う。
そして、笑ったかと思えばすぐ絵に集中。
テンションの差は激しかったけど、そんな不思議な会話には妙に安心感があった。
俺「今日こそもっと良い絵描くからなwww」
美凪「でも私にはまだ勝てないな~」
俺は美凪の言葉の 「まだ勝てない」 というところがやけに引っかかった。確かに美凪には絵で勝ちたいけど、残りたった数日の合宿では追い越せないだろう。地元に帰れば美凪とは会えないのに、どうしてここまでして勝ちたいんだろう。
佐野が言った
「でもさ、大丈夫なのか?帰る時寂しくならないか?」
という言葉を脳内でリピートしてしまい、手が止まる。美凪と絵を描き初めて、初めて集中出来なかった。それでも、美凪のヘッドホンから相変わらず流れている尾崎豊メドレーが何とか俺を安心させてくれていた。
美凪「イッチ、今日は調子悪いの?グラデーション雑じゃない?私の勝ちだね~www」
俺「今日はあいつらとも遊びすぎて疲れたんだよwww」
美凪「イッチが帰っちゃうまで、ほんとに私に勝つつもり~?」
俺「もちろん!負けたまま帰るわけにはいかないなwww」
気のせいかもしれないが、そういった美凪の顔も少し切なそうに見えた。ほんとに、気のせいかもしれないが。
今日も辺りが暗くなってきた。
初日は急いで帰っていたが、合宿の残りも数日となるとこの時間が心惜しくなる。
帰り際のヒグラシの鳴き声とヘッドホンから聴こえる尾崎豊もやけに寂しく感じた。
今日も民宿へ戻るといつも通りのミーティング。この頃になると、俺があまりにも頑張るから、ミーティングは俺を褒めるだけの会みたいになっていた。
中嶋先生「お前、普段はこんなに描かないよな?合宿だからって気合い入れすぎんなよ~www」
俺「分かってますよwww 体調でも崩したら大変ですし」
中嶋先生「うん。お前はやっぱり才能がある。俺が見てきた生徒の中でもお前ほど才能があるやつは少ないよ。この合宿、よく頑張ってるな。」
中嶋先生のこの言葉は今でも鮮明に覚えている。
美凪に絵の楽しさを教えてもらい、それを中嶋先生に後押しされた感覚。この先絵を描き続ける人生の中でも、辛いことがあったらよくこの言葉を思い出してるよ。
たった数日でここまで美凪と打ち解けた。
そりゃもちろん地元に帰るのには寂しさがある。
だが、まだ美凪には届いていないものの
自分の実力を認められたのはとても嬉しかった。
陸上部時代にタイムを縮めた時のような感動を、まさか美術部でも経験するとは思わなかった。
そして、合宿が終わる寂しさよりも、せめて美凪に勝ってから地元へ帰ろうという気持ちがより強まった。
この日は美術部全員でキャンプファイヤーをした。確か7日目の夜だったかな。
早めに夕食を済ませ、民宿の中庭に出ると
数人が軽く木を組んで着火準備をしていた。
キャンプファイヤーをするのは、人生初だった。
佐野「ほれ、マシュマロ。焼いてこいwww」
吉田「なんで俺なんだよwww 」
吉田はタオルを頭に巻いて、やっぱり背中にはギターを背負っている。
ちょっと若いビッグダディみたいでワロタw
メガネを外すと意外に美形な佐野も、今日はコンタクトにしてるのか、やけにイケメンだった。
樋口も遅れてやってたところで、女子たちに隠れて焼きマシュマロして食べた。
青春フィルターがかかってたってのもあるが、
割と本気で人生で食べた物の中で1番美味かったかもしれない。
その後はみんなで歌ったり、題キャンプファイヤーがお題で10分デッサン大会したり。
吉田にリクエストしてギター弾いてもらったりして、最高に楽しい時間を過ごした。
吉田「最後はアレ、弾いちゃいますかwww」
俺「頼んだwww」
そう言って吉田は尾崎豊の名曲たちを弾き始め、
最後はもちろん「シェリー」でしめた。
中嶋先生がノリノリで歌ってて世代を感じたなwww 俺や吉田はやっぱり合いの手だけじゃ収まらず、俺たちもノリノリで歌ってた。
ここに美凪が居たらもっと楽しかっただろうな。
1時間ほど外で楽しみ、キャンプファイヤーの火が消えると各自の部屋へ戻って行った。
何となくもう少し外に居たかった俺は、皆の目を掻い潜り、画材だけを持って公園に向かっていた。樋口に少し出かける事を伝えると、
樋口「もう夜だぞwww 行ってもいないと思うけどwww」
俺「分かってるよ、絵、もうちょっと描きに行くだけだwww」
やっぱり樋口には全てお見通しかぁwww
夜の8時はとっくに過ぎていたから、美凪が居なくてもしょうがないと思った。だが、どうしても絵が描きたい気分だった。あわよくば美凪が居ればな、とも思ったけど。
公園まで坂を降りていく。
木々が風で揺れ山の方は真っ暗で不気味だった。
公園まではそこまで距離がないんだが、今は体感でかなり遠く感じる。ヒグラシの声が大きく聴こえ始めて来た頃に、公園に到着した。
今思えばその夜が、人生で初めてタバコを吸った夜だった。
今日はここら辺で終わらせてもらいます。
明日も続き書かせてもらいます。
やっぱりこの頃が俺の人生の絶頂だったなw
と思いながら、色んなことを思い出していました。誤字脱字、拙い部分が多くて申し訳ないです。
そして、ただの思い出話に付き合ってくれてありがとうございます。
おつかれ
おやすみ
あなたの夜が心地よいものでありますように
明日も楽しみにしてる
おうダラダラ読ませてもらってるぞ。
最後までちゃんと書けよな>>1
おはようございます。
今日も書かせていただきます。
ID変わりましたが、イッチです。
東屋が見えてきた頃は、夜の9時を回っていた。
街灯に照らされ、離れていても東屋の中の様子はぼんやりと照らされていた。
俺が東屋の中に人影を確認した瞬間、ぽかりと口を開いたままその場で立ち止まってしまった。その人影は遠目でも美凪だと分かった。だが、それ以上に驚いたのは、美凪が黄金に輝く大きいライターでタバコに火を付けようとしていたことだった。
美凪が握っているそのライターも、直感で美凪よお母さんのものだと感じた。美凪の年季の入ったヘッドホンですら、お母さんの物なのかはまだはっきりとしていない。だが、ライターもヘッドホンも、美凪のやけに渋い趣味も、全てお母さんからの贈り物だとその瞬間に確信した。
俺がボーッと立ち止まり美凪を眺めていると、
美凪は口にタバコを咥えた。ゴホゴホと大きく咳き込みえずいている。どう見てもタバコに慣れている様子ではなかった。
俺は必死にタバコを吸う美凪が
悲しいとかそういうのでは無く、
プレッシャーと不安に押しつぶされそうな恐怖に耐えているように見えた。だって、怪我で陸上を諦めた時の俺みたいに見えたから。
俺が靭帯を怪我して医者からも、もう走らない方がいいと言われた時、人生で初めて涙が枯れるまで泣いた。ここまであまり描写して来なかったが、それほど俺は陸上に力を入れていた。
トラックを駆ける爽快感、自己ベストを出した時の感動、数メートル前を走るライバルをゴール前で追い抜かした時の達成感。
それらを全て失った時の恐怖は異常だった。
そして、夜の病室で一人で号泣してる時、今まで見舞いに来なかった樋口が、面会時間もとっくに過ぎているのにドアを蹴飛ばす勢いで病室に飛び込んで来たのを思い出した。入院初日の夜だった。
樋口「わりい、遅くなったでござるwww」
樋口「イッチ、寝てるかのか~?www」
樋口「そうだよなぁ」
熱血な祖父に「人前で見せていい涙は、産まれた時の涙と嬉し涙だけだ」と叩き込まれてきた俺は、樋口の前では泣いちゃいけないと必死に涙を堪えていた。
樋口はやっぱり俺が寝てると思っていた。
すると樋口がベッドに顔を埋め大声で号泣。
いつもオタク口調でヘラヘラしてる樋口が泣いているのを初めて見た。なんでお前が走れなくなるんだよ、まだ走らないとダメだろ、とか必死に叫びながら。人前で泣くことは恥と思ってきたが、初めて人前で泣いてもかっこいいと思えるやつを見た。
樋口は泣き疲れると、
樋口「また走ってくれよ、イッチwwwwww」
と笑いながら、フラフラと病室を出ていった。
ごめんよ樋口。俺、また走ることはなかったよ。
中学卒業時には何とか歩けるようにはなっていたものの、体力も落ち走ることへの情熱も無くなり落ちぶれた俺は、高校でも走ることは無かった。
陸上を諦めて仕方なく美術部に入った。美術部に逃げたって言った方がいいんだろうけど。
それでも、絵を描いていて良かったってこの合宿で初めて感じた。絵を描くことが楽しいって教えてくれる人と出会って、俺の実力を認めてくれる先生もいる。そんな環境が俺を変えたんだと思う。たった数日で。
樋口の、また走って欲しいという願いは
聞いてあげられないけど、俺は美術で陸上を越えたいと思った。この合宿で、俺はこれから先も絵を描きたいんだって確信した。
そんな俺に、どうせすることがないから、と美術部にまでついてきてくれた樋口。
陸上を辞めた日から今日まで樋口に支えられることは何度もあった。そんな樋口がプレッシャーと不安に押しつぶされそうな俺を助けてくれたんだから、 目の前の美凪のことも助けてあげたくなった。
助けられていた存在が誰かを助ける存在になるということが、樋口のおかげで俺のあごがれになってもいたから。
泣きそうになりながらタバコを吸ってる女の子なんて、今までの人生で一度も見た事がないけど、俺がすることは決まっていた。俺も樋口みたいになれるかな。
泣きそうになりながらタバコを吸ってる女の子なんて、今までの人生で一度も見た事がないけど、俺がすることは決まっていた。俺も樋口みたいになれるかな。
俺「お~い美凪~www 俺にもタバコ1本くれ~www」
タバコなんて吸ったことなかった。だが、樋口があの時自分の事のみたいに泣いてくれたように俺もタバコを吸ってみるだけだwww
俺の声に気付いて美凪は振り返ったが、
隠れてタバコを吸っている不良たちが先生に見つかった時に咄嗟に隠すような行動はしなかった。
手にはライターをしっかり握り、口からは煙を力なく吐きながら俺を見つめてくれていた。
俺「もう9時だぞwww まだ居たのかよwww」
美凪「イッチこそ、民宿抜けてきたの~?www 民宿のおばさん達心配させたら怒るからね!」
俺「俺がお前を心配してんだよwww いいから俺にもタバコ1本よこせwww」
美凪「私が吸っててもなんも言わないんだ、それとも何か知ってるとか~?」
さっきより美凪の表情が明るくなった。
いつか俺が昼間から東屋に行った時、待っててくれた感じがして嬉しかった。今もそんな感じがする。
初めてのタバコを前に心臓をバクバク言わせながら、ライターで火をつけてもらう。
タバコは慣れてないくせに、火の付け方はヘビースモーカー顔負けだった。それで、やっぱりこのライターもお母さんからの贈り物なんだろうなと確信した。
美凪が絵を描くのは、亡くなったお母さんのため。皆木の趣味が渋いのは、亡くなったお母さんに教えてもらったから。美凪が慣れないタバコを必死に吸おうとするのは、亡くなったお母さんに会えなくて寂しいから。
俺が合宿で地元に帰る前に、美凪が絵を描く理由をもっと増やして、タバコなんか吸わなくてもいいようにしてやりたかった。
俺「なぁ、そのライターもお母さんから貰ったんだろ?そのヘッドホンも、渋い趣味も。」
美凪「せいかーい!やっぱり民宿のおばさんたちに教わったでしょ~www」
俺「美凪のお母さんが亡くなっていることはな。どれがお母さんからの贈り物かなんて、見ればわかるしな」
美凪「やっぱりそうかぁ~www 尾崎豊を聴く女子高生なんてそう居ないもんね~www」
俺「そして、一番驚いたのは、絵を描くこともお母さんからの贈り物ってことだな。」
美凪「そうだよ。お母さんが私に絵をくれたの。だから絵を描いてるし、描きたいって思うよ。」
美凪は本当に楽しそうに絵を描く。
お母さんのためだけとは思えないほどに。
でも、それはプレッシャーや不安、寂しさを紛らわせるためでもあるのかな。
お母さんが亡くなった寂しさからも逃げないで絵を描き続けるのは、陸上から逃げた俺よりもやっぱり何億倍もかっこいい。だが、俺はかっこ悪くてもいいから、美術部に入って良かったと思う。それに、美術で美凪に追いつけるくらいかっこよくなってやると思ったから。
そして、ついに初めてタバコを咥える。
なんというか、変な匂いに味。正直いって美味しくないな、と思った瞬間。
俺「ゲホゲホゲホゲホゴホッゴホッグハァwwwゴホゴホwwwwゴハァwww」
盛大に咳き込んでしまった。
大人はどんな顔してこれ咥えてんだよ。
マイルドセブンだったっけな、まだメビウスに改名される前だったから。
美凪「ゲホゲホゲホゲホゴホッゴホッグハァwwwゴホゴホwwwwゴハァwww」
美凪もまたタバコを咥えて咳き込む。
実にバカバカしい。慣れてないやつらがタバコを吸うとこんなに面白いものなのか。
悪いことしてるのにそんな感覚がないくらい
2人で笑った。なんだよ吸えないじゃん!とか言いながらね。さっきまで1人で泣きそうになりながらタバコ吸ってたのは誰だっけ。
またヒグラシの鳴き声が聴こえてきた。
今までで一番大きくジリジリ鳴いていた。
俺「俺、地元に帰るまであと数日しかないよな。でもそれだけの時間じゃ、美凪に勝てないと思う。」
美凪「やだよ、勝ってから帰ってもらわなきゃ。」
俺「無理だね、たった数日で絵を好きになった俺が美凪に勝てるわけないだろwww」
美凪「私だって、絵を好きになったのはたった数日前。それまではずっと、お母さんのためだけに描いてたから。」
ハッとした。俺ばかり絵の楽しさを教えて貰ってたと思っていたけど、俺からも美凪に教えていたのだろうか。美凪はきっと誰かと絵で勝負するなんて初めてだっただろうし、タバコを吸い始めたのもたった数日前だろう。 だからあんなに咳き込んでいた。
お母さんのために絵を描く。
それしか理由がなかった美凪に、俺が理由をあげていたのだと確信した。俺に勝負で勝ち続けるという理由かもしれないし、ただ人と絵を描くだけのことの楽しさを知ったという理由かもしれない。
そして、お母さんが亡くなった寂しさを紛らわせるだけでなく、美凪に絵の楽しさを教えた俺が地元に帰る寂しさを紛らわせるためにタバコを吸っていたのかもしれない。
お母さんが亡くなる寂しさなんて経験もしたことない。きっと俺が陸上を辞めた時なんて比べ物にならないくらい辛いはず。
それなのに、美凪に絵の楽しさを教えた俺がタダで地元に帰るなんて絶対にできなかった。
そんなことしたら、これからも慣れないタバコを吸い続けないといけないだろう。
俺は、画材を入れる為に持ってきた
学校用の大きなリュックを漁り出す。
美凪に
俺「美凪、絵を描くことって楽しいだろ?」
と聞きながら、リュックの内ポケットに詰め込んだはずの進路調査票を探していた。
学校から進路について聞かれることは多かった。
だが。以前の俺は陸上も辞め、夢なんて何一つなかった。夢どころか志望校さえも。
だが、そんなに悩んだ進路がたった数日で、しかも1人の女の子との出会いだけで決まるとは思っていなかった。それほど美凪にはたくさんのことを教わった。
女の子と2人で話すとこと、
本気で絵を描くこと、
集中して服の袖を汚すこと、
逃げずに何かに取り組むこと、
昔の文豪の名作のこと、
好きな音楽のこと、
たまにはサボって川で遊んだりすること、
タバコを吸うこと、
大切な人と離れることは寂しいということ、
絵を描くことは楽しいということ、
たった数日の、人生の一瞬にも満たない間で
これまでの人生以上のことを教わった。
俺が美凪に教えたことよりも、教わったことが多かった。
美凪に教わったことを一つ一つ復習しながら
リュックの内ポケットからクシャクシャになった進路調査票を見つけ出した。
陸上を辞めてから、ずっと悩んでいたことが解決したような爽快感が全身を巡った。
進路調査票を見つけ出した瞬間、美凪も口を開いた。
美凪「楽しいに決まってるじゃん!」
美凪はいつもの、好きなことを語る時の大声で
叫んだ。その顔は、絵を描く理由を何個も、何百個も、何万個も見つけたような顔だった。
美凪の、お母さんがなくなってから、ずっと悩んでいたことが解決したような爽快感のある声が響いた。
俺「俺も、絵を描くことが大好きだ。それを美凪に教わったんだ。」
と、俺も続けて言う。
「絵を描くことが好きだ」と言うことに緊張はしなくなっていた。だが、「美凪に絵を描くことの楽しさを伝わった」と言うことはこれ以上なく緊張した。もちろん、中学時代に初めて好きな子に告白した時よりも緊張した。やっぱり声も震えていたし、酷い響きだったと思う。でも、酷い響きながらも爽快感のある声だった。
これはもう告白と言って良かった。
恋愛感情とか、そういうことではないけど。
それでも俺の人生の中で、この告白を超えるようなものは二度とないだろう。
そんなことを考えながら、進路調査票に思っていることを書き込む。ボールペンのインクでもなく、筆についた絵の具で。
志望校・・・東京藝術大学
希望職種・・・デザイナー
東京芸術大学なんて、よく知らなかった。
今まで美術に興味がなかった俺でも知っているような有名な美大。
デザイナーなんて、よく知らなかった。
今まで美術になんて興味がなかった俺でも知っているような職業。
この合宿で美凪に絵で勝てないのなら、
これからも描き続けて、描いて描いて書きまくって、そうしていつか勝てればいい。そう思ったし、その覚悟があったから。
この、「東京藝術大学」の「藝」の部分が絵の具でぐちゃぐちゃになったような、雑な進路調査票を堂々と美凪に見せつける。
俺「この合宿だけでは美凪にまだ勝てない。だから、この先も絵を描き続けるよ。そのうち勝てればいいだろ?」
美凪「東藝大……デザイナー……」
俺「よく知らないけど、難しいんでしょ?何浪してでも卒業してデザイナーにでも何でもなるから。またいつか勝負して欲しい。」
俺「それに、俺は美凪に美術の先生になって欲しい。出来れば美術部の顧問かな!」
俺に絵の楽しさを教えてくれた美凪が、もっとたくさんの人に絵を教えているところを想像した。自然と、中嶋先生と美凪を重ねていた。
美凪は泣いていた。辛くて泣いているのでは無いと分かったから、美凪を助けてあげられたんだと思って俺も泣きそうになった。
そして、美凪に勝つということだけでなく、デザイナーになることは俺のハッキリとした目標、立派な夢になっていた。
美凪「私、美術の先生になるから!イッチに絵の楽しさを教えたみたいに、もっとたくさんの人に教えるから!」
と美凪が顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた。
お母さんのため、俺とまた勝負するため、たくさんの人に絵の楽しさを教えるため、
美凪がこれからも絵を描き続け、夢を目指すのには十分すぎる理由があった。その理由に俺も入れていることに、つい涙が出てしまった。
祖父も「人前で見せていい涙は、産まれた時の涙と嬉し涙だけだ」って言ってたし、まあいいか。
2人で泣いたけど、やっぱり数分後には笑っていた。そして、筆を持ち、また2人で絵を描いた。
やっぱりまだまだ美凪には勝てそうにもない。
2人で笑いながら、時間なんて気にせずに絵を描いた。
美凪のヘッドホンからは流れているのはやっぱり
「シェリー」だった。
シェリー 俺は歌えているか
俺うまく笑えているか
俺の笑顔は卑屈じゃないかい
そして、初めてタバコを吸った夜は
俺と美凪が夢を決めた夜にもなった。
ヒグラシがよく鳴く夜でもあった。
キリがいいので少し休憩します。
良ければ最後まで付き合ってくれたら嬉しいです。
そして、ただの思い出話に付き合ってくれてありがとうございます。
追いついた
続き待ってるぞ
楽しみにしてる!
なにこのC級小説
楽しい
9~10時頃から、また続けたいと思います。
今日で完結します。
良ければ完結まで、ただの思い出話ですが読んでってくださいな~。
見てくれている人がいそうであれば、
そろそろ完結させたいと思っております。
よろしくお願いしますm(__)m
おっけー
それからも、合宿中はひたすらに絵を描いた。
俺にも夢ができたし、美凪と絵を描くことが今は何よりも楽しかったから。
この前乗ったボロ自転車に乗ってひまわり畑に行って絵を描いた。皆で遊んだ川や民宿の絵も描いた。東屋からの景色も何回描いたかも覚えてないくらい。以前から秘密で描き続けている美凪の人物画もかなり上達してきた。鉛筆で描いてみたり、水彩で描いてみたり。色々な絵にして残しておきたかった。
もうすぐ地元に帰ることは避けられない。
将来デザイナーになれて、美凪とも再会出来るとしても、何年後になるかも分からない。当たり前だが、2人とも大人になった後だろう。
再開までの長い間も、美凪に勝つための修行期間と思って絵を描き続けたい。美凪も夢を見つけたし、絵を描く理由をたくさん見つけた。美凪も俺と再開するまで絵を描き続けるだろうな。
再会が出来ない可能性もある。もしかしたらその可能性の方が大きいかもしれない。そんなことは分かっていた。だが、陸上と美術と、そして美凪に鍛えられたこの負けず嫌いな性格があれば、そんなことだってどうとでもなるような気がした。
合宿が終わるまでの時間がだんだんと迫ってくる。
合宿が終わっても、高校生活が終わっても、この先ずっと絵を描き続けるのは確かだ。だが、美凪と一緒に絵を描けるのはいつになるかは分からない。そんな寂しさもあったが、美凪はその寂しさに幼い頃から耐えてきた。今後も耐えることになるだろう。ここで俺が耐えられなければ、絵の勝負どころか我慢比べで負けてしまう。俺が美凪に負けていいのはこの合宿でだけ。この先は一度たりとも負けるつもりは無い。
そして、合宿9日目がやってきた。
もちろん合宿9日目の夕方も東屋で過ごした。
もう明日には地元へ帰ることになるが、俺も美凪も怖くはなかった。今後の夢に期待を寄せて、また会う日まで絵を描き続けることにワクワクさえしていた。だから、最終日を目前にしつつもいつも通りに過ごしていた。
美凪は、絵を描き終えたと思ったら、次は本を読み出した。今日は夏目漱石か。相変わらずマイペースだな。いつも通りヘッドホンからは音楽が流れていた。今日は松山千春の 「旅立ち」 が流れていた。
あなたの思い出だけは
消えたりしない
って歌詞が、俺に向けてのメッセージみたいにも感じて少し嬉しくなる。色々な曲が次から次へと流れていく。
ウルフルズの 「笑えれば」
ZIGGYの 「ONE NIGHT STAND」
BUMP OF CHICKENの 「ガラスのブルース」
前におすすめした曲も聴こえてきた。
でも、そろそろ帰ろうとした時に流れているのはやっぱり尾崎豊の 「シェリー」 だった。
時間もお金のように、幸せな使い方ばかりしてるとすぐに夜が来てしまう。もう民宿への集合時間に近かった。
俺「俺は帰るけどさ、美凪はまだここにいるつもりだろ?」
美凪「今日ももう少し絵を描くつもりだよ~」
俺「やっぱりまだいるつもりかwww それならちょっと待っててくれないか?」
美凪は、俺がこれから何をするか分かっていたようだったけど、俺は知らない気付かれていないフリをしていた。初めて美凪に会った日のように、雑に道具をしまって民宿まで走った。
部屋に戻り、少し前に戻っていた皆に駆け寄る。
時計はいつも通りの集合時間、6時30分を指していた。ミーティングは30分後の7時から。これが合宿でのルーティンだった。
俺「おい、お前らwww 俺がこれから何言うか分かるかwww?」
吉田「わかんねぇよwww」
佐野「慌ててどうしたんだwww」
樋口「イッチ、はしゃぎすぎでござるよwww」
嘘つけ、こいつら絶対分かってる。
だって吉田はギターで「シェリー」を弾いてるし、佐野は一度脱いだ外着をもう一度着ようとしているから。そして樋口は、初日も見たような、いつ買ったのかも分からない花火を抱き抱えていた。
俺「ミーティング開始数分前は先生も女子たちもいつも忙しそうにしてただろ?そこを狙うんだよwww」
吉田「お、それは名案www」
佐野「イッチ天才か!?」
樋口「懐中電灯用意しとけ、だいぶ暗いからなwww」
俺「やっぱり分かってんじゃねえかよwwwwww」
吉田は弾いていたギターを拭きながらケースにしまい、肩からがっしりと背負った。
佐野も外着に着替え終え、樋口も準備OKといった顔だった。
吉田「まあ最後の夜だからな、民宿くらいいつか抜け出さねえとって思ってたんだよwwwwww」
佐野「俺らが問題起こさずに帰る訳にもいかねえだろ?」
樋口「当たり前だ!急ぐぞwww」
最終日の夜、合宿の最後に民宿を抜け出す。
それくらいするのが高校生だよなぁ。
行き先は皆分かっていた。もちろんあの東屋だ。美凪はまだいるはずだ。
ミーティング開始5分前。入口からは人が多いため、抜け出せないことを分かっていた。
だから、部屋のベランダから非常用のロープを吊るし、4人で降りていく作戦を決行。
夏とはいえ夜の7時にもなると、空のほとんどが紫色で覆われており薄暗い。窓を開けると風で風鈴がチリンチリンと鳴り始めた。
バレるかバレないかギリギリのスリルってものは、青春真っ只中の高校生には大好物。
みんなワイワイと騒いで興奮しながら、薄暗い中
民宿を裏から抜けていった。
民宿前の道は直線で人の目が多いため、
草を掻き分け林をぬけて、民宿の裏側にある川の上流から公園まで駆け下りることにした。
川から公園に降りるのはかなりの大回りをしなければならなかったが、そんなこと気にならなかった。川の水よりも速いんじゃないかというくらいみんな全力疾走。
岩を何個も乗り越えた。靴が水に濡れても関係なし。吉田が肩からかけているギターケースを岩にぶつけて叫んでいたが、止まらずに走り続けた。
樋口「夜の川怖ぇwww 流れ速すぎwww」
吉田「怖いならなんか弾いてやるよwww」
佐野「やめろ遅くなるだろwww」
とか笑いまくったな。結局、樋口が怖さを紛らわせるために大声で歌い始めた
マキシマム ザ ホルモンの 「ぶっ生き返す」
をみんなで熱唱しながら走っていたwww
樋口「キィオクノハカヴァニヴァラマカレタマルデセッメイノダストカンドゥノメイキュッ!wwwwwwwww」
俺「デスボイスやめろwwwwwwwww」
そうして、いつもスイカをくれた農家のおじさんの家辺りまで川を降りてきた。この頃には辺りも真っ暗になっていて余計不気味だった。
ここまで来ればあとはいつも通り公園までの峠道を登るだけだ。みんなコケたり何か落としたりしながらも走っていた。
美凪に絵の楽しさを教わって、ついには夢も目標も出来た。だが、友達とこんなに馬鹿なことをして笑い合うのは初日から変わっていなかった。
俺「なぁ、お前ら、言ってなかったんだけどさ」
俺「あの子の名前、美凪って言うんだよ。美しいに凪で、ミナギ!」
樋口「はぁ!?!?なんで今まで言ってくれねえんだよwwwwww」
吉田「聞いてねえって、ずるいぞwwwwww」
佐野「知ってたなら言えよwwwwww」
初日から知ってたってことは言わないでおこう。
自分だけが名前を知っている優越感は十分味わった。今は、より多くの友達が美凪の名前を呼んであげることが俺らにとっても美凪にとってもベストなのだろう。
少し遠くに見える駅周りの繁華街の明かり、美凪と訪れたひまわり畑、樋口とも絵の勝負をした場所などを眺めながら走る。夜なのに、そこら中の民家から風鈴の音が聴こえた。
やっと公園に辿り着いた。
佐野が付けていた腕時計の針は7時30分を指していた。東屋を目指してもう少し走ると、やっぱり人影が見えた。
美凪がしっかりとそこにいた事にもだが、一番は夜の東屋でなのに、美凪がもうタバコを吸っていなかったことに安心した。もう寂しくはないんだなって思うと、えも言われぬ嬉しさが俺の全身を包んだ。
美凪「やっぱり来た、待ってたよ~!」
俺「おまたせ、最後の夜だからみんな連れてきたwwwwww」
樋口「久しぶり美凪ちゃんwww 民宿抜けてきたwww」
吉田「またギター弾きに来たぞwwwwww」
佐野「よし、樋口、花火だせ!」
樋口「そうだな、皆で花火でもやるかwwwwww」
岩で傷ついた吉田のギターケースや佐野のボロボロのサンダル、樋口の擦り傷がいつもよりかっこよく見えたなぁ。
佐野がバケツを用意してきて、樋口がみんなに花火を配っていった。線香花火とかロケット花火が詰まってたかなり大きい花火セット。樋口、これを抱えながらよくここまで走れたな。
吉田のギターが、RADWIMPSの 「有心論」
を奏でてるうちに俺も準備をしてしまおう。
まずは一番大きいロケット花火を上空に打ち上げた。これ、最後のシメでやるやつなんじゃないか?とツッコミ入れながら花火を眺めた。まるで水彩のような鮮やかな色の花火が夜の空で弾けて、パァンと気持ちのいい音を鳴らす。
俺「すげえwwwwww 結構本格的だwwwwww」
美凪「こんな花火初めてやったなー!みんな、ありがとうー!」
また、美凪が好きな物を語る時の口調で
はしゃいでいる。美凪が本当に楽しそうにするもんだから、皆で笑う。
樋口「線香花火やるかwww」
佐野「最後で残るのは俺の花火だからなwww」
みんなに線香花火を配り、美凪が
黄金に輝くライターで皆の花火に火をつけていく。
俺、ここでもう耐えられなかった。
この前までは寂しさや不安を紛らわせるために
タバコに火をつけていたのに、今では友達の線香花火に同じライターを使って火をつけている。
樋口「どうしたイッチ、泣くなwwwwww」
吉田「寂しくなったか?」
俺「寂しくはないよ、美凪もそうだよな?」
美凪「うん、イッチはデザイナーになるからね!またいつか会えるからね~」
俺「ちょ!まだ皆に言うなよやめろwww」
佐野「イッチ、まじかよすげえwwwwww」
樋口「イッチに将来の夢www 応援不可避www」
吉田「デザイナーになったら美凪ちゃんにも勝てるかもよwww 頑張れイッチwww」
このことは翌日には美術部皆に伝わった。
特に中嶋先生がすごい感動してたのは言うまでもないなwww
夜も深け、時刻は9時を過ぎていたと思う。
時計なんて見なかったけど。
俺は気付けばまた筆を握っていた。
とは言っても、いつもより簡易的なものだったが。持ち運びやすいスケッチブックに、いつもより小さい水彩絵の具も広げた。
東屋からの景色は数え切れないほど描いたのだが、東屋自体の絵は一枚も描いていなかった。
だから、一枚でもいいから10日間の合宿で過ごしたこの不思議な空間を絵に残しておきたかった。
美凪「イッチ、絵描くの?」
俺「あぁ、まだ絵に残したいものも沢山あるからさ」
美凪「よし、勝負しようよ。まだ私が勝つからね~」
俺「まだ、っていつかは負けるつもりwww?」
美凪「なわけないでしょ!まあ、いつか勝ってくれたらなとも思うけど」
俺「なんだよそれwww」
3人が東屋の中で騒いでる所を2人で絵に描いた。本当は、美凪が騒いでる所も描きたかったんだけどね。
俺「やっぱり美凪には追いつけないや。」
美凪「でも、いつかは追いついてくれるでしょ~?」
俺「そうだなぁ~」
美凪の首から下がってるヘッドホンからは、
いつものように 「シェリー」 がまた流れている。
今日はいつもより音が大きいな。
「シェリー」がヘッドホンから流れる時はいつも帰る頃だったから、少し切なくなる。
それに気付いた吉田が
吉田「最後はアレ、弾いちゃいますかwww」
俺「頼んだwww」
とギターを構える。さっきまで筆を持っていた美凪もついテンションが上がっていた。吉田のギターの音と共に、美凪と俺と吉田「シェリー」を大声で歌い出す。樋口と佐野も合いの手を入れていた。こんなに楽しそうに歌う曲では無いんだろうが、俺たちからしたら最高にノリノリになれる魔法のような曲だった。
吉田「シェリー いつになれば 俺は這い上がれるだろうー!」
俺「シェリー どこに行けば 俺は辿り着けるだろうー!」
美凪「シェリー 俺は歌う 愛すべきもの全てにー!」
夜の東屋の下に5人の高校生。
これ以上ないくらい、この東屋は楽しくてにぎやかで不思議な空間だった。美凪も、明日には友達と別れなければならないということを感じさせないくらいの笑顔で笑っていた。本当にうまく笑えていたし、その笑顔に卑屈さなんて微塵もなかった。
ずっと聴いてきたヒグラシの声もよく響いていた。どこからか聞こえてくる風鈴の音に負けないくらい大きく。ヒグラシの鳴き声と風鈴の音が東屋の中で長い間響き続けた。
ちょっと休憩。
数分で戻りますm(_ _)m
休憩しすぎました、戻りました。
合宿最終日の朝がついに来た。
10日間過ごした部屋とも今日でお別れ。
だが、この部屋よりも公園の東屋にいた時間の方が長いのかもしれないな。
昨日の夜に民宿を抜け出したことで
中嶋先生から呼び出しがありかなり怒られたけど、結局最後には
中嶋先生「まぁ、お前ら全員無事に帰ってきたのならこれ以上文句は言わん。それに、先生も学生時代は馬鹿なことしたもんだからなwww」
と笑っていた。
本当にいい先生を顧問に持ったと思う。
吉田は、まだ昨日の興奮が覚めていないのか、
朝からろくに帰る準備もせずにギターを弾いていた。佐野と樋口も昨日の思い出をうるさいくらいの声量で語り合っている。俺も、ここで夜を迎えることはもうないんだなと実感するには時間がかかった。
もうすぐに民宿前にバスが到着する。
今日はもう美凪に会うことは出来ないだろう。
東屋に顔を出す時間すら残ってはいなかった。
このことは昨日も分かっていたから、美凪と別れの挨拶もしたし、2人とも絶対に夢を叶えて再開するという約束も済ませていた。
それに、昨日の夜、最後に美凪と絵の勝負が出来て良かった。やっぱり合宿中に美凪に勝つことは出来なかったけど、再開する時までのガソリンとなる悔しさを補充するには十分だった。
パンツ脱いで応援してる
吉田もやっとギターをしまい、皆が準備が終わったところで、中嶋先生の声でバスの到着の知らせが民宿内のスピーカーから流れた。
全員がバスに向かいながら10日分の大きな荷物を引っ張っていた。そして、民宿のおばさんとおじさんに最後のお礼をした。
おばさんには、先ほど数枚の絵を預けた。
俺が合宿中に密かに描いていた美凪の絵だ。美凪には言ってなかったが毎日描いていたため、かなりの枚数があった。
俺「これ、次に美凪が来たら良ければ見せてあげてください。上手くかけてる自信があるので!」
おばさん「イッチくん、あんたこんなに絵上手かったの!?この合宿ですごい頑張ったんでしょ?」
俺「まぁ、そんなところですwww その絵、お願いしますね!」
おばさん「必ず見せるから安心してね!」
俺「それと、高校生活でここに合宿に来ることはもうないですけど、機会があればまた絶対に来ますから。」
おばさん「ありがとう、いつでも待ってるからね!」
とおばさんにもお礼を伝えた。
美凪と仲良くなれたことは、おばさん達のおかげでもあるだろう。感謝してもしきれなかった。
早速、重い荷物を乗務員さんに預けて
バスに乗り込んだ。またいつかここに来たいが、しばらくは来ることもないだろう。
民宿から見える大きな入道雲や昨日の夜に皆で降った川も目に焼き付けておこう。
そして、バスは公園も通るため、もし東屋に美凪が居たら窓を開けて手を振ろうかなと考えていた。
全員がバスの座席に座った。合宿の思い出話をしている女子も多くいて、自然と俺も色々なことを思い出してしまう。
ついにバスが出発。
見慣れた民宿を離れ、坂を降っていく。
公園を通る時に窓を開けられるように準備をしておこうと思いつつ、ボーッと窓から景色を眺めていた。
公園が見えてきた。もう少しバスが進むと、毎日通った東屋が見えてきた。そして、やっぱり美凪はそこにいた。美凪がまた絵を描いているのがはっきりと見えた。よし今だ、窓を開けようと思い窓に手をかけた瞬間だった。
中嶋先生が、行きのバスで使ったカラオケ用のマイクのスイッチをあげたと思えば大声で叫んだ。
中嶋先生「ごめんなさーーーい!!!停めてください!!!バス停めて!!!」
大声で叫ぶもんだから
音割れしてハウリングして、もうめちゃくちゃだった。一気に急ブレーキがかかった。
俺たちが何事だ、と思っていると、中嶋先生が口を開いた。
中嶋先生「イッチ!樋口!吉田!佐野!特にイッチだ!!!バスを降りろ!!!」
俺、樋口、吉田、佐野、
一瞬何が起こったか理解できなかった。
中嶋先生「民宿の方々から全て聞いている!!!お前たち、あそこにいる女の子にお世話になったんだろう!!!そして、イッチに限っては、目標と夢まで貰っただろう!!!」
中嶋先生「俺はお前たちにこの合宿で何があったかは知らないが、大切な部員に夢を与えてくれた人を俺はこのまま素通りなんでできない!!!」
中嶋先生「もう一度言う、イッチ!樋口!吉田!佐野!バスを降りろ!!!俺はいくらでも待つから、やり残したことと最後にもう一度だけお礼をしてきなさい!!!」
女子とか運転手さんとか、何も知らない人はほんとにポカーンとしてた。
だが、樋口、吉田、佐野は顔を見合わせて震えていた。先生が自分たちをよく知っていることを知り、先生が昨日の夜の民宿を抜け出したことについてもそこまで怒らなかった事にも合点がいってたんだとおもう。
そして俺、ほんとに言葉を失った。
ここまで生徒のことをよく見ている先生なんて、どこを探しても中嶋先生しかいないだろうとも思った。俺たち4人も必死で、「はい!」 とだけ返事をして、荷物も持たずに走ってバスから降りた。どんな時でもギター背負ってる吉田ですら、ギターを放っておいてバスから駆け出すくらい必死だった。
やり残したこと、何一つないつもりだった。
別れの挨拶も、お礼も、夢を叶える約束も、最後の勝負も全てした。だけど、もう一つだけどうしてもしたいことがあった。中嶋先生もその事に気付いていたのかもしれないな。
そう思うと皆から少し遅れ、画材だけ持ってバスを降りた。皆は既に東屋に入っていた。
吉田「美凪ちゃん!これで最後だからもう一回会いに来た!」
佐野「ありがとうな美凪ちゃん!またいつか会いたいなぁ。」
樋口「本当にありがとう。美凪ちゃんwww!元気でな!」
美凪「まさか最後に来るとは思わなかったよ~!」
美凪もまさか今日も会えるとは思っていなかったらしく、本当に驚いていた様子だった。
皆はポロポロと涙流してたけど、それでも笑いながら別れの挨拶とお礼をしていた。
俺は、バスでは中嶋先生の生徒を思う気持ちと、最後にまた美凪に会える嬉しさで涙が出たけど、もう寂しくなんてないから、涙を袖で拭ってから美凪の元へ駆け寄った。涙を拭った袖には、洗濯でも落ちきらなかった絵の具の汚れが無数に付いていた。
俺「美凪」
美凪「イッチ」
俺「昨日、やり残した事はないつもりだったんだどね。」
俺「やっぱり一つだけあるかなぁ」
俺「最後に美凪の絵を描かせてくれないか?」
美凪「そのためにまた来てくれたのwww」
実は毎日美凪の絵を描いていた事、民宿のおばさんに預けているから見て欲しい事を伝え、早速準備を始める。絵を描いている美凪や、本を読んでいる美凪は描いたが、向かい合って顔を見ながら美凪を描いたことはなかった。そして、その絵も美凪に預けておきたかった。
美凪「じゃあ、とびきり上手く描いてよね~!」
東屋の中で向かい合い、座る美凪を描く。
初めて美凪に会った時、美凪に教えてもらった集中力を使って必死に描いた。バスのことなど気にせずに30分ほど描いていたと思う。
完成した絵に描かれた美凪は
本当に魅力的だったと、描いた自分でも思った。
美凪「今勝負してたら負けてたかもね、この絵には勝てないなー!」
と美凪が言ってくれた。勝負をした訳では無いが、初めて美凪に勝ったような、美凪にも匹敵する魅力的な絵が描けたような、そんな気分を味わった。
俺「次勝負する時はまたこの東屋でしよう。デザイナーと美術教師になったら、またいつか。」
美凪「そうだね!イッチが夢を叶えるの待ってるから、私が夢を叶えるのも待っててねー!」
美凪「それと、これあげるから」
美凪は俺に、黄金に光るライターを渡した。
俺「これ、お母さんからの贈り物だろ?どうして?」
美凪「私はもうタバコも吸わないし、寂しくないから必要ないの。だから今はイッチに持っていて欲しいな~。」
美凪「次もまたこのライターで花火するから、無くさないでね~!」
俺「じゃあありがたく受け取っとくよ。わかった。これで花火な!」
と、再び美凪と約束を交わし握手した。
10秒にも満たない短い握手だったが、その握手にこの合宿の全てが詰まってるような、そんな気がした。まだ朝なのに、ヒグラシの声と風鈴の音が東屋に大きく響いている。そんな気がした
やり残したことを全て終えた。
あとは俺がデザイナーになるまで美凪に待っていてもらい、美凪が美術の先生になるまで待つだけ。バスに乗り込み、皆に 遅すぎるよー!と言われたが、中嶋先生、樋口、吉田、佐野は笑っていてくれた。
帰りのバスで1時間ほど走った頃だったかな。
これまでの濃い10日間を締めくくるような、強い眠気に襲われた。俺は窓に寄りかかり、目を閉じようとした。その時、窓に映る俺の袖が見えた。その袖は、やっぱり絵の具で汚れていた。
俺「さっき美凪を描いた時につけたんだろうなwww」
ボソッと独り言を呟き、そして
その絵の具の汚れを見てやっぱり目が覚めた。
まだ寝てなんて居られないな。
俺「吉田ーーー!!!」
吉田「なんだよwww」
お前、俺が何を言うか分かっているだろwww
だって、俺が 「シェリー」 弾いてくれ、だなんて言う前にギターに手をかけていたから。
俺「『シェリー』、弾いてくれよ」
吉田「分かってるってばwww」
やっぱり分かってるじゃん。
あぁ、バスの中がまた歌声でうるさくなるぞ。
ここまで付き合ってくださりありがとうございました。
ここで完結とさせていただきます。
やっぱり青春時代を思い出すと、泣きそうなくらい思い出が沢山詰まってますね。
懐かしい記憶を思い出しながら、
拙い文章ながらも物語風にまとめさせて頂きました。
ここまで付き合ってくれた皆様、本当にありがとうございましたm(_ _)m
需要があれば、この合宿の後プロのデザイナーになるまでの後日談をほんの少しだけ続けようと思います。
聞きたい
追いついた!!
ポロポロ泣いたよ。先生最高
気になる
そこに美凪が出てくるなら聞くぞ
追記
俺は地元に帰ってからも絵を描き続けた。
言ったからには実行せねば、と思ったからね。
東京藝術大学に入学するため、一日も欠かさず猛勉強をして、絵も描いた。
そして、高校三年になった。
うちの地区では美術部引退前に最後のコンクールがある。美術部生活を締めくくるような絵を募集しています。みたいな趣旨のね。
俺はそれで、見事金賞を獲ることが出来た。
本当に、本当に本当に嬉しかったんだ。
だって、あの合宿の皆で東屋に集まった夜。
あの日を思い出して、もう一度描いた絵が金賞だったのだから。
中嶋先生、樋口、吉田、佐野という素晴らしい
仲間。それに、俺が夢を与え、俺に夢を与えてくれた美凪。そんな人たちに囲まれて過ごした
高校二年の10日間の夏。あの合宿があったから、俺はここまで這い上がれたし、辿り着けた。
美術部を引退してからは、更なる猛勉強が始まった。絵を描くだけでなく、苦手な勉強もしなければならないのは辛かったなぁ。
東京藝術大学。日本の美大の中の頂点とも言える大学だ。それを目指すのは容易い事じゃなかった。だけど、美凪との約束は絶対に果たしたかった。
数年後、猛勉強の末、一浪したが何とか入学することが叶った。それからも勉強と絵に励み続けて、良い成績で卒業することが出来た。
それからは、企業に就職して
夢にまで見たデザイナーになることが出来た。
美凪との約束に一歩近づいたことと夢が叶ったことが最高に嬉しかった。今は主に広告やポスターを描いたりしている。休みの日には、絵という趣味で交流を続けさせて頂いていた絵画教室の手伝いもすることがある。
中学時代、夢を一度諦めた俺が
ひと夏の不思議な出会いで新しい夢を叶えられたんだ。本当に、支えてくれた皆には感謝してもしきれないな。
そして、晴れてデザイナーになった今でも
美凪に教わったことを思い出すことばかり
今でも、毎日集中して絵を描いて服の袖を絵の具で汚すことがある。クリーニングに出したり、色んな洗剤で擦ってみたり、汚れを綺麗に落とそうと思えば色んな方法があるのだろうけど、俺はあえて洗濯機に入れるだけ。僅かに残った絵の具の汚れも努力の証だと思って大切にしている。
逃げずに何かに取り組むことだって美凪に教わった。勉強が辛いこともあったが、ここまで逃げずに頑張ってきた。そのおかげでデザイナーになることが出来た。それに、中学時代に諦めた陸上のこともよく思い出す。一度逃げたことにももう一度挑戦してみてもいいのかなと思って、たまに家の周りを走ってみたりもしてる。
昔の文豪の名作のことも美凪によく教わったな。
太宰治や夏目漱石、そしてやっぱり坂口安吾。
今でも古本屋で昔の文豪たちの本を漁ってしまう。美凪があんなに楽しそうに語っていたのだから、読みたくなるのは当たり前だけどね。
好きな音楽のことについても美凪はよく語ってくれたな。RADWIMPSの 「有心論」を1人で口ずさんだり、松山千春の 「旅立ち」をカラオケで歌ったり。そしてやっぱり、尾崎豊の 「シェリー」は今も毎晩聴いている、大好きな曲だ。
たまには川で遊んだりもした。
俺と美凪、樋口、吉田、佐野の5人で
川でスイカ割りをした事を思い出し、仕事の少ない休みの日は、綺麗な川までドライブしたりもした。初心者だけど、釣りも始めたよ。
タバコを吸うことはやっぱりまだ慣れていない。
このスレを書いている時、ふと思い出して、美凪から貰った黄金に光るライターを取り出した。あれから一度も使っていなかったし、タバコも吸っていなかった。美凪が咳き込みながらも吸っていたマイルドセブン。今ではメビウスって名前に改名されちゃったけど、近くのタバコ屋で一箱だけ買ってみた。
初めてタバコを吸った夜のことを思い出しながら、あのライターでもう一度吸ってみたけど、やっぱり咳き込んじゃった。
大切な人と離れることは寂しいということは
今でもたまに思う。美凪とまた勝負するまでは寂しくないって思ってた。けど単純に、美凪と話せないことを寂しく思ったりするんだな。それに、お母さんを亡くした美凪も幼い頃から寂しい思いをしていたと思うと、どうしても涙が出る時もあるなぁ。でも、あの夏の10日間からは、美凪も寂しい思いはしてないんだろうなと安心する。
そして、絵を描くことは楽しいということ。
これは俺が美凪に教えた一番大切なことでもあるし、俺が美凪に教わった一番大切なことでもある。受験の時、嫌いだった勉強をすることは辛いとよく思ったけど、絵を描くことだけは何万枚と描いても辛いとは思わなかった。絵の実力が付けば、美凪と勝負する時のアドバンテージになるぞ、と思って自信がついたり、上手く描けなかった日は、美凪だったらどう描くかを想像した。
そして、このスレを立てた理由
美凪とは、このスレを書いている時はまだ再会を果たしていない。
だけど俺、デザイナーとして、中学校や高校の美術部の活動見学募集が届くことがよくあるんだ。俺からも自主的に色んな学校の美術部にお願いして訪問することもある。学生たちの色々な絵を見て学ぶため。そしてもちろん美凪を探すため。
そしてこれはついこの前の8月に入る前頃のこと。
とある高校から俺宛に、美術部の活動見学募集の手紙が届いた。
その美術部のホームページを見たとき、顧問の名前に美凪の名前があったんだ。昔の苗字のまま。
俺は驚かなかったよ。だって、美凪がいつか夢を叶えるって信じていたから。
安心はしたけどね。もしここに本当に美凪がいるなら、やっと再会出来るんだなって。
来月訪問するつもりのその美術部で
美凪と再会出来たら、次こそは勝負に勝つつもり。またあの東屋からの景色を、美凪よりも魅力的に、色鮮やかに、壮大に、そんな立派な絵を描く自信がある。昔よりもずっと大きな自信が。
だから、まだ再会できた訳ではないけど、それで昔のことも思い出して皆に話を聞いてもらいたくなったんだ。
以上、もう30歳にもなるようなおっさんの
高校時代の青春の思い出を聞いてくださりありがとうございました。
一度でも夢を諦めた人、そして今夢に悩んでいる人が読んでくれていたら嬉しいな。
一度夢を諦めたなら、ほかの夢を叶えればいいんだ。そして、分からないことがあるなら、色々な人に教わればいい。
俺は、そんな青春を過ごす学生や
夢に向かって進む立派な人たちを
今日も応援してます。絵を描きながら、尾崎豊の 「シェリー」を聴きながら。
おつかれ
鮮やかだな
乙!
再会したら続編スレよろしく!
瑞々しくて美しい思い出に感動して泣きそうになった。
ありがとう。
俺も前を向いて歩いて行こう。
乙
お疲れ様
凄く素敵な話だったよ
再開したお話も良かったら聞かせて欲しい
風が止むで凪
どんな女性なんだろな
東京藝大はすごい
ああいう大学ってきっと変人いっぱいで楽しいんだろうな
皆さん、ありがとうございました。
美術部の皆について書くのを忘れていましたね。皆とは今でも仲良くさせてもらってます。
樋口と佐野は今、同じIT系の会社で同僚として働いています。あいつらバカだったのに、IT系の仕事に就くと聞いた時は本当に驚きました。
吉田は実家の楽器屋を継ぎました。
吉田のギター好きって、実家が楽器屋だったことから来てるんですよね。今でもよくギターで、尾崎豊の 「シェリー」 を弾いてくれます。
今でも5人でよく飲みに行ったりします。
みんな上京してるんですが、たまには地元に皆で帰ったり、旅行に行ったり。本当に良い友達を持ったな、と思います。
そして、美術部の顧問ながら熱血指導で俺たちを導いてくれた中嶋先生。合宿当時は30歳ほどだったので、10年ちょっとたった今でも現役で先生をやっています。もちろん、俺たちの母校で美術部の顧問。今でも、たまにOBとして顔を出してます。
俺の昔の思い出話で、また夢に挑戦しようと思ってくれたなら本当に嬉しいです。
美凪と再開したら、ですね……。
また俺がこうしてこのスレに現れるかは分かりません。ですが、もしいつか俺が現れたら、また話を聞いてくれると嬉しいです(笑)
ただの思い出話に付き合ってくれてありがとうございました。
ただ、デジャヴを感じてしまう。
特に熱血な先生。どこかで発表したことある?
人はここまでストイックになれるのかと驚いた。
彼女との再会談も楽しみにしてる!
かにくいたい
乙ー楽しかった
続きもぜひ聞かせてね
初めて神スレと思えるスレを読めた
楽しめた
ありがとう
めっちゃ感動した
俺今現役高校生だけどまだイッチみたいな立派な夢がないよ
俺もいつか誇れるような夢もつことできるかな?
再開したらまた書いてくれ
お疲れ様。いい話だったよ。
俺も夢を諦めたことがあるからすごい刺さった。
>>1
乙、よかったぞ。
よんだぞ、乙 実話ってのがいいよな。
アオハルだな
それにスレ民たちも暖かくてほっこりした
びっぷらは暖かいな
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コメント一覧 (2)
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- 2021/09/26 07:14
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要約
適当な部活に入ったのが美術部
そこで出会った女の子と徐々に仲が良くなりついには一緒に美大を目指す事に
楽しい人生も束の間、彼女が病気でどんどん弱り入院生活
彼女「私、やっぱり絵を描きたい」と泣きながら事切れる。
その人生をオレも背負うと誓い、デザイナーとなる
セリフが多いので9割9分創作、それを分かった上で読もう! -
bipblog
がしました
bipblog
がしました